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ことば談話室

成人式って何歳?

市原 俊介

 1月10日は成人の日。今年も各地で成人式が行われました。総務省の人口推計によると、2011年1月1日現在で20歳の「新成人」は124万人。総人口に占める割合は0.97%で、1%を割ったのは同省が推計を始めた1968年以降初めてのことでした。

 今年は簡易投稿サイト・ツイッターで、#seijin、#seijinshikiなどのハッシュタグが設定され、成人式や新成人についてつぶやく人が多く見られました。各地で新成人が成人式の様子を実況中継したり、かつての新成人が今年の新成人への応援メッセージを送ったりするほか、テレビで成人式の映像を見て、自分の成人式を懐かしく思い出したという人もたくさんいたようです。

 さてこの「成人の日」に「成人式」、どういうきっかけで祝われるようになったのでしょうか。

■成人の日の「誕生」

振り袖の犬も登場した台東区の成人式拡大東京都台東区の成人式があった浅草公会堂前には、振り袖姿の犬も登場
 成人の日という祝日、実は戦後に誕生したものです。1948年に制定された「国民の祝日に関する法律」で、国民の祝日として定められました。ずっと1月15日でしたが、法律の改正で2000年からは1月の第2月曜日に変更されました。今でも成人の日といえば1月15日のような気がしてしまう筆者ですが、変更からもう10年以上経っていたのですね。

 祝日法では、成人の日を祝日にした目的にも触れられています。条文によると「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」ため。

 48年の法制定時には、この新しい祝日をめぐっていろいろな議論があったようです。国会の議事録などをみてみると、戦前の徴兵制度に代わって大人としての自覚を持つきっかけの一つに……などとする意見も。戦前の20歳といえば徴兵検査を受ける年齢でした。現在の目から見るとまさか、という感じですが、敗戦後間もなくでは、そういった感覚も根強く残っていたのでしょう。

 この成人の日が一般に定着するまでは時間がかかりました。法制定の翌年の49年1月15日、第1回の成人の日の東京の様子について、朝日新聞では1月16日付紙面で「初の『成人の日』割り切れぬ祝日気分」という見出しで以下のように触れています。

 「昭和の元服」 きのう十五日初めて迎えた「成人の日」の東京は折あしく雨ぐもり、「日の丸よ、自由にひるがえれ」といわれているのに、都電、バス、官公庁を除いて国旗を立てている家庭はほとんどない、盛り場の映画館には二日続きの休みに気をよくした当の「成人」「未成人」さては「老成人」諸君がトグロを巻き、消防出初式見物も相当混雑したが、国民祝日としての気分はどうもハッキリしない面持ち。(朝刊2面から=当時の新聞は全2ページでした)

 初めての成人の日をむかえ、どうしていいかわからず戸惑っている人々の様子が浮かんできます。確かにみずから生き抜こうとする青年を祝いはげますって、具体的に何をすればよいか難しいような……。

■式典の方が「年上」

 近年は新成人自身が実行委員会をつくり、中心となって成人式を行う例も増えてきましたが、一昔前までは各自治体が主導することが多かったようです。

 49年1月15日の朝日新聞の「成人の日を迎えて」と題した社説では、「今日でも一部の地方には青年団が主催して成年式を挙行し、体格検査を行って優秀者に知事の賞を与えたりするところがある」とあります。体の大きな新成人に知事が賞を与えるというのは、徴兵制を引きずっているのか食糧事情の悪さからなのか分かりませんが、これらの式典が後に一般化し、今日の成人式につながっていきます。しかし成人の日が制定される前から、成人になったことを祝う式典を行っている自治体があるとは意外でした。

 調べてみると、その代表的な例が埼玉県蕨町(現・蕨市)。

 蕨市によると、第1回の成人式にあたる式典は、青年祭というイベントの一環として46年11月に行われたもので、「成年式」という名称でした。

 蕨市生涯学習課の吉越三穂さんによると、この成年式は終戦後、海外から引き揚げてきた若者たちを元気づけようと、町と町青年団が主催したもの。この時の「新成人」の対象は1926年11月~27年11月生まれの人でした。

長崎市の成人式拡大新成人が市長らの激励を真剣な表情で聴く長崎市の成人式
 成年式は11月22日に行われたのですが、これは戦前の1930年に文部省がこの日を「青年記念日」と定め、全国の青年団に記念式典を開催するよう求めたことに由来するそうです。

 当時の記事によると、この青年記念日は「二十歳以上の青年の修養機関が不備であるから成人教育、補習教育の振興を計り成年以上の者の修養を完からしめる」ために定められたとのこと。現在の成人の日と比べると、成年教育に主眼が置かれていることがわかります。現在の生涯教育の先駆けともいえるかもしれません。

 蕨の第1回成年式では、町長の式辞や新成人代表の誓いの言葉などのイベントがあったようで、現在の成人式との共通点が多く感じられます。

 文部省は成人の日を社会に定着させるため、第1回成人の日の直前から、たびたびこの日が持つ意義を周知するための通達などを出しましたが、その時強調されていたのが成人の日にふさわしい行事の必要性。49年1月に出された通達では、「各地方で実施せられつつある『成年式』『成年祭』」を参考に、都道府県教委が市町村などと連携して成人の日を祝うにふさわしい行事をすることを求めています。これは蕨の事例などを参考にしたものなのでしょう。

 蕨市では現在も「成年式」として式典を催しているとのこと。日取りは成人の日にあわせているそうです。

■成人式=成人の日にあらず

 以上のように、成人の日と成人式はセットで一般化していったわけですが、最近はこれを分けて、成人の日以外に成人式を行うことが増えてきたようです。

 昔から多いのが、ふるさとを離れている新成人が参加しやすいよう、成人の日ではなく、夏休みにあたるお盆のころに成人式を行う自治体。たとえば秋田県では25市町村のうち、成人式を1月に行うのは4市だけで、残りの21市町村は昨年8月に行いました。ただ、この時期に成人式を行うと、多くの人が成人式を満19歳でむかえることになります。「新成人」は年度で区切るのが一般的ですので、1月開催でも早生まれの人はまだ19歳です。

 そこで、式の当日に参加者全員が20歳以上になっているように、日程を調整して行うところも出てきました。新潟県津南町では、2009年度の成人式を10年の5月に開きました。式典の2次会で全員がお酒を飲めるように、といった配慮もあるようです。

 一方で、お酒を飲んで暴れたり、来賓のあいさつの途中で新成人が騒いで中断したりと、最近の成人式にあまり良いイメージがない方も多いのではないでしょうか。また「成人式って必要なの?」と感じる人も多いようで、開催の意義については過去にもたびたび議論になってきました。

 そんな状況をふまえて、式の内容を見直し、成人式をより意味のあるものにしようとする試みもあります。

 新成人式研究会(東京都)は、成人式の調査研究を通じて青少年の健全な育成や地域社会の活性化をめざすため、2001年に学識経験者らが設立した団体。毎年、工夫のある企画をおこなった成人式を表彰する「成人式大賞」を選んでいます。2010年の成人式大賞には京都府亀岡市が選ばれました。「20歳を迎えた感慨と感謝」をキーワードに、新成人の自主的な取り組みと、市を挙げての取り組みの総合的なありかたが評価されての受賞でした。

 同会顧問の大谷昭治郎さんは、成人式について「お仕着せの式典では、新成人に大人としての自覚をもってもらうことは難しい。人生の節目を祝う重要なイベントなのだから、周囲の協力や、新成人自身の工夫が必要です」といいます。

 大谷さんが特に印象に残っているのが、成人式の受付を小学生に担当してもらう、という取り組み。「自分たちよりも小さな子どもたちの視線を意識することで、自分たちも大人になったのだという自覚と、おかしなことはできないという責任感が自然と生まれるようです」

 成人の日には各地で2011年一番の冷え込みが記録され、北風吹きつけるなかでの晴れの日となってしまいましたが、せめて新成人をむかえる我々大人の側は、あたたかい目で見守りたいものです。

(市原俊介)