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ことば談話室

「二の次」って2番目? 3番目?

 先日、友人数人と飲んでいた。みんなでワイワイガヤガヤ。久しぶりに羽目を外し、深酒をした。そんな時のことだった。「やっぱり一番は酒やな。仕事は二の次」。「そうや、そうや」と皆で盛り上がっていると、横から「『二』の次、ということは3番目やな。で2番目は何なん?」と冗談交じりにつっこみが入った。確か「2番目じゃなかったっけ」と思いながらも、その時は思考能力が低下していたので細かなことは考えず、楽しく一晩を過ごした。

◇辞書をあれこれ

 翌日、酔いが覚め前夜の「二の次」問題が頭に浮かんだ。今までは文脈から何の違和感もなく2番目と思っていたが、単語一つだけで出てくると確かに疑問。理屈付けができない。「2」の次、ということでひょっとしたら3番目なのか? それともやっぱり2番目でよいのか? 不安に駆られながら数冊の辞書をあちこちめくってみた。

 「二の次」について、どの辞書も「2番目」「あとまわし」などとしていて「3番目」としている辞書は一つもない。語源はわからないが、江戸時代中ごろには使われていたようだ。でも、どうして2番目なのか理由が書かれていない。理屈を超えた、単なる言葉のアヤで済ませてよいものなのか、それとも整然と説明できるものなのか、相変わらず疑問が残る。

 そこで「次(つぎ)」の項目を調べてみることに。

 おおかたの辞書は第1の意味として「後にすぐ続くこと」「順序がすぐ後のもの」などとある。これに当てはめると「2の後にすぐ続くこと」=3となる。やっぱり言葉のアヤ?

 そんなことを思いながら、第2項以下に書かれている意味もみてみる。

 「あるものより一段低い地位。すぐその下。劣ること」……やはり、「二」のすぐその下(次)なら、「二の次」は3番目? なんだかどうどう巡りになってきた。

 何かヒントになることが書かれていないかひたすら辞書を引いてみると、ちょっと他にはない説明をしてくれる「新明解国語辞典」にはこんな「答え」が見つかった。

  二の次…〔この場合の「の」は同格を示す〕二番目。……

 同格の「の」? 「長男の太郎くん」「社長の佐藤さん」というような時の「イコール」を表す「の」? つまり「二の次」は「二である次のもの」「二すなわち次」……要するに「仕事は二の次」は「仕事は次」「仕事は(二番目)」と言っているのと同じということ? 新明解の「の」の意味をみると、ご丁寧に、同格を表す意味の例文としても「友達の田中君」などと並んで「二の次」を挙げている。

 ふーん。そうなのかぁ、そうなのかなあ。同格の「の」ととらえるのかぁ。なんかすっきりしないなあ……。

 そこで、以前お世話になったことのある、小学館・日本国語大辞典の元編集長・佐藤宏さんに聞いてみた。

 ………二の次の「二の」は、「二の足、二の句、二の舞……」のように、古くから「2番目の」「次の」という意味で定型句のように使われていた経緯があります。いっぽうで「次」は、「後に続くこと・もの」というのが原義で「二の次」に当てはめると「2番目に続くこと」、「次に続くもの」という意味になると考えるのが基本です。
 また、主要なものの次という意味を強調しているというふうに考えられないこともないですね。実際、「の」を同格の「の」と見て、「の」を「であるところの」で置き換えられる用法ととらえ、「二番目であるところの次」と解釈することもできます。ですから、さらに強調して「二の次三の次」ということもありますよね………

 なるほど。「2の後に続くこと」ではなく、「2番目に続くこと」と理解すべきだったのか。「強調」ととらえると、同格の「の」もストンと理解できる。やっと自分のもやもやが解決した。

◇二の次にして、いいもの、わるいもの

 あれこれ「二の次」について考えたせいで、仕事をしていても、「二の次」が目に付くようになった。

拡大二の次にされるものも、いろいろ

 わが社の過去記事をデータベースで調べてみると、特に政治面、社会面などでは「経費削減優先、安全二の次」「理念・中身は二の次、初めに導入ありき」……などと「優先して大事にすべきものなのに、後回しにしてけしからん」というようなトーンで、多く使われていた。

 最近スポーツ面を担当することが多いのだが、特にスポーツ関係の記事では少し状況が違うようだ。

 「自分の成績は二の次、チームの勝利」「勝敗は二の次、友好育む」などと、「優先しがちなことを後回しにして、違う価値観を見いだして好感がもてる」といった使い方が、最近増えているようだ。

 思えば酒の席で、友人のざれ言から始まった今回のテーマ、「仕事は二の次、楽しくお酒」は後者……ではなくて、「優先すべきことを、後回しにしちゃって、ちょっと後ろめたいけど、でも本音」というところかな。

 (秋山博幸)