バグダッド西方で取材中、武装グループに拉致された日本人のフリージャーナリストら2人が17日午前11時(日本時間同午後4時)ごろ、拘束から3日ぶりに解放された。バグダッド市内のモスクにあるイスラム宗教者委員会の事務所で保護され、日本大使館に移った。健康状態は良好という。2人は18日にもアンマンへ向かう見通し。15日には人質となっていた日本人3人が解放されており、これでイラクで拘束されていた日本人人質全員の無事が確認されたことになる。
解放されたのはフリージャーナリストの安田純平さん(30)=埼玉県入間市在住=、市民団体メンバーの渡辺修孝(のぶたか)さん(36)=栃木県足利市出身。
外務省によると、17日午前11時35分(日本時間午後4時35分)ごろ、宗教者委員会から上村司・駐イラク臨時代理大使に電話で2人の解放が伝えられた。上村氏は打ち合わせのため、同市西部のウンムクラモスク内にある宗教者委員会の事務所に車で向かう途中だった。約10分後、事務所で2人の無事を確認したという。2人は午後0時56分、日本大使館に入った。
宗教者委員会幹部のアルクベイシ師は朝日新聞の取材に対して、16日午後4時ごろ、武装グループから2人を解放するとの連絡を受けたことを明らかにした。その際、グループは「拘束したのは身元を確認するためで、人質にする意図はなかった。2人が民間人で、米軍の協力者ではないと分かったため解放する」と話したという。
2人はモスク近くで車から降ろされ、歩いて事務所に向かったという。
解放直後、2人は「帰国させられてしまうので、大使館には行きたくない。ここに残って仕事を続けたい」と同師に話した。外務省幹部によると、その後、上村氏の説得に応じて出国に同意。18日にもアンマンへ向かう方向で調整している。
拘束中の様子について、渡辺さんはロイターテレビに「目隠しをさせられ、毎日、居場所を移動させられた」と話した。
AFP通信によると、安田さんらは「武装グループは、我々2人が米軍のイラク占領と自衛隊派遣に反対していることを知り、解放を決めた」と同師に語った。
渡辺さんがNHKに語ったところによると、武装グループは「米英はイラクの敵なので今後も戦う。日本人はイラクになるべく来ないで欲しい。なぜなら、我々は友人を傷つけたくないからだ。自衛隊はイラクから出ていって欲しい」とのメッセージを口頭で2人に託したという。
2人や関係者によると、2人は14日午前11時ごろ、武装勢力の取材のためバグダッド西方に向かい、数時間後、首都の西約20キロのアブグレイブ地区で拉致された。
2人に同行していたイラク人の運転手と通訳はその場に取り残された。通訳が事件について、日本の関係者にメールを流し、2人の拘束が判明した。
関係者によると、武装グループの男は、白いアラブ風の長衣に縁なし帽をかぶっており、イスラム教スンニ派で教義を厳格に守る「ワッハーブ派」の特徴的な姿だったという。
安田さんは3月にイラク入りし、米軍と武装勢力との衝突現場などで、取材を続けていた。昨年1月に信濃毎日新聞を退社し、フリーでの取材活動を進めていた。
渡辺さんは自衛隊の海外派遣に反対する元隊員らでつくる「米兵・自衛官人権ホットライン」に参加。2月末から半年間の予定で「在イラク自衛隊監視員」としてイラクに来ていた。
(04/17 23:05)
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