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ことば談話室

こんなに色々、短縮語「コン」

 寒さもピーク。エアコンのリモコンに手が伸びることが多くなりました。

 …上の「エアコン」と「リモコン」の「コン」は、同じ言葉でしょうか?

 身近な電気の機械で、どちらも自分の快適さのために操作するものですが、前者は私に働きかけてくれるもの、後者は私が操作するもの、と、けっこう違います。

 というわけで、①エアコンはair conditioner(エア・コンディショナー)=空気[調節装置]、②リモコンはremotecontroller(リモート・コントローラー)=遠隔[操作機]、別のものなのでした。

 考えてみると日本語化している「コン」はとてもたくさんあります。どれくらい思い出せますか?

 次の14の「コン」の付く言葉。13までは別々の語が省略された形ですが、1語だけはそうではなくて一つの言葉です。それがどれか、お分かりになるでしょうか。

 ③ゼネコン  ⑩ベルコン

 ④ツアコン  ⑪ボディコン

 ⑤ネオコン  ⑫マザコン

 ⑥パソコン  ⑬ルビコン

 ⑦バリコン  ⑭ロボコン

 ⑧ビルコン  ⑮合コン

 ⑨ベトコン  ⑯合唱コン

 答えは…

   (以下、上と同様に、原語(カタカナ)=日本語 の形で記し、日本語の方で「コン」の意味の部分を[ ]の中に入れます)

ゼネコン general contractor(ゼネラル・コントラクター)=総合[工事業者]

  建築や土木の工事を一括して請け負う業者を言います。建設界の大手ですね。

  筆者は今まで「construct(コンストラクト)=建設する」の行為者形だと思い込んでいました。

  そうでなくて「contract (コントラクト)=契約する」なのですね。今回調べた中で最大の「へぇ」でした。

ツアコン tour conductor(ツアー・コンダクター)=[添乗員]

  旅行(tour)の指揮者(conductor)です。分かりやすいですね。

ネオコン neo conservative(ネオ・コンサバティブ)=新[保守主義]

  米国の前政権、息子ブッシュの周辺の人たちを指して広く知られるようになりました。

  neo が「新しい」の意味であることはどなたもご存じですね。ギリシャ語で「新しい」の意味の「neos」から来ているそうです。「コンサバティブ=保守的」も広く知られていると思います。

パソコン personal computer(パーソナル・コンピューター)=個人用の[電子計算機]

  「電子計算機」とは今時ほとんど聞く機会がありませんが、略称の「電算機」と共に昔は一般的でした。会社などで「電算課」などは最近まで残っていたのではないでしょうか。

  「コンピューター」を「コン」と略す例では「マイコン(microcomputer)」が20年ちょっと前には広く使われました。入っていることが珍しかった時代ならではのことでした。

  今では、携帯電話やiPodはそれ自体がコンピューターですし、自動車やエアコン、洗濯機や電子レンジなどの大型のものは言うに及ばず、テレビや湯沸かしポット、トースター、体温計など、マイコンが入っていない電気機器を探すのが難しいくらいになったので、今さら言及されることもなくなってしまっています。

バリコン variable condenser(バリアブル・コンデンサー)=可変[蓄電器]

  無理に日本語にしてみましたが、電気部品の condenser は普通そのまま片仮名で使われます。現代英語では capacitor が普通だそうです。

  コンデンサーは2枚の電極で絶縁体を挟んだもので、電気を短時間蓄える働きをします。向かい合う電極の面積や絶縁体の材質によって蓄えられる電気の量(静電容量)が決まります。

バリコン拡大バリコン
  バリコンは、絶縁体を挟んで重なる電極の面積を変えることなどで静電容量を変えられるようにしたもので、ラジオを聞きたい周波数に合わせる同調回路などに使われました。昔はラジオのケースを開けてみれば見える目立った存在でしたが、今では電子的な同調回路が普通なので、見る機会はとても少なくなっています。

  左の写真は、三十数年前のチューナーのバリコン。絶縁体は空気です。つまり、たくさんの電極板がわずかの隙間を空けて隣り合っていることでコンデンサーになっています。マッチ棒との比較でそれなりの大きさがあることが見て取れると思いますが、これでもその10年ほど前の物と比べると、随分小さくなっています。

  コンデンサーの仲間には、「ケミコン(電解コンデンサー)」があります。100ボルト電線が直接つながっている電器製品の中を見れば、たいてい入っています。多くは灰色の樹脂にくるまれた、金属の円筒形で2本足の部品です。

ビルコン bill counter(ビル・カウンター)=紙幣[計数機]・票数[計数機]

ビルコン拡大票数計数機=2004年撮影
  billは、「紙幣」「書き付け」などで、それらを[数えるもの]です。お札も選挙の票も大事なものですから、精密な機械なのでしょう。右の写真は票数計算機です。

  なお、「ビルコン」は、これらの機械を作る会社の社名としてもあるようです。

ベトコン Viet Cong(ベト・コン)=ベトナム[共産] (異説あり)

  1975年に終わったベトナム戦争中、南ベトナムの武装共産ゲリラに対して米国側が使った蔑称です。

  「Cong」はベトナムでの「共産」の発音から、との説明に説得力を感じました。ベトナムは漢字文化圏内なので、漢字のベトナム語読みがあるのですね。

  一方、英語の communist(コミュニスト)=共産主義者 から、という説もあります。

ベルコン belt conveyor(ベルト・コンベヤー)=帯[運搬装置]

  昔は工場のオートメーションの代表的なものでした。

  今では「個々に検討をすることのない自動的対応」という意味で使われる「ベルトコンベヤー式」といったところに生きているでしょうか。

ボディコン body conscious(ボディー・コンシャス)=体の線を[意識した]

  バブルの頃に若い女性に流行した、あれです。

  てっきり和製英語だと思っていましたが、英語でも使われているようです。

マザコン mother complex(マザー・コンプレックス)

  世間で使われる意味は今さら説明することもないと思いますが、ウェブ上には「正確な心理学用語ではない」「和製英語の俗語」との説明が見られます。

  「complex」は普通は「複合/複合体」ですが、ここでは精神分析の専門用語からのもので、「感情複合」との難しい訳があります。「心のしこり」という分かりやすい説明をしている辞書もあります(大辞林)。

  このコンではほかに、「エディプス・コンプレックス」といった、それなりに知られている言葉もあります。

  でも「コンプレックス」と言ったら「劣等感」でしょ? というのも、もっともですね。これは inferiority complex=劣等感 がそのまま一般化したものです。

  それから「シネコン」も、これです。映画館の「複合体」。元々の意味ですね。

ルビコン Rubicon(ルビコン)〈これは1語〉

  イタリアの川の名前です。いまの名前はルビコーネ川。古代ローマのユリウス・カエサル(英語読みだと「ジュリアス・シーザー」)が紀元前49年、内戦に突入する際に「賽(さい)は投げられた」と言って渡り、ローマに向け進軍したとされます。

  というわけで、仲間はずれは、この「ルビコン」でした。

ロボコン robot contest(ロボット・コンテスト)=自動装置[競技会]

  これを目指すために高専(工業高等専門学校)に入学する若い人も少なくありません。NHKテレビの冬の風物詩。深夜枠で地方の予選を見るのも楽しみです。

合コン ~kompanie (コンパ)=飲み会

  古い学生言葉です。ドイツ語で「会社」「小隊」などの意味から来ています。

  昔の学生言葉にはドイツ語由来のものが多いですね。「メッチェン」「シャン」「ドッペる」……いずれも死語です。どれ程の方がお分かりになることやら…

合唱コン ~concours(コンクール)=競演会

  フランス語なのでした。

◇コンコンコン、まだあります

 上の例は、辞書に載っているか、それなりに広く使われている言葉でした。まあ一般的だと言えるでしょう。

 さらに、まだまだありました。使われているのは狭い世界ですが…

メンコン

  クラシック音楽が好きな人の間での俗称で、「メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲ホ短調」です。「協奏曲」と訳されるイタリア語「concerto(コンチェルト)」を略しています。

  同様のものに「チャイコン」があります。チャイコフスキーの[ピアノ協奏曲第1番]または[バイオリン協奏曲]で、ピアノかバイオリンかは随分違いますが、どちらを意味しているかは文脈で判断されるようです。

  さらに「チャイコン」は[チャイコフスキー・ピアノ・コンクール]を指すこともあって、これまた文脈で判断されるとのこと。ややこしさに輪が掛かってしまっています。

ブラコン

  ポピュラー音楽で、black contemporary(ブラック・コンテンポラリー)、ソウルの一種です。

  あえて訳せば「[今風の]黒人音楽」。1970年代後半~80年代の、商業的成功を強く意識したもの、といったところでしょうか。

インコン

  固有名詞です。ホテルチェーンInter Continental(インター・コンチネンタル)。「大陸をまたいで(どこでも)」という含意でしょうか。

  物騒なものですが、代表的な核ミサイルに「ICBM」があります。「intercontinental ballistic missile」の略で、「大陸間弾道弾」が定訳です。

 というわけで、省略前の形が18語見つかりました。さらにお気づきの方、いらっしゃいますか?

 おっと、夜更かししているうちにちょっと冷えてきました。コンコン。ごきげんよう。

(坂井則之)