イラクで日本人旅行者の香田証生さん(24)が拘束された事件で、イスラム関係者は、人質解放への道筋として、自衛隊が撤退しない限り(1)身代金支払い交渉(2)犯人グループに対する有力部族や宗教勢力による圧力や説得、の二つを指摘する。強硬な組織だけに交渉や説得が通じるかどうかは不透明だ。
米ブルッキングス研究所によると、イラクでは10月中旬まで152人の外国人が拉致された。判明している限り、63人は解放されたが、33人がなお拘束され、31人は殺された。最近は殺害が増え、4月は拉致された43人のうち3人が殺されたが、8、9両月は60人中19人にのぼる。
犯行グループに地元住民が多い場合は、地元の有力な部族の幹部や宗教者を仲介人に選び、交渉を実らせる例もある。今年4月に日本人5人が人質になった2件では、こうした手法が解放につながった模様だ。解放されたケースのかなりの割合で、身代金の交渉があったとみられる。武装闘争の資金稼ぎになるうえ、「地域住民や有力者を敵に回してまでも人質を殺すのは組織にとって不利」との計算が働く。
しかし、イラク・アルカイダ機構は極端に政治・宗教色が強い。国際テロ組織アルカイダ系のうえ、ヨルダン人のザルカウィ氏が率いる、とみられる「外来組織」だ。地元勢の説得が通じない可能性もある。
香田さんの場合は「日本政府への脅迫」と最初から宣言し、要求は「自衛隊撤退」の一点。交渉や説得の糸口が持ちにくい形だ。日本人全員が解放された4月の事件とは大きく異なり、難航する可能性は否めない。
(10/28 08:47)
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