イラクでの邦人人質事件をめぐり、日本政府が米政府に、3人が拘束されていると見られたファルージャ周辺における米軍と武装勢力との停戦延長を要請していたことが、複数の政府関係者の話で分かった。小泉首相は事件判明から4日後の12日、来日中のチェイニー米副大統領との会談でファルージャ情勢の改善を要請した。副大統領は3人の解放・救出への「全面的な協力」を約束。結果的に、2日後の14日、新たに48時間の停戦が実現した。
停戦は米軍にとっても戦況の悪化を食い止める意味がある。日本の要請が米政府の判断に直結したかどうかは明確ではないが、日本政府は、停戦の実現で、15日に3人が解放される条件が整ったとみている。
外務省は、12日の首相と副大統領の会談内容のうち人質事件に関する部分をほとんど公表しなかった。ファルージャでは米民間人の虐殺を発端に米軍による掃討作戦が続くなか、武装勢力による外国人人質事件が頻発していた。「3人がファルージャ近郊にいる可能性は早くから米側に伝えていた。できれば静かな環境で交渉したかった」と、首相周辺は明かす。
会談の翌13日、副大統領は東京都内で講演し、「米国はできることは何でもやる。詳細は明らかにできないが、日本政府とは密接に協力している」と語った。
14日には首相が踏み込んだ。国会の党首討論で民主党の菅代表に「3人の解放のためブッシュ米大統領にファルージャでの軍事行動の自制を求めるべきだ」と迫られると、「(ファルージャ情勢と人質事件は)密接に絡んでいる状況もある。水面下で働きかけている」と応じた。
日米両国は密接に連携した。川口外相は事件が判明した8日夜、パウエル米国務長官に電話で協力を要請。日本政府はファルージャ付近の衛星写真などの提供を受けた。12日の首相と副大統領の会談後は、米国の情報提供は飛躍的に増えた。
一方で、日本政府は米政府に「人命を最優先にしてほしい」とも要請していた。仮に3人の居場所が分かり、米特殊部隊が突入し戦闘になれば、3人に危害が及ぶ可能性も出てくるからだ。並行して現地の宗教者委員会などに働きかけ、自主的な解放への道も探った。
3人の解放を受け、米国務省のバウチャー報道官は「私たちはできる限りの支援をした」と述べた。外務省幹部は「ファルージャの停戦がなければ、解放もなかっただろう」とみている。
(04/17 06:23)
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