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09月18日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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家庭遺産 今週の家庭遺産
あなたの家族の思い出を、遺産として登録する家庭遺産。
今回もとっておきの遺産を三つご紹介致します!

9:婆ちゃんが編んだドレスを着たキユーピー



百歳になる頃に、祖母が編んだドレスを着たキユーピー。
関東大震災前は赤坂で女中さんをしていたとのこと。
大震災後は田舎に戻って、農作業と家事に明け暮れ、八百屋に嫁いだ。
ぼた餅や筍の煮物、手打ちのうどんなどが得意。
家事が終わるとセーターなどを解しては編み物をしていた。
そのうちの一つがこれだ。

百歳を迎える頃にこのキユーピーをくれた。
ドレスやフリルをどこで覚えたのだろうか。
ショルダーバッグの中には小さく折り畳んで五千円札が入っている。
小さなキユーピーには百円玉や千円札を入れてくれた。
「誰が来る前にしまっちまえ。お前だけにお小遣いだよ」
社会人になって何年も経っているなんて言えなかった。
一度だけ本当に使ってしまったことがあり、今でも非常に悔いている。

やがて寝た切りになり、意識も無くなり、手も握り返さなくなってしまった。
その手を取りずーっと話しかけていたら婆ちゃんが泣きはじめた。
声は聞こえていたようだ。 それから一週間後、婆ちゃんは花に囲まれて寝ていた。
涙を拭いたティッシュペーパーは
折り畳んでキユーピーのショルダーバッグにしまってある。
うちの家族しか知らないお守りで遺品で思い出で家族の遺産である。
今度、寝たきりの母ちゃんに持って行く。


所有者ネーム にへい たかゆき


家庭遺産
あまりに素敵なエピソードなので、全文を掲載させていただきました。 若輩者なので知ったふうには言えませんが、 激動の時代を生き抜いたお祖母さまが、余生の楽しみにしたキューピーの服作り。 かわいらしいフリルのなかにも、しみじみしとした人生の深みを感じます。 いつも添えてくれたお小遣い、遣ってしまったことを悔いる投稿者さまの心根にも共感します。

それでもお祖母さまにとっては、やはり嬉しいことだったのではないでしょうか。 そして、ショルダーバックの中の御守り。 受け継がれる絆、心に染みました。

10:富山の薬売り



今から46年くらい前、父が富山に出張の際、
付き合っていた母にお土産に買ったものだそうです。
子供の頃からぶきみなおじいさんの置物(しかもリアル)だなあと
思っていましたが、 父が母に送った数少ない贈り物なので、
捨てられもせず飾られていたらしいです。
おじいさんの薬売り、彼女に買うか?!
という疑問でいつもいっぱいになりますが、
父曰く「富山と言ったら薬売りだ!」と。

所有者ネーム 大島直美


家庭遺産
当時、恋人からこれをプレゼントされたお母さまの気持ちを考えて、笑ってしまいました。 両親の恋愛話というと、聞かされる子供にすれば、くすぐったいものですが、 こんなエピソードなら何度も聞きたいですね。 「富山と言ったら薬売りだ!」って……どこにロマンスが(笑)

でもこの薬売りじいさんが、ご両親の愛のキューピットなのです。 そしてそんなご両親から生まれた娘として、これからも強く生きていってください。

11:カシオ 801-MR



我が家の家庭遺産は、電卓の初期に購入した「カシオ 801-MR」。
数字の表示が「緑の蛍光表示管使用」の今ではお目にかかれない電卓です。
電源に単3型乾電池4本も使用して
マンガン乾電池で  約14時間
アルカリ乾電池で  約28時間
その当時の8桁表示の電卓は珍しいものでした。
その性能は今の電卓に引けを取りません。

所有者ネーム ハルニ


家庭遺産
詳しい性能と持続時間、ありがとうございます。 電卓自体が珍しい現在、たしかに緑の蛍光表示はいま見るとレトロでかっこいいですね。 当時、電卓は本当に高価で貴重でした。

この電卓にはその頃の、気品と威厳のようなものを感じます。 しっかりと点灯している数字も現役感がありますね。 我が国の電機産業も、再び巻き返して欲しいものです。 貴重な遺産、ありがとうございました!

家庭遺産では、みなさまからの味わい深い遺産を心よりお待ちしております。 遺産登録ご希望の方は下の「応募はこちらから」をクリックください。
申請から認定までの流れ
 あなたの家の家庭遺産を写真に撮り、それにまつわるエピソードと共にお送りください。 応募の際は、応募フォームの注意書きもよくご覧ください。

 応募いただいた家庭遺産について、より詳細なエピソードをお聞きする場合がございます。その際こちらから連絡を差し上げますので、連絡をとれるご自身のメールアドレスと電話番号をご記入ください。

 認定された家庭遺産は、朝日新聞デジタルと一部紙面で順次掲載します。またご応募いただいた方には認定証をお送りいたします。
家庭遺産とは?

~家庭遺産委員長・天久聖一さん寄稿~
 家庭遺産。それはどこの家庭にもある、家族にとって忘れられない思い出のつまった宝物です。世界遺産が後世に残したい人類共通の遺産なら、家庭遺産はその家庭バージョン。家族だけが知っている、もっとささやかな遺産です。

 それは他人から見るとぜんぜん意味のないものかもしれませんし、場合によっては当の家族からも迷惑がられているものかもしれません。たとえばお父さんが家族の白い目もかえりみず集めたコレクション。お母さんが突然つくりだした奇妙な手芸品、こどもたちが幼い頃つくった謎の工作。旅行先で浮かれて買ったものの、いまは押入で埃を被っている土産物などなど。

 そんな捨てるに捨てられない、けれどたしかに家族の歴史を刻んだ宝物を発掘、紹介するのが私たち家庭遺産委員会の活動です。あなたの家庭に眠る貴重な遺産を、その遺産にまつわるエピソードを添えてお送り下さい。あなたの思い出がつまった家庭遺産には、世界遺産以上の価値があるはずです。きっと。

筆者プロフィール天久 聖一

1989年、マンガ家としてデビュー。現在は演劇脚本、小説執筆、映像制作など多方面で活躍している。マンガのバカドリルシリーズや、ほぼ日刊イトイ新聞での連載「味写道」「家庭遺産」を執筆。朝日新聞デジタルで「家庭遺産」をリニューアルし、連載を開始。

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