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ことば談話室

豚丼~「ぶた」か「とん」か、それが問題だ2

中原 光一

◇まずは北海道・十勝へ

 某牛丼チェーン店で女性が発したひと言で始まった「ぶたどん」と「とんどん」の覇権争い(?)。

 いろいろ考察してみたが、ここは実際「豚丼」を提供しているところに白黒つけてもらおう。

 そもそも「豚丼」的な料理が牛丼チェーン店で出るようになったのは、2003年末にBSE(牛海綿状脳症)問題で米国産牛肉の輸入が停止され、牛丼販売停止に伴う「代打」として登場してから。それまでは「豚丼」とは、北海道十勝地方のご当地メニューを指すのが普通だった。

 こちらは醤油ベースの甘辛い味付けで、牛丼チェーン店の「豚丼」とは全くの別ものである。

 というわけで、まずは“本家”の「北海道豚丼」を直撃。帯広観光コンベンション協会に聞いてみた。
 ・「ぶたどん」と読むのが普通です。
 ・「とんどん」とは読みませんね。
 ……自信が徐々に回復してきた。

 この勢いでチェーン店も取材。
 ちなみに現在でも販売を続けているのは吉野家と松屋。
 すき家となか卯はすでに終了している。

◇吉野家は「ぶた」派

 吉野家は「豚丼(ぶたどん)」。
 ・名前の議論はあったけど、特にこだわりがあったわけではないねぇ。
 ・読み方の響きが一番良かったからじゃないかな。
 ・あの時は(BSE問題で)急にメニューとして出すことになったから、ネーミングにこだわる余裕もなかったしなぁ。
 うーん。「ぶた」派には嬉しいが特に理由があったわけではないみたい。

◇松屋も

 松屋は「豚めし(ぶためし)」。
 ・うちは牛が「牛めし(ぎゅうめし)」。(“ぶた”でなく)“とん”めしにしちゃうと、(吉野家の)“~どん”を連想させるからかな。
 ・語呂も「ぶためし」の方が落ち着くし。
 ・何より「ぶた」の方が耳で聞いて分かりやすいでしょ。特に従業員同士がオーダーを通すときなんか。
 「耳で聞いて」と言うのはかなり説得力ある。やっぱ「ぶた」でしょ!

◇すき家は「とん」派

 すき家は「豚丼(とんどん)」だった。
 ・社内でも意見は分かれた。
 ・「新商品」というコンセプトがあったし、北海道のご当地メニューとは違う意味を込めたかったので。「ぶたどん」で連想されるものとは違うんだ、ということ。
 ・先行していた豚汁(とんじる)に合わせたのもあったのかな。
 ・「ぎゅうどん」「とんどん」って語呂もいいし。
 “本家”との区別か。それはそれで説得力あるなぁ……。実際「似て非なるもの」なんだし。
 しかし、「語呂(響き)が良い」って理由が吉野家と真逆だよ!!

◇うーん、分からん

 これではどっちが主流になるのかワケ分からん。

 結局、この料理がメニューとしてまだ新しいので、「豚汁」みたいに普及しないと、少なくとも拮抗するところまではいかないのだろうか。そうしても「ぎゅうどん」の類推で「とんどん」になるなり、「ぶたどんぶり」の略で「ぶたどん」になるか……。

 やっぱり答えは出ないままかも。

 とりあえず次に店に行ったとき、若い女子が「とんどん」って言っても、それにめげずに「ぶたどん」と言ってみようと思った。

(おわり)

(中原光一)