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01月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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 日本の景気はどうなるのか? 経済政策「アベノミクス」の成否はどうなのか? 論説委員が各分野の専門家に迫り、旬のテーマをやさしく解説します。

気になる日立の「脱年功型賃金」

vol.4

ゲスト:平岡真一・日立製作所人財統括本部人事勤労本部担当本部長
聞き手:小陳勇一・朝日新聞論説委員

【動画】朝デジけいざい入門「気になる日立の『脱年功型賃金』」=戸田拓・瀬戸口翼撮影
写真 平岡真一
(ひらおか・しんいち)
 日立製作所・人財統括本部人事勤労本部担当本部長
1962年生まれ 52歳。86年、日立製作所入社。日立グローバルストレージテクノロジーズ(当時)の人財部門、日立グループグローバルの人財マネジメント企画立案・運営などを経て、2013年より現職。日立グループ国内の人財マネジメントの企画立案・運営を担当。

ウェットな関係がお互いを不幸に

 小陳 きょうは日本の企業が人事システム上どのような問題に直面しているのか、この秋に国内の管理職の賃金体系を大きく変更された日立製作所人材統括本部・人事勤労本部担当本部長の平岡真一さんにお話をうかがいます。

 この秋、日立では管理職の賃金体系を大きく変えられたと言うことなんですが、どのように変えられたのでしょうか?

 平岡 従来は、個人の能力や果たしている仕事を基準にしながら、どういった成果を上げているか、に着目して賃金を払っていました。新しい仕組みでは、個人の能力に着目することはなくして、担当している仕事の重さ、そこから上がる成果で賃金を払うようにしました。

写真日立の管理職の賃金はこう変わる

 小陳 変えた狙いはどこにあるのでしょうか?

 平岡 大きく二つの狙いがあります。一つは日本の多くの企業に共通する、日本人の働き方を変えていかなければならないのではないかという点です。具体的には、日本の多くの企業は新卒で採用して社内で育成する。これは大切なことですが、ややもすると個人がキャリアとして自立しない。会社も個人に依拠して、個人も会社にベッタリとくっつく。そうしたなかで、長時間労働になったり、外から入ってきた新しい方々を処遇し切れなかったりする問題がでてきます。

 小陳 よく「日本型雇用システム」と言われます。新卒で入って退職するまで同じ企業で働き続ける、年功賃金で年を取るに従って賃金が上がっていく、企業ごとの組合がある。これらが一体になって日本型の雇用システムを形づくってきたと言われています。これは変わらなければいけない時代になっているのでしょうか。

写真日本型雇用システムの特徴

 平岡 現実問題として、労働組合とか長期の雇用は大切だと思います。ただ一方で、一人ひとりの成果の差というのは徐々に大きくなってきているので、一律ではなく、きちっと成果の差が反映できる仕組みに変えていかなければいけないと思っています。

 日本的な働き方の限界として、長時間労働・過労死・メンタルヘルスの問題が特徴的です。「個人が自立をしていない」「個人の役割・仕事の範囲が明確になっていない」「評価基準が明確になっていない」というなかで、「全人格を会社に尽くさないといけない」みたいなメンタリティーになっている部分が大きい。仕事を目に見える形にして、会社と個人がつながるようになればいいと思います。

政労使会議、思惑は三様 (2014/9/30)

 政府、労働者、経営者の代表が賃金や雇用のあり方を話し合う「政労使会議」が9カ月ぶりに再スタートした。今回は「賃上げ」や「年功序列賃金の見直し」が焦点になりそうだが、政労使三者の思惑はくい違っており、一致点を見いだせるかは微妙だ。……… [続きを読む]

 日本では、会社と個人がくっつくことで運命共同体だって思ってきた。会社に忠誠を尽くすことが、プラスに働いた時代があった。追い風の時代で、やることが明確で、とにかく効率よくやってしまえば勝てるっていう時代であれば、すごく機能した。いまはそうじゃない。新しい価値を生もうとか、イノベーション(革新)だとかっていうと、会社にべたってしていたのでは、会社のこれまでの動きを超えられないのですから、マイナスに働いてくる。

 小陳 最近は「女性の活躍」といったテーマがよく取り上げられますが、女性や外国人など多様なキャリアの方々が活躍できるようになるためにも、処遇の見直しが必要なんでしょうか。

 平岡 たとえば年功制賃金というのは、多くの場合は会社の中で能力が上がっていって、それに見合って賃金を払っていくのはある意味、合理的ではある。しかし、それが一律的になっているとか、能力を見極めるために長い時間を一緒に過ごさないとなかなか見えてこないようだと、外から来る方や、キャリアの中断のある方にとって不利な仕組みになりやすいということはあります。

ボスはイギリス、部下は山口県

 小陳 今回の改革のもう一つの大きな理由として、グローバル化があると聞いているのですが、そちらはどのような狙いなのですか。

写真日立グループ、海外売上高の比重が高まる

 平岡 いま日立グループですと、国内の人員が20万人弱、海外の人員が15万人程度になってきています。海外の売り上げや人員が増えてきています。日立のビジネスは単品の輸出だけでなく海外の現地でインフラを作り上げるビジネスをやろうとすると、現地の従業員と日本の従業員、あるいはその他の国の従業員といった人たちが一緒にチームを組んで働きます。

 先日、イギリスで高速鉄道を受注しました。私たちの交通ビジネスの本部はイギリスにあります。それと山口県下松市の笠戸事業所には、設計開発・製造部門がある。そういった組織が一体となって仕事をしていきます。そうすると、私の上司はイギリス人、私の部下は笠戸にいる日本人、そんな組織になります。そうなった人たちが一緒に働いていくためには、評価の仕方や仕事のやり方をグローバルに統一していく必要があります。

日立、英高速鉄道向け車両を初公開 日本より小さめ (2014/11/13)

 日立製作所は13日、英国の都市間を結ぶ高速鉄道向けの車両を、山口県下松市の笠戸事業所で初めて公開した。英国運輸省から受けた122編成のうち……… [続きを読む]

写真英国向けにつくった高速鉄道の車両=山口県下松市の日立製作所笠戸事業所

 小陳 海外で働いている人って、一般的に転勤とかあるんですか。

 平岡 あると思いますが、それは「あなたは、その仕事につくとより高い処遇になる」というキャリアを上がっていく感じです。

 小陳 基本的に、「ここの勤務地のこの職務」というのが基本的な契約で、会社の都合で一方的に変えることはないですよね。日本と海外では、企業と個人の関係がちょっと違いますよね。

 今回改革の対象になったのは管理職ですが、もっと若い20代〜30代の社員の賃金の決め方はこれまで通りなんでしょうか?

 平岡 そうです。従来通り当面継続する予定です。基本的な考え方として、若い人たちにも自分のキャリアをどうやってつくっていくのかを考えていくためには、仕事基準でやるというのも大切なのですが、一方で日本の場合、新卒採用というのが非常に大きな人材の供給源になっているので、そうやって採用した人たちについて育てていく。そのためには個人の能力に着目していろんな仕事をしてもらいながら育ってもらう必要があります。

「雇用の流動化」=「怖い」を変えるために

 小陳 賃金の決め方を変えるというのは、もちろん一人ひとりの社員にとってはすごく大きいことですが、単に賃金だけではなく、社員の働き方、また会社がどういう風に社員に仕事をさせるのか、そういった全体の見直しにつながっていくのでしょうか?

 平岡 大変いい指摘です。今回の管理職の処遇改定は、3年ぐらい続けてきた大きなプロジェクトの一環です。全体としては、グローバルに一緒に働ける仕組みを作ることです。

 グループの全体の従業員25万人のデータベースをつくることからはじまりました。事務職や研究職など25万人のうち、マネージャー相当以上は5万人くらい。国内は4万人くらいで、そのうち日立製作所内に1万1千人います。日立製作所3万2千人のうち1万1千人になります。

 これまで国内でも日立製作所とグループ会社は別の基準でした。当然海外は全く別のやり方をしていたのですが、どこにいても同じ評価基準で仕事の重さを計る、仕事のやり方も共通の物にしていく。それらを徐々に進めてきて、その基盤の上に処遇制度も変えられるのです。

 小陳 非正規の問題も含めて大きく変えないと本当の問題解決にならない。どの辺から手を付けていけば変わっていくのでしょうか。

 平岡 管理職だけでなく、女性の働きやすい職場というのは、当然男性も働きやすいし、長時間労働があれば女性だけでなく男性だって働きづらい。「女性の人に活躍してもらう」という切り口で働き方を変えていくってことでやっています。

 小陳 働く時間を短くするとか柔軟にするとかしないと無理だと思うんですが、官邸周辺からは「日本は人口が減って大変なんだから、とにかく男性が働いていたように女性も働くしか日本が生き残る道はないんだ」みたいなことを言う人もいます。

 平岡 そうじゃないと思うんです。労働生産性やGDPを上げていくでもいいんですが、労働力ってまだまだ増やす道はあると思うんです。よく言われるのは女性・高齢者。非正規やパートの方。そういった人たちがフルの勤務になれば、ずいぶん本来的な労働力は上がるはず。そういう人たちをどうやってフルに働いてもらうかってことが大きいですし、一人あたりの労働生産性ってどうやって上げていくかというと、ITの支援をするだとか、一人あたりのアウトプットを増やす、働き手を実質的に増やす、ってことをやると本当はもっと効く。従来型の働き方ですとそれはできない。

(脱・働きすぎ:3)短時間での成果に評価を 小室淑恵さん (2014/11/7)

 ――長時間労働はなぜなくならないのでしょう。
 「社員が短時間で成果を出しても、会社が評価する仕組みになっていないからです……… [続きを読む]

 本質的には、「失業無き労働移動を促進するんだ」とか「雇用の柔軟性を上げていくんだ」とか最後は必要になると思います。でも、それを待っていて変わるかというと変わらない。これまでの企業と個人のあり方だと、多くの人は「転職をする」だとか、「自分のキャリアを自分でつくろう」だとか考る機会があまりない。そこに「雇用の流動化ですよ」といっても「怖いね」っていう話にしかならない。まずは、そういうことを考えられる集団を作ることが、企業としてできることです。

 小陳 個々の企業がそういう問題意識をもって改革をして、それが大きなトレンドになったときに社会全体のマインドになる、ということですか。

 平岡 それがないと、なかなか現実がついていかない。

 小陳 処遇の仕方が社員にとっても会社にとっても透明になることで、一人ひとりの社員がやる気をもって仕事ができると企業の成長にもつながっていって、非常に明るい将来が開けてくるといいなと思います。

 今日はありがとうございました。

働かないオジサン

 「年功序列の賃金体系を見直して、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切である」

 政府と労働者と経営者の代表らが、賃金や雇用のあり方について話し合う政労使会議。9月末の会合の終了後に記者会見した甘利明経済再生相が、会議の中での安倍晋三首相の発言として紹介したのが、冒頭の言葉だ。

 年功賃金の見直し?

 頭の中に疑問符がいくつもわいてきた。

写真10月の政労使会議では、日立会長からの意見聞き取りもあった

 確かに日本企業では年齢が上がるに従って賃金も増える傾向にあり、若い社員はこき使われるわりに賃金が低く、中高年は仕事のわりに賃金が高いと言われる。賃金水準を仕事の内容や量と見合ったものにすれば、より高い賃金をもらおうとそれぞれの社員がよく働き、全体としての生産性も上がるのではないか。その問題意識そのものはわからないでもない。

 しかし、年功賃金はいろんな要素と結びついて日本型と言われる雇用の仕組みを形づくっている。年功賃金だけを切り離して大きく変えるのは難しい。そもそも賃金制度は各企業の労使で話し合って決めるもので、政府が口をはさむものでもないだろう。

 とはいえ、企業で女性の幹部への登用が進まないのも、正規・非正規の問題も、日本型の雇用の仕組みが大きくかかわっている。見直そうという機運が高まることは悪くない。

 そんなことを考えて、10月12日付の朝刊に「年功制見直し 雇用制度全体を視野に」という社説を書いた。

(社説)年功制見直し―雇用制度全体を視野に (2014/10/12)

 「年功序列の賃金体系を見直して、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切である」
 政府と経営者団体、労働団体の代表らからなる政労使会議で、安倍首相が問題提起した。……… [続きを読む]

 社説を書く際には、そのテーマを取り上げるべきか、取り上げるとしたらどんな角度から論じるべきかなど、論説委員室で議論する。その場で私が言ったのが「年功制の問題は、『働かないオジサン』をどうするかという問題でもあります」ということだった。

 「働かないオジサン」は残念ながら私の造語ではない。現役サラリーマンの楠木新さん(60)の著書『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか』からお借りしたものだ。楠木さんは著書で、「給料の高い働かないオジサン」を生み出す日本企業の雇用システム上の問題点を描いている。

 朝日新聞の論説委員もほとんどが40〜50代の「オジサン(オバサン)」世代。会議では「社内で自分たちはどう見られているだろうか」などと盛り上がった。

 社説では「働かないオジサン」という言葉を使わなかったが、せっかくだから読者にも知ってもらいたいと考え、10月21日付の社説余滴というコラムで「『働かないオジサン』考」を書いた。

(社説余滴)「働かないオジサン」考 (2014/10/21)

 「年功序列の賃金体系を見直して、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切である」
 政府と経営者団体、労働団体の代表らからなる政労使会議で、安倍首相が問題提起した。……… [続きを読む]

 タイトルが挑発的だったのか、社内外からいろんな反応をいただいた。

 「オレのことを書いたんだろう」とにらむ社内の先輩。社外の友人は「『世の働かないオジサン』を敵に回したな」とメールを送ってきた。「今は『働かないオジサン』が悠長に仕事をできるような時代ではない」という声もあった。

 一方で「確かに『働かないオジサン』は多い。だけど『働かないオジサン』世代は、ちょうど子どもが大学に入ったりして、一番カネが必要になる。このときに収入を見込めるから、安心して働くことにつながる」という意見もあった。

 私は「働かない中高年を切り捨てろ」と言いたかったわけではない。伝えたかったのは「知識や経験を生かせず、生き生きと仕事ができていない中高年が多いとすれば、それは会社にとっても本人にとっても損失だろう。その原因が年功制など日本型の雇用システムにあるのであれば、見直した方がいいのではないか」ということだ。

 どう見直すのがいいか、どこから手を付けるのが現実的か、いま考えている。また社説などで書きたい。

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