現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 特集
  4. シリーズ「在日華人」
  5. 記事

道を探る 台湾の未来思い、選挙支援へ動く――第11部〈台湾脈脈〉

2010年3月23日16時0分

写真左から3番目が後の「台湾共和国臨時政府」主席・廖文毅氏。その右背後の男性が陳悟桐氏=51年1月、神奈川・大磯、高砂イヨさん提供

写真両親が残した日本での写真や資料を手に取る李嘉進・国家安全会議諮問委員=台湾総統府、野嶋写す

 台湾の政治にも在日台湾人はかかわる。国民党の馬英九(マー・インチウ)総統が2年後に再選され、中台接近は加速するか。民進党が政権を奪回するのか。それを占う12月の台北市など5大都市市長選を見つめる。

 7日、都内であった「台湾独立建国連盟日本本部50周年記念会」。独立運動に携わってきた在日台湾人ら約150人が集まった。台湾から駆けつけた連盟総本部の黄昭堂主席(77)が、連盟が協力する民進党の復調を伝えた。「5都市選挙は、三つは確実。四つは勝てるでしょう」

 50年前に連盟日本本部の前身である「台湾青年社」を日本で結成したひとり。民主化後の台湾に戻り、2000年の民進党政権誕生を支えた。

 戦後初期の日本には国民党の独裁から逃げてきた台湾人が集まり、独立運動の「ゆりかご」となってきた。

 1枚の写真がある。1951年1月、神奈川・大磯での撮影。55年に設立される「台湾共和国臨時政府」の廖文毅主席らが開いた会議の写真だ。廖主席の後ろに鋭い目つきの男がいる。陳悟桐氏だ。

 台湾の元高校教師で2・28事件で教え子をかばい、身の危険を感じて香港に密航。廖氏と出会い、側近として臨時政府設立に奔走した。臨時政府は10年ほどで頓挫し、廖氏は国民党と和解して台湾へ。陳氏は残り、商売で稼いだ金を独立運動に提供し、台湾の若者に独立を説きながら91年に死去した。「自分は捨て石の人生でいいんだ、が口ぐせでした」。神戸に住む妻高砂イヨさん(57)は語る。

 陳氏の薫陶を受けた一人が台湾の元駐日代表、許世楷氏(75)だ。東京大大学院で学び、臨時政府から独立運動を引き継いだ台湾青年社の中核となった。日米欧で雑誌を出して運動を広げ、民主化への「外圧」をつくった。

 「台湾では90年代まで半数近い人が自らを『中国人』と呼んだが今は『私は台湾人で中国人ではない』と考える人が65%いる」。日本で「台湾は独自の道を」と訴えた陳氏や許氏の思いが根付いた。

 独立派の伝統を引き継ぐ一人が、メールマガジン「台湾の声」の林建良編集長(51)だ。栃木県日光市の診療所長でもあるが、台湾の将来が気になる。台湾出身者の外国人登録証の国籍欄表記を「中国」から「台湾」へ変える活動などに力を入れた。新たに導入される在留カードには「台湾」の記入が可能になった。

■「どの党でも」の人も

 「馬総統には人間的な魅力がある。次の総統選も必ず勝てる」。都内の自宅居間で国民党中央評議委員の荘海樹・日本大大学院元教授(76)は語る。日本で政治制度を学び、いまは日本の馬英九後援会の一つをまとめる。08年の総統選では、華僑約100人と台湾へ戻り、馬氏に投票した。日本には千票の馬票があるという。日本籍を有するが、台湾は「二重国籍」を容認し、総統選の投票は可能だ。

 遠東国際貿易(東京)の林丕継社長(75)は「世界で7千万人いる」という林氏一族の結束を促す日本林氏宗親総会の名誉理事長でもある。国民党の記念皿がある事務室で「台湾にも中国にも多数がおり、平和な交流を望む」。

 かつての日本支配にも国民党にも反発し、親中国の立場で統一を訴える在日台湾人もいる。一方、政治に距離を置く人も少なくない。

 北部・苗栗県出身の葉彦宏さん(46)は「台湾人の暮らしに利益があるなら、どの党でも構わない」。89年に来日。貿易や人材派遣など事業を拡大し、5月、台湾人や中国人客に人気の山梨・石和温泉の旅館と連携し、日本の文化や言葉を学ぶツアーを始める。「仕事の9割が中国絡みという時代ですから」

■「日台関係は感情の関係」

 李登輝氏ら親日・知日派の系譜も脈々とつながる。

 12月の台中市長選に出馬準備中の民進党・林佳龍氏(46)は公約に「台中・山手線構想」を掲げる。98〜99年に日本の国連大に留学。「日本の交通システムに感銘を受けた」。民進党政権下では党秘書長などの要職を歴任した。

 「日本は世界一優れた国だ。日本に留学しなさい」

 国民党政権の国家安全会議で諮問委員(閣僚級、日台関係担当)を務める李嘉進氏(53)は戦前の日本で20年近く工員として働いた亡父の勧めで87年から筑波大大学院で学んだ。総統府の執務室には当時の大阪の家の前で両親が写したモノクロ写真を飾る。

 「日台は『感情の関係』だ。普通の外交関係は国益が基本だが、日台は特別。お互いの好感度が抜群に高い。戦前からの歴史が育てた深い感情が出発点となっている」(野嶋剛、五十川倫義、林望)

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内