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07月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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 日本の景気はどうなるのか? 経済政策「アベノミクス」の成否はどうなのか? 論説委員がエコノミストに迫り、旬のテーマをやさしく解説します。

消費税アップ、日本経済は上がる?下がる?

vol.1

ゲスト:斎藤太郎・ニッセイ基礎研究所経済調査室長 聞き手:小陳勇一・朝日新聞論説委員

【動画】朝デジけいざい入門「消費税アップ、日本経済は上がる?下がる?」=戸田拓・瀬戸口翼撮影
写真 斎藤太郎氏
(さいとう・たろう)
 ニッセイ基礎研究所・経済調査室長。
1967年生まれ。46歳。1992年日本生命入社。96年からニッセイ基礎研究所。2012年から現職。神奈川大学非常勤講師(日本経済論)。専門は日本経済の予測、労働市場の分析。

消費の落ち込み「想定内」ってホント?

小陳 日本銀行の黒田東彦総裁が今月15日の記者会見で、消費税がアップした後の個人消費の落ち込みは「想定内」で、日本の経済は軌道にのって、今後も成長していくんだという趣旨の話をしていました。いまの日本経済の状況をどうご覧になっていますか?

斎藤 もともと、消費税が引き上げられた後は、駆け込み需要の反動で、ある程度、景気が落ち込むというのは分かっていたことなので、そういう意味では「想定内」だと思います。ただ、細かくみると、良いところや悪いところ、いろいろあるという感じです。

小陳 まず日銀の短観(全国企業短期経済観測調査)をみると、前回3月の調査は当然、駆け込み需要なんかもあって、業況判断の指数は上がって、今回は落ちた。しかし、この後上がっていくと。このあたりは想定内ということでしょうか。

写真大企業製造業は1年半ぶり悪化 日銀短観

斎藤 先行きについては比較的強めに見ていますし、今回の6月調査で指数は下がりましたが、水準そのものは高い。大きなプラスを維持していますので、企業の景況感自体は、増税後も比較的底堅いと見てもいいと思います。

企業の動きは大丈夫?

小陳 少し心配なのは企業部門、「設備投資」です。5月の機械受注の統計をみると、企業が設備投資をしようと思って機械を発注する、どれだけ機械メーカーが受注したかという統計ですが、19.5%も前年の同じ5月に比べて減っています。企業部門は本当に大丈夫なんですか?

写真設備投資に変調 5月の機械受注19.5%減

斎藤 確かに19.5%減は非常に大きいんですけれども、もともと機械受注というのは、大型案件があるかないかで、振れが大きいという特徴があります。単月をみただけでは、なかなか基調が判断しにくい。減ったから大変だとは即答できない。
 それともう一つ、設備投資でも、消費増税の前にかなり駆け込みで投資した企業が多かった。それの反動で設備投資に少し悪影響が出てくると思いますので、落ち込みが続くということは、あまり心配しなくていいと思います。

小陳 消費増税といいますと、1997年、前回の増税があったとき、日本経済がすごく落ち込んだように思うんです。あのときのようなことは今回ないと考えていいのでしょうか?

斎藤 明らかに違うのは、あのときは、「アジア通貨危機」という外部環境がものすごく悪くなったというのが大きい。それに加えて、国内の企業が弱かった。設備、雇用、債務の「三つの過剰」を抱えたうえで、消費増税があった。企業の体力はほとんどなくなった。今回どうかというと、企業の財務体質が抜群に上がっていますし、収益力も上がっている。企業は相当強くなっています。

小陳 すると一時的な落ち込みはあっても、企業部門は上向いていくと期待できるということですか。

斎藤 企業部門は、それほど心配はしていません。

財布ひも、引き締め続く

小陳 そうするともう一つ心配なのが、我々の生活により身近な家計部門なんですが、総務省が毎月、全国のおよそ9千世帯を対象に調査している「家計調査」、いくら収入があっていくら使ったかを調べて個人消費をとらえるものなんですが、これが今年の5月に前年の同じ月より8%落ち込みました。この8%減というのは、東日本大震災があった2011年3月(8.2%減)並み。あまりにも大きな落ち込みという感じがするんですが、どうですか?

写真家計調査 財布のひも、引き締め続く

斎藤 そうですね。黒田総裁は「想定内」と言われているんですが、私からするとやや想定以上に落ちているんじゃないかと思うのが個人消費です。この家計調査はその個人消費の代表的な指標ですけれども、8%減というのは正直言って事前には予想していなかった落ち込み。少し「想定外」ではないかと思います。

小陳 どうしてこんなに落ち込んだんですか?

斎藤 企業と違って、家計の場合は必ずしも前回の増税よりも楽だと言うことはなくて、むしろ賃金は当時よりも上がっていない。一方で物価は消費税を上げたということもありますし、それ以前から物価は上がっていました。いま消費者物価は平均すると4%くらい上がっている。賃金があまり伸びてなくて、物価が上がってしまっているので、実質的な収入が目減りしてしまっている。ですので消費を抑えざるを得ない。そういう状態になっている。

小陳 今年の春闘では、政府もかなり力を入れて、「官製ベア」とも言われましたけれども、久しぶりにベースアップをする企業が広がっているかのような印象もあったんですけれども。あまり給料は上がっていないんですか?

写真消費増税後も家電量販店のテレビ売り場はにぎわっていたが……=6月、東京都千代田区のヨドバシカメラマルチメディアAkiba店

斎藤 ベースアップする企業は増えている。しかし実際は、物価の上がり方に、ベアの上がり方が全然追いつけていない。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、5月の現金給与総額の増え方は前年に比べて1%未満。一方で消費者物価指数は、生鮮食品をのぞく指数で、前年より3.4%上がっています。

小陳 企業部門は比較的しっかりしているが、家計部門はやや心配ということで、政府・日銀が想定しているように日本経済が立ち直っていくのか、どうなのか? カギはどのあたりを中心に見ておく必要があるんでしょうか?

斎藤 基本給は実はあまり上がっていない。期待されるのは夏のボーナス。昨年度の企業業績は非常に良かったので、ボーナスを上げる企業が増えています。ボーナスの場合は基本給よりも上がり方が大きくなると期待ができるので、夏になってくると収入が増えて、消費に回す余裕が少し出てくると期待しています。

街の景況感、2カ月続け改善 6月、ボーナス増に期待感 (2014/7/9)

 内閣府は8日、商店主やタクシー運転手らに景気の実感をたずねた6月の景気ウオッチャー調査を発表した。……… [続きを読む]

小陳 これから夏になってきて、家計調査のグラフが上を向いてくるかどうか、今後の日本経済を左右するカギになるということですね。

斎藤 そうですね。

成長の天井

写真有効求人倍率は22年ぶりの高水準になった

 景気が上向き、企業が人手不足に困っているらしい。ハローワークで仕事を探す人1人に何人分の仕事があるかを示す有効求人倍率が、5月は1.09倍。1992年6月に記録した1.10倍以来の高水準だという。

 92年6月を振り返ると、日経平均株価は1万5千円台で推移している。89年末に3万8915円の最高値をつけたあと急降下し、いまと似たような水準にあった。とはいえ、まだまだ街にはバブルの薫りが漂う。ディスコ・ジュリアナ東京がお立ち台で一世を風靡(ふうび)したのもこのころだ。

 そんな時代と同じくらい、現在は人手が足りないのだろうか。

写真1992年4月、大手人材派遣会社は、ディスコ・ジュリアナ東京を借り切って入社式をおこなった

 思い出したのが「07年問題」という言葉だ。

 団塊世代の人たちが2007年から定年退職を迎え、働き手が減り、ベテランの技術を次世代に引き継ぐのが難しくなる。そんな懸念を表した言葉だ。

 私は06年春から07年夏にかけ、名古屋で経済取材を担当していた。トヨタ自動車が米国のGMを抜き、世界一の自動車メーカーに上り詰めようとしていた時期。05年に愛知万博を開いた余韻も残り、東海地方は国内で最も景気が良かった。それだけに中小企業からは「07年問題」を心配する声がよく聞かれた。

 だが、「07年問題」は杞憂(きゆう)におわった。

 年金支給年齢の引き上げにともない、定年退職後の再雇用が広がったのが一因だ。08年秋、リーマン・ショックが世界を襲った。景気の悪化で日本企業もリストラ、雇い止めを重ねた。人手不足を心配するどころではなかった。

 しかし、その裏で労働の担い手は確実に減っていた。

写真自動車工場の生産ラインでは、すでに人手不足が目立ち始めている=福岡県宮若市

 日本の労働力人口は97~98年に6800万人を超えたあと減少し、04年11月には6615万人となった。そこから再び増え、07年11月に6703万人に達し、また減りはじめた。今年5月は6590万人。07年11月より113万人少ない。

 景気が良くなりはじめたかなと思ったら、とたんに人手が足りなくなったのは、要は働き手が減ったからだ。

 最近聞く言葉が「経済成長の天井」だ。労働力が減って日本の「経済成長の天井」は低くなっており、ちょっと需要が増えると供給が追いつかなくなる、というわけだ。

シリーズ「人手不足列島」(2014/5~)

 日本列島を縦断する人手不足は、働き手の4割弱を占める非正社員の待遇改善などのプラス面がある一方で、長引けば経済成長の足かせにもなりかねない。人手不足が浮き彫りにする日本経済の課題を考える。………[続きを読む]

 だとすれば、財政支出や金融緩和で需要を刺激しても、すぐに天井にぶつかることになる。国や自治体が公共事業をしようにも、企業が設備投資をしようにも、働き手がいなければはじまらない。そうなると、たいして成長しないのに、人手不足で賃金が上がり、物価も上がる事態になる。

 ただ、有効求人倍率が高水準といっても、中身がともなっていない。正社員の求人倍率は0.67倍だ。業種によってもばらつきがある。天井を高くする工夫の余地はありそうだ。

 目に見えない天井との距離をどうみるか。それが今後の経済政策を考える際の大切なポイントになりそうだ。

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