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知っていても使えなかった

 緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムという仕組みがある。英語表記の頭文字をつないでSPEEDIと書き「スピーディ」と呼ぶ。気象や地形のデータから、原発から出てしまった放射性物質がどのように広がり、各地点の放射性物質の大気中の濃度や地表蓄積量、甲状腺への被曝の影響を表す甲状腺等価線量といった放射線量が、時間の経過とともに、どのような値になるかを予測する。
 原発事故が起きた際の住民の被曝量を抑えようと120億円をかけて開発された。福島原発事故では動いていたものの、住民の被曝量の低減には生かされなかった。事故時の危機管理担当官房副長官、福山哲郎は、政府事故調査・検証委員会の聴取に対し、その理由を次のように説明した。

福山「SPEEDIの話で申し上げると、SPEEDIのことについては一切16、17日まで知らないと思います。メディアを通じてSPEEDIというのがあると聞きましたけれども、何のことやらさっぱりわからないというのが実態のところでした」

 「これは私の記憶は定かではないのですが、小佐古先生が登場してからか、小佐古先生が登場する前かわからないのですけれども、どちらにしても3月20日の以前、3月16日以降です。16〜20日の間に私は班目委員長を自分の副長官室に呼んで、副長官の私と秘書官と班目委員長と3人でSPEEDIというのがあるらしいけれども、なぜあんなに言われているのと、回しているのだったらちゃんとやって持ってきてよと言ったら、班目さんは私に明確にSPEEDIは動かしていませんという話をして、自分は所在についても知らない、SPEEDIについてはわからないという話をされました。それで小佐古さんがいろいろ言いだして、SPEEDIで最も世の中が騒ぎ出すのが17、18日だと思います。そのときに私は官房長官とそれこそSPEEDIの担当である文科省や安全委員会、保安院を呼んでどうなっているんだというのを官房長官とやりました。これは2回やっています」

写真|SPEEDI端末の画面=上地兼太郎撮影

 「私の部屋でやったこともあるし、官房長官の部屋でやったこともあるのですけれども、そのときに逆に官房長官からも言いましたけれども、私が個人のときも言いました。モニタリングの数字があるでしょうと、モニタリングの数字があるのだから、そこから逆算して放出源情報を取り出して、SPEEDIは動かせないのと。彼らはすぐに放出源情報がないから動かしていませんというから、逆算したらできないのかみたいな問題提起は明確に枝野さんと私がしました」

 「結果として出てきたのがダストサンプリングの22日、4カ所で取れたといって23日に出てきます。ここから先は後付けの議論ですが、なぜ17日、18日にやれと言ったのに出てこなかったのかと言ったら、文科省や安全委員会がいったのは、18〜21日ぐらいまでは風向きが海側に吹いていたので、うまく有効なダストサンプリングが取れなかったのでSPEEDIは出せませんでしたと答えています。そのことについては、真偽のほどは私はわかりません。ただ、SPEEDIに関しては現実にそういう状況です」

16日…2011年3月16日、小佐古先生…小佐古敏荘・内閣官房参与、班目委員長…班目春樹・原子力安全委員会委員長、安全委員会…原子力安全委員会、保安院…原子力安全・保安院、官房長官…枝野幸男・官房長官

 班目は朝日新聞の取材に対し、SPEEDIについて、放射性物質がどれだけ放出されたかの情報がないので本来の使い方では動いていないと説明したと話した。それはともかく、福山が知らなかったSPEEDIは、福山と班目の知らぬところで動いていた。