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 日本の景気はどうなるのか? 経済政策「アベノミクス」の成否はどうなのか? 論説委員がエコノミストに迫り、旬のテーマをやさしく解説します。

アベノミクス「女性活用」、ガチで言ってる?

vol.2

ゲスト:治部れんげ・昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員 聞き手:小陳勇一・朝日新聞論説委員

【動画】朝デジけいざい入門「アベノミクス『女性活用』、ガチで言ってる?=戸田拓・瀬戸口翼撮影
写真 治部れんげ
(じぶ・れんげ)
 昭和女子大学・現代ビジネス研究所研究員
1974年生まれ。40歳。1997年から日経BP社で経済誌記者を務める。2006年から2007年、米ミシガン大学フルブライト客員研究員。2013年から現職。専門は女性の労働と男性の家庭参加。

「登用目標」は逆差別か

 小陳 女性がますます活躍できる社会にするためには、何をどう変えていかなければいけないのか。ジャーナリストの治部れんげさんにお話をききます。

 安倍政権は「女性の活用」に力を入れていて、社会の指導的立場に立つ人に占める女性の割合を2020年までに30%にする、という目標を掲げています。働く女性は増えてきているのに、このような目標を掲げなければいけないのはどうしてなんでしょうか?

写真女性の年齢別就業率の変化

 治部 日本では、働く女性は少なくないにもかかわらず、管理職など指導的地位に立つ女性は少ない。その一番の大きな原因は、女性は仕事を中断しがちなことです。特に結婚や出産でいったん労働市場から離れることが多いということがあげられます。いわゆる「M字カーブ」と言われていますけれども、学校を出たばかりは女性の就業率は高いのに、結婚や出産でまた家庭に入ることがわかっています。近年、このような状況は減ってきているのですが、依然、就業率がへこみM字形になっています。

 小陳 最近、経団連が会員企業に対して「女性を登用する目標を作るように」と言っていますが、こうした企業の動きはどう見ていますか?

 治部 もちろん肯定的に見ています。これまでは女性の活用や女性の管理職を増やすというのは個別企業の努力で進んできたんですが、経団連という、日本を代表する企業の「群」がすすめることで評価しています。

(教えて!成長戦略:7)女性管理職の割合、欧米並みに?(2014/8/13)

 日本企業で女性の課長はいま、100人に約9人。6年後の2020年までに30人に増やそうと、政府は成長戦略で、企業や自治体に女性登用のための数値目標の設定や計画づくりを求める方針を盛り込んだ。………[続きを読む]

 小陳 数値目標を作ると男性社員から「逆差別だ」と反発もあると思うのですが。

 治部 その気持ちはすごく分かります。いま私は40歳ですが、同世代の男性たち、彼らも一生懸命働いていてこれから幹部を目指していく、そんな彼らにしてみれば、自分たちはこれまで何も悪いことはしていないのに、いきなり競争が普通ではなくなって、女性が有利に見えてしまうことについて悔しいという気持ちはよく分かります。

 ここで大事なのは、日本の企業社会がどういうゴールを目指すのか、ということです。普通にしていますと先ほどのM字カーブがありましたように、女性は結婚、出産でやめてしまう、そういう環境がある中で、女性の労働力をより底上げしようと思ったら何らかのサポートが必要です。

男性は家庭進出を

 小陳 現在の議論で若干気になるのが「育児や家事は女性の仕事である」という考えが前提で、女性が育児しながら仕事ができるようにするにはどうしたらいいか、という視点が強いように思います。

写真「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について

 治部 おっしゃるとおり。女性の社会進出を進めるためには男性の家庭進出が必要だと思います。私自身は大学の同級生と結婚して、いま6歳と2歳の子どもを育てながらフルタイムで仕事をしております。どうしても大事な仕事が入ったときに子どもが病気になったら、夫が子どもをみるということもしております。もちろん逆もあります。夫が出張の時は私が見なければならない。夫婦がともに働きともに家庭を見られるようにすることが、高等教育を受けた女性が、その能力を発揮し続けるために大事だと思います。周囲で仕事を続けている、M字でへこまなかった人たちは、家庭のことを夫婦でシェアしています。

 小陳 雇用機会均等法から30年近く、女性の社会進出に、なぜこんなに時間がかかるのでしょうか。

写真1985年、参院社会労働委員会で、男女雇用機会均等法案の採決を見守る女性たち

 治部 過去にやってきた政策も悪くない。ただ、本気度が足りなかった。合計特殊出生率が2に近い先進国はGDPに占める子どもや家族関連の支出は3%超だったと思います。日本だけぐんと少ない。今春、消費増税しても子ども関連は7000億円しか使えず、全体において子育て支援や家族を支援していくとこでは手薄かった。そういう意味で、やり方が甘かった。

 少子化が始まったのは1970年代半ばから。私は74年生まれ、私の母以降、女性は2人以上生んでいない。日本という国の観点から見るとかなり危機なわけです。子どもが2人以上生まれなくなってきている状況というのは、国がだんだんなくなっていくこと。本気で国力を考えれば、雇用機会均等法と同時に、バブルのころは企業も体力があったので、もっと真剣に政策を進めるべきだった。そのときに、なんとかなるんじゃないかと変な方向にリソースを配分してしまった。

若いときの「バカヤロー」

 もう一つ、女性自体の課題が大きい。米国の女性はすごく高学歴。大卒だけでなく学校歴が高い。カリフォルニア大バークリー校では、2000年にはビジネススクールやロースクールなど専門職大学院の女性の入学者数が男性を上回っている。企業の中でも、昇進して役員になるような女性たちが、男性と同じだけ数がいるって思えるんですけど、日本はそこに至っていない。

 小陳 どうしてなんでしょうか。勉強できる優秀な女性は大勢いる。

女性役員、先駆者たちは 金融大手、均等法「第1世代」を登用(2014/4/28)

 大手の銀行や証券会社でこの春、女性役員が相次いで生まれている。男女雇用機会均等法の「第1世代」が実績をつみ、社員を束ねる力が認められてきたからだ。………[続きを読む]

写真金融界で女性役員が増えてきた

 治部 もし東大、京大、早慶上智、東工大などで、男女比が4:6で、女性の方が多かったときに、もうちょっと変わると思う。女性は、一生懸命勉強して学歴を高くするよりも、まだまだ結婚できたほうがいい、という意識が強い。女性側ももうちょっと努力してもいいんじゃないか。私は一橋大を卒業していますが、入学した20年ちょっと前に、女性が4分の1を超えたと大騒ぎした。いまどうなっているかというと、社会学部と法学部は3割を超え4割近い年もありますが、経済学部は13%、商学部は21%にとどまります。企業の役員や管理職、就職の段階のところで「いい会社」に入るポテンシャルのある資質の女性が半分になっていない限り、男性のホンネではまだまだ女性の資質が足りないんじゃないかなって思うんです。

 また、若いときのトレーニングの機会が、女性は男性に比べて少ない。公式な研修ではなく、叱咤(しった)され育てられる経験が少ない。24、5歳くらいの男性で、まだビジネスパーソンとして完成していないときに、彼がもし仕事でできないことがあったらおそらく上司は「バカヤロー!」となる。でも、彼女が同じような失敗をしたときに「バカヤロー!」とは言わない。女性は入社試験では優秀だし、コミュニケーション能力が高い。だが、30過ぎるとたいしたことなかったように見えた男性が伸びていく。女性はそこにライフイベントが重なっていく。

 男性の上司は、若くて完成度が高い女性にもちゃんと、男性部下と同じように「バカ!」といってあげて下さい。言われなかったことのツケが30過ぎてから出てきます。30過ぎた女性にダメ出しをしないですよね。若い時にちゃんと叱られないと、40過ぎたときには「あれっ?仕事がない」みたいになっていく。優秀な女性を指導する立場にいる男性のマネジャーに少し意識をしておいていただきたい。

「第4の矢」カギはあの人?

 小陳 もう一つ気になるのが、現在の議論はどうしても大企業に政策の重点があるように思います。中小企業や非正規の女性の問題が残されており、政策の視野を広げていく必要があると思います。

 治部 いったん結婚や出産で家庭に入った女性は、どんなに能力が高くても同じような仕事に戻ることは大変難しくて、非正規雇用になって賃金が下がってしまったり、昇進が見込めるような部署にはつけなかったり、といったことはあります。

キャリアダウン、働くママだけ? 均等法と分断の85年(2014/8/2)

 昨年秋、三井住友銀行の東京都内の支店に勤める30代の女性は、社内サイトでこんな募集を見つけた。  「総合職(リテールコース) ワーキングマザー向け職種転換」………[続きを読む]

 小陳 安倍政権の政策で気になるところは? 去年は「3年育休」なんて話もありました。

 治部 経済政策から社会政策に踏み込めるかどうかです。そもそも安倍さんが「女性の活用」と言い始めたのは、日本の国際競争力が落ちているのを回復するため。「女性を活用すればGDPが上がります」という文脈の中で出てきた。基本的に海外に対するアピールで言っている。家庭内の平等というものを本質的に考えていこうと思ったら、嫡出(ちゃくしゅつ)子や選択的夫婦別姓と言った本質的な両性の平等に踏み込まなければいけない。だが、安倍さんの支持基盤はこういった問題に相当アンチなので、踏み込めるかが試金石といえる。

 小陳 安倍さんは、「私が女性の問題をいうのは社会政策ではなく、成長戦略だ」といっているので、社会政策には行かないのかなと。

 治部 経済界を説得するためには、これは経済政策であり成長戦略であり、福祉ではないというふうに。

 小陳 企業は成長戦略と位置づけられた方が動きやすいと思う。

 治部 夫婦別姓などに関しては企業の中の方がリベラル。私の経験からは、結婚して戸籍上の姓が変わっても、仕事で使う姓を変える女性記者ってほとんどいなくて、旧姓を使い続けていた。会社としては実力主義でみていて、山田さんが佐藤さんになっても、山田さんの仕事としてみているので、あくまで彼女がいいパフォーマンスを上げている限り、山田さんでも佐藤さんでも関係ない、気にしない。かなり合理的に動いている。

 一番男女平等を妨げている、保守的なものがどこで出てくるのか? それは結婚したときとか、冠婚葬祭とか。都市部ではふだん共働きで、旦那さんも家事をしているのに、盆正月に実家に帰ると台所に立つのはお嫁さんだけ。「あんた何なの?」と言われて旦那さんも「あっ、いや……」となる。そういうところはまだ残っていて、ここが本質的な次の課題なので、安倍さんにはがんばってほしい。

 先月、安倍昭恵さんの話を聞く機会があった。彼女は比較的そういった女性問題に関心をはらっている。7月には「女子高校生未来会議」というのがあった。自分が思い描くキャリアの実現を目指す女子高生たちの集まり。そこに登場した昭恵さんの話を聞くと、弱者に対する目配りが感じられた。「今日の話は主人に伝える」とも。ファーストレディーの役割はすごく大きい。そこまでコミットして動いているのは希望がもてる。

2030

 「2030(にいまるさんまる)」という言葉を昨年、今年とよく耳にする。「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」という政府の目標のことだ。

 この目標を政府が決めたのは2003年。ずいぶん前のことだが、安倍政権が昨年来、成長戦略の柱の一つに「女性の活躍」を据えたことで、注目されるようになった。

 産業界も取り組んでいる。経団連が役員企業47社の女性登用計画をまとめたところ、約6割の27社が数値目標を掲げた。そのうち女性管理職の比率について「16年度に30%」を目標とするのが資生堂だ。

女性登用27社が数値目標 経団連調査、役員企業の6割(2014/7/15)

 日本企業で女性の役員や管理職は増えるのか。経団連が14日に役員企業47社の女性登用計画をまとめたところ………[続きを読む]

 「経営の中に女性の意見を採り入れるのは自然なことでした」。資生堂人事企画室長の岡良廣さんはそう話す。顧客の9割、正社員の8割が女性という会社だからだ。

 資生堂が女性登用の方針を打ち出したのは04年。「13年に30%」という当初の目標は達成できなかったが、女性管理職比率は04年の10.4%が今年4月には26.8%に上がった。女性社員のキャリアアップのための研修や、残業を減らすなど働き方の見直しを進めた結果だ。

 「中高年の男性社員の意識はなかなか変わらないのでは?」

写真日本企業の管理職に女性は少ない

 そう尋ねると、54歳の岡さんからは、予期せぬ答えが返ってきた。

 「私が男性社員で第1号の育児時間取得者なんです」

 資生堂は1990年に育児休業制度を導入したのに続き、91年には育児のために勤務時間を短縮できる「育児時間制度」をつくった。岡さんは93年から1年半ほど育児時間をとり、働きながら幼児2人を育てた。それから20年。今は人事戦略を練る立場だ。

 国内で働く資生堂グループの男性正社員約3400人のうち、13年度に育児時間をとったのは7人、育児休業をとったのは5人。少しずつではあるが、20年かけて職場の環境は変わっている。

 しかし社会全般に目を向ければ、男性と女性の役割分担をめぐる意識は、なかなか変わっていない。

 国立社会保障・人口問題研究所が昨年7月に実施した調査では、妻がフルタイムで働く世帯でも、夫の7人に1人はまったく家事をしていなかった。

 女性の社会参画について話し合うため三重県が8月4日に開いた会合では、「男性の管理職に早く出て行けという感じになる」「我々は古い人間だから『女は下、女のくせに』という頭から逃れられない」といった発言が男性の出席者から相次いだ。

「古い人間だから、女は下」 女性参画目標で異論 三重(2014/8/5)

 日本企業で女性の役員や管理職は増えるのか。経団連が14日に役員企業47社の女性登用計画をまとめたところ………[続きを読む]

 岩盤のような固定観念を小さな変化の芽は突き破れるだろうか?

 サントリーホールディングス人事本部課長の森原征司さんは「臨界点に達すれば変化は確かなものになる」と、自社での経験を振り返る。

 サントリーは女性管理職の比率について「25年に20%」という目標を掲げ、同時に働き方の変革も進めている。

 その一例が在宅勤務とフレックスタイムによる柔軟な勤務だ。例えば、夕方早めに退社して保育園に子どもを迎えに行き、育児や家事をすませて夜、自宅で仕事の続きをできる。終日在宅勤務で昼休みを長めにとり、役所や銀行に行くなど平日の昼間にしかできない用事を済ませることも可能だ。

 昨年は全社員の半数以上にあたる3243人が在宅勤務を利用した。ダイバーシティ推進室長の平井弓子さんは「10年8月に在宅勤務を導入した際、マネジャー全員に体験してもらった。上司と部下が離れた場所で作業をしても支障はないと実感でき、利用が広がった」と話す。

 これまでの日本企業では長時間労働が当たり前で、育児や家事との両立は難しかった。その結果、出産・育児で離職する女性が多く、昇進のチャンスをなかなか得られなかった。

 女性登用を計画的に進めるため、いろんな企業で働き方の見直しが進めば、やがて日本社会全体の意識も変わるかもしれない。

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