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昨年の新潟豪雨被災地の様子(1)=気象キャスターネットワーク正会員の北角友和さん撮影 |
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昨年の新潟豪雨被災地の様子(2)=気象キャスターネットワーク正会員の北角友和さん撮影 |
毎年、7月になると「梅雨が明けたような夏空が続くのに、どうして梅雨明けが発表されないの?」といった問い合わせが相次ぎます。しかし、これには深い訳があります。梅雨明けの発表には防災が関係するので単に目先の天気が安定していても、この先の予報で梅雨前線の南下が予想されるときは梅雨明けの発表は見送られます。
梅雨末期になると毎年のように集中豪雨が発生します。ことしも南西諸島の梅雨末期に当たる6月中旬から下旬にかけては、沖縄や奄美地方などで大雨になりました。那覇では6月の月間最多雨量記録を113年ぶりに更新し、月間雨量が800ミリを超えました。この雨のほとんどがわずか一週間で降ってしまうほどの集中的な降り方でした。これが梅雨末期の大雨の特徴でもあります。
沖縄や奄美地方で梅雨明け後、東北地方から九州では7月になって空梅雨一転、豪雨のところもあります。たとえ現時点で雨の量が少ないところでも、梅雨が明けるまでは大雨に対する警戒が必要です。最後の最後まで気が抜けないのが梅雨前線です。ですから、気象庁は梅雨明けの発表は慎重に慎重を重ねて検討しています。梅雨明けの発表イコール梅雨前線による大雨の恐れがなくなったという意味があるのです。極端な話、梅雨明け直前までに雨量が0ミリでも、一日にして梅雨期間の雨量に相当する300ミリの大雨が降ることだってありえます。
一般的に、年間降水量の10%の雨が一日に降ると土砂災害の危険性が高まるといわれています。つまり、日本では平均的に約100〜300ミリの雨が24時間に降ると、がけ崩れや山崩れ、土石流などの土砂災害が起こりやすくなります。
私の生まれ故郷の熊本県八代市では、東シナ海からの湿った暖かい空気が流れ込んで九州山地にぶつかるため、雨雲が急発達し、梅雨の時期の大雨が多くなります。梅雨期間の雨量は八代市で約800ミリとなり、東京の約3倍です。大雨になるとあたりが真っ白になって前が見えなくなるほどで、雨に当たると痛いです。集中豪雨が発生するときは「夜の雷は大雨の兆し」と言われるように、夜になると激しい雷雨になっていました。目の前を流れる日本三大急流の一つ球磨川があふれて学校が休校になったこともあり、父の実家が洪水で浸水したために復旧作業の手伝いに行った経験もあります。このようなことがきっかけで、私は中学3年生のときに災害を軽減できるような仕事に就きたいと、気象予報士への道を決めました。
土砂災害から身を守るためには気象台からの気象情報に注目するだけではなく、自然界のサインを見逃さないことも大切です。渓流の水の音が小さくなると土石流の危険性が高まるといわれますが、上流で土砂によってせき止められた水が一気に流れ落ちてくることがあります。さらに、がけから濁った泥水が落ちてくるようになったらがけ崩れが起こります。このようなサインを見つけたら近所の人に声をかけ、安全な場所に早く避難することが被害を少なくする第一歩になります。
(つづく)
《筆者プロフィル》
平井信行(ひらい・のぶゆき) 気象予報士。1967年熊本生まれ。大学卒業後、日本気象協会へ。気象キャスターとしてテレビ番組に出演。NPO法人「気象キャスターネットワーク」の代表も務める。著書に「天気予報はこんなに面白い!−−天気キャスターの晴れ雨人生」(角川書店)がある。