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ことば談話室

「スイーツマラソン」酸いか甘いか 走って食べてみた

プーさん拡大スイーツマラソンに参加した「プーさん」。コースで次々配られるお菓子、何から食べるのかな
 ある晩のこと。夕食の片付けをする私の耳に、子どもたちの話し声が聞こえてきた。

 次女(年長)「ねーねー、ハハ(筆者)のおなかから、もう一人生まれてくると思う?」
 長女(小3)「ちがうよー、あれはねー……(以下略)」
 ええ、ええ、そうですとも。これは「ジバラ」でございます。それが何か?と開き直りたいところだが、もう冗談ではすまされないレベルになってきた。このままではヤバイ、何か運動を……。
 そんなときふと目にしたのが「スイーツマラソン」という耳慣れないことば。「走った人に、ご褒美を」とある。走りながらスイーツ食べ放題? しかもグループでのリレー形式? やせるのか太るのかよくわからないけど、これならもしかしたら走れちゃうかも?
 そんなきっかけで、その大会に参加してみたのだけれど……。

 ◇意外に新しい「スイーツ」

 昔から甘いものに目がなかった私。学生時代からしょっちゅうケーキバイキングに行っていた。でも、このころは「スイーツ」なんて呼ばれてなかったぞ。
 スイーツとはもちろんケーキやお菓子など甘い食べ物のことで、語源は英語のsweet。イギリス圏での使い方で、米国圏ではデザート(dessert)を用いることが多いらしい。日本で使われるようになったのは、カフェブームの始まりと言われる2000年前後。カフェ・スイーツ・パンの専門誌「cafe sweets」(柴田書店)が01年に創刊されたのをはじめ、女性誌などでもスイーツが頻繁に取り上げられ、急速に浸透していく。広辞苑では第6版(08年1月11日第1刷)で初めて「甘いもの。ケーキ・菓子など」として掲載された。つまりスイーツはここ十数年で急速に広まった言葉なのだ。

メンバー拡大今回の参加メンバー。みんな同じマンションに住んでいます
 さて話を戻そう。スイーツマラソンは、10年に大阪で始まった。昨年までに全国9都道府県・10都市で計13回開催されている。10㌔の個人種目のほかリレーもあり、累計参加者は4万人弱。女性が過半数を占めることと、マラソン初体験者が4割を占めるのが大きな特徴だという。
 私がエントリーしたのは11月17日の千葉大会リレー部門(会場:千葉市美浜区の稲毛海浜公園)。1周2㌔のコースを2~10人でリレーし、計42.195㌔を走る。途中1カ所に給水所ならぬ給スイーツ所があり、一口大のスイーツが食べ放題だ。うふふ。小学1年生から参加できるというので、長女とお友達、そのパパ・ママたちを半ば強引に引きずりこみ、大人5人、子ども5人のチームを瞬く間に結成した。飲み会のまとまりは早いが、スポーツ、特にただ走るというだけなら、即座にOKしてくれたか怪しいメンバーだ。スイーツの偉大さを実感する。
 大会まで2カ月弱。1人あたり4㌔程度でいいとはいえ、全く練習しないのもいかがなものか。というわけで過酷な(?)練習が始まった。シューズを買い、ウエアを買い……と、お財布をひととおり痛めたあとで、ようやく体をいじめる。朝4時半集合で週2回、ママ友と近くの土手をジョギング。きらめく星を見ながら走り、夜明けのタイミングでトレーニング終了。なんかスポ魂風でステキ! 実際はおしゃべりに忙しくて、ウオーキングのおじさんに抜かれるほどのスピードだったのだが……。

 ◇23万口のパラダイス

 一抹の不安と、スイーツへの多大なる期待で迎えた大会当日。空は晴れ渡り、暖かく、絶好のマラソン日和だ。今大会の参加者は5276人。スタート地点のすぐ横は芝生広場で、みんなレジャーシートや簡易テントを広げており、なんとものどかだ。周りにスイーツの物産展があり、わくわくしてくる。

次女拡大次女が伴走してくれた2周目。思えば出場のきっかけを与えてくれたわけです
 いよいよスタート。我がチームの第1走者は元陸上部ママだ。「ゆっくり走ろうねー」と言っていたのだが、いざレースとなるとアスリートの血が騒ぐのか、ほとんどスイーツを食べずに戻ってきた。1周+195㍍で10分台。はやっ。ちなみにリレーには4時間半の制限時間がある。1周2㌔を13分以内で走らなければ達成できない計算だ。「子どもが半分もいるし~」と、ハナから完走はあきらめていた。
 続いて子どもたち5人が走った。戻ってくると、「何食べたの?」「えー、そんなのあったんだ」「次はそれ食べたい!」。スイーツ談議に花が咲く。
 いよいよ私の番。ヘロヘロ気味の長女からたすきを受け取った。さあ、スイーツに向かってGO!  朝のジョギングよりはかなりハイペースで走っているのだが、周りが思いのほか速いので、どんどん抜かされる。情けない。
 1㌔の表示を過ぎ、くたびれてきたころ、ようやくテントが見えてきた。「がんばれー」「どうぞー」。うれしい声援と共に、お姉さんたちがスイーツをどんどん差し出してくれる。

マジ走り拡大スイーツを楽しむ人(左)とマジ走りの人(右)が混在。優勝チームは2時間22分20秒でした。ちなみに中央は長女。何か口に入れて走ってます
 その数200種超計23万口。いちごラスク、フィナンシェ、バウムクーヘン、ドライフルーツ、チョコ、かりんとう、クッキー、甘栗、マドレーヌ、ワッフル、キャラメル、サブレ、シュークリーム、ドーナツ……。まばゆいばかりだ。

 迷った末、チョコと甘栗を口に放り込み、サブレとシュークリームを両の手に持ったまま、再び走り始めた。残り約600㍍を全力で走り、次のママにたすきを渡す。12分30秒。やれやれ。

 ◇仮装ランナーにも癒やされて

ショッカー拡大何度も見かけたショッカー。声援を受けると「イーッ!」と返してくれます
 1周走ると気が楽になり、ゆっくり応援する心のゆとりがでてきた。改めて見ると、楽しい仮装がいっぱい。あっ、プーさんだ。ちゃんとはちみつも持ってる! ショッカーにドラえもん&ドラミちゃん、カップラーメンにサンタさん、くまモン、ひよこちゃん、おにぎりさん……。周回コースだから、何度も声援を送るチャンスがあってうれしい。
 2巡目に入ろうかというころ。がんばれば制限時間内にゴールできるかも、ということが判明。子どもたちが結構速かったうえ、チーム唯一参加のパパさんが9分台のがんばりをみせていた。チームの雰囲気が一変する。私も足を引っ張らないようにと、2周目も懸命に走った。でもフィナンシェ、マドレーヌ、ドライフルーツ、甘栗はちゃっかりゲット。
 ラスト4周。最後は子どもたちが一緒に走ってゴールしたいと言い出した。何とか間に合わせてあげたい……ということで、パパさんと元陸上部ママがマジ走り。残り12分というところで、たすきが子どもたちに渡った。

パパ拡大パパから子どもたちに最後のたすきが。このあとパパは芝生でしばらく大の字になってました
 祈るような気持ちで戻ってくるのを待つ。視界の隅に、よれよれになって走ってくる姿をとらえたとき、不覚にも涙が出そうになった。最後はみんなでゴールイン。結果は4時間32分27秒で503チーム中485位。制限時間は超えたけど、「完走証」もいただけた。
 スイーツマラソン、本当に楽しかった。チームのみんなとも、より強い連帯感で結ばれた気がする。次回大会は、おそろいのTシャツを作ろうか、はたまた仮装か……との声も。
 それもこれも、デザートではなくスイーツということばの響きの魔力がなせる業かも。食事のあとにいただく時も、さらに一品という感じのデザートよりも、一口だけという感じのスイーツの方が、罪悪感が少し弱まる気がする。甘い魅力でおなかも心もいっぱいに満たしてくれたすてきな一日だった。
海拡大すぐ向こうは海。ヨットとプリン……いい眺めです
 スイーツマラソンは、千葉大会のあと、愛知、大阪へと続き、来年は東京・お台場潮風公園(1月19日)と福岡・海の中道海浜公園(3月9日)でも開催予定。1~4人でエントリーし、当日主催者側がランダムに男女混合チームを作るシャッフルマラソンもある。お友達と、家族と、またはラン友を求めて、ぜひ参加してみては?

(国沢利栄)