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人権・校閲

こちら人権情報局

大震災と災害弱者

〈特に注記のない場合、新聞記事の日付などは東京本社最終版です〉
〈asahi.com内の記事へのリンクについて=日付の古いものは表示されないことがあります〉

■大震災と災害弱者

 3月11日に日本を襲った大震災。次々と被災地の状況が報じられるなかで、気になっていたのは「災害弱者」と呼ばれる人たちのことです。1995年の阪神大震災のときとも比べながら、朝日新聞の記事を調べてみました。

宮城・南三陸 介助を受ける視覚障害者/支援通信/東日本大震災拡大避難先で介助を受けながら食卓に向かう目の不自由な男性=3月20日午後、宮城県南三陸町歌津
 震災直後の紙面では、人工呼吸器や人工透析を利用しているなど直ちに命にかかわる人たちのことは触れられていますが、特別に災害弱者を取り上げた記事は見あたりません。被災者全員が何らかの困難を抱えており、取材する記者たちも、当初は全体の状況に目が奪われていたのだろうと思います。その後、移動や情報の入手にとりわけハンディがある障害者や高齢者にも徐々に目が向けられていきます。

 東日本大震災の報道で、高齢者支援について取り上げたのは6日後(3月17日)の「お年寄りを守れ」、障害者についての記事は、10日後(3月21日)の「障害者 忘れないで」でした。これらは、避難所でどのような配慮が必要かといったことについて書いた実用的なものですが、支援するNPO事務局長の「障害者はすべての被災者のカナリア的な存在。彼らが過ごしやすい環境はほかの被災者も過ごしやすいはずだ。周りの人々が想像力を働かせ、助け合ってほしい」という言葉が印象に残りました。21日の山形版にも「災害弱者どう守る」が出ています。

 続いて、22日の「自閉症の子、わかって 周囲に遠慮、車中泊1週間」で、当事者と家族の様子や思いを取り上げています。普段と違う場所や騒音に弱い自閉症の人は、パニックを起こす場合もあり、家族が避難所に入るのをためらうといった事情を説明し、理解を求める記事でした。

 東京新聞も「ピアノの調べ被災者癒やす 自閉症の中2が毎朝演奏」(3月26日)、「自閉症の子抱え孤立」(3月27日)という記事を載せていました。女川の避難所でピアノを弾く橋本雅生君の姿は、NHKのニュース番組でも取り上げられました。

 16年前の阪神大震災では、被災地の自閉症の子について書かれた記事は、朝日新聞には見あたりませんでした。阪神大震災前の1年間、震災後の1年間を朝日新聞の記事データベースで検索すると、自閉症について触れた記事はおおよそ60~70件でした。これに対し、昨年3月からの1年間では、190件と3倍近くに。自閉症に対する社会や記者の関心が高まっていると言ってもよいのではないでしょうか。

 朝日新聞以外では、岩手県宮古市の知的障害者施設を取り上げた「障害者にストレス 宮古の施設」(毎日新聞3月18日夕刊)が、比較的早かったのではないかと思います。その後は、「孤立する特養」(東京新聞3月20日)、「長期停電で呼吸器ダウン 仙台のALS患者土屋さん一家」(毎日新聞23日夕刊)、「全盲男性『ヘルパーを』 東松島の避難所」(毎日新聞3月28日)、「災害弱者を守って 福島の介護施設、千葉で丸ごと受け入れ」(日経新聞3月28日夕刊)などが目につきました。

 阪神大震災のとき、朝日新聞は、発生から2日後の1995年1月19日に、被災した特別養護老人ホームのルポを載せました。1月21日夕刊には「避難所へも行けず 情報得られない視覚障害者」。被災者を記者が訪ね、「物の位置を体で覚えているため、避難所に行くよりも安全」と壊れた自宅に残ったものの、援助物資が届かず困っているという話を伝えました。

 また、95年2月13日から4回の連載「ルポ・避難所の老人たち」は、若い人たちが新しい生活を求めて歩き始めるなか、すべてを失って立ちすくむお年寄りの姿を描き出しています。

 今回の大震災と阪神大震災のときの朝日新聞の報道を比べると、災害弱者の声を直接伝えるという点では、阪神のときの方が出足が早かったように思えます。都市部を中心とする直下型の震災であった「阪神」と、広範囲にわたって津波に襲われた「東日本」との違いでしょうか。 

 4月に入ると、3日の朝日新聞では、福島県南相馬市の養護老人ホームのお年寄りが避難先を転々としている様子が報告されました(「お年寄り、県外を転々 長引く避難、入院も」)。他紙でも、「介護の手 足りない 避難者あふれる施設」(毎日新聞4月2日夕刊)、「被災地の盲導犬 実態知って」(読売新聞4月2日夕刊)、「障害者支え合い 仙台市の団体、介護用品など配達」(日経新聞4月2日夕刊)、「認知症 届かぬケア ある女性の死 長引く避難、町を転々 」(毎日新聞4月5日)、「長旅の危険冒して避難 苦難の被災障害者」(東京新聞4月5日)、「漂流避難 福島遠く離れ凍死した認知症の母」(毎日新聞4月7日)などが掲載されています。さらに災害弱者に焦点を当てたルポや検証記事が出てくることが期待されます。

■阪神大震災後の主な記事(いずれも1995年)

・「天声人語・視覚障害被災者への支援」(1/29)

・「耳の不自由な被災者救援へ緊急集会開催 北九州」(1/29西部本社版)

・「手届かぬところ埋める」(1/31)=視覚障害者のボランティアが不足

・「障害者ら 車いす・トイレなく不自由続く」(2/3大阪版)

・「手話通訳者を派遣 県が3人」(2/3山梨版)

・「届きにくい震災情報 視覚・聴覚障害者」(2/4)

・「被災障害者の長期支援へ募金 県手話通訳問題研究会」(2/7広島版)

・「NHK、手話ニュース外す 阪神大震災直後4日間」(2/9夕刊)

・「大阪・京都市に届かず 兵庫県の手話ボランティア要請」(2/10夕刊大阪本社版)

■東日本大震災の主な記事

【山形】災害弱者どう守る(3/21)
 避難所生活はいつまで続くのか。乳幼児や障害者、高齢者といった「災害弱者」へのケアの動きが目立ってきた。

【新潟】妊婦や要介護者ら優先避難(3/22)
 長岡市は、妊娠中の女性や介護が必要なお年寄り、人工透析患者らに優先的に入ってもらう臨時福祉避難所2カ所を開設した。

「上山市働く婦人の家」に避難してきた福島・南相馬の26人 福島第一原発事故拡大差し入れの玉こんにゃくなどを食べる避難者ら。冗談も飛び出すが、「早く帰りたいな」と一人がいうと、みな言葉少なになった=上山市元城内の上山市働く婦人の家
【山形】車6台上山に「やっと着いた」 福島・南相馬の障害者施設入所者ら26人(3/23)
 上山市元城内の「上山市働く婦人の家」に、福島県南相馬市のNPO法人が運営する精神障害者と知的障害者の就労支援施設やグループホームの入所者ら26人が避難している。震災後、不安からよく眠れなかった入所者たちはひと安心しつつも、今後の生活には不安を抱えている。

【北海道】高齢者 心に深い傷 介護救護班が活動報告(3/27)
 東日本大震災で被災した仙台市に派遣されていた介護救援班15人が札幌市に戻り、25日夜、被災地の活動を報告した。高齢者23人の介護にあたった隊長の新田太一さん(36)は、「被災地では物資も食料も不足している。避難所には専門的な介護を必要としている人がまだまだたくさんいる」と、「災害弱者」とされる高齢者の状況を語った。

【群馬】重度障害者笑って、避難先スタッフ奮闘(3/27)
 東日本大震災で被災した福島県の重度心身障害者7人が、県内の施設に身を寄せている。受け入れ側も計画停電や物資の不足に頭を痛めるなか、家族と離れた障害者たちが笑顔で暮らせるようケアに励んでいる。

【高知】震災弱者どう助ける(3/27)
 大地震や津波が起こった時、避難情報を得たり避難所へ行ったりするのが難しい障害者や高齢者がいる。障害者からは「南海地震が起きたら不安。きっちりと情報が伝わる仕組みづくりを」と声が上がる。自治体は地域の自主防災組織に情報伝達などの役割を期待するが、組織率など課題も多い。

【東京】一人暮らしの高齢者に非常用照明貸し出し(3/31)
 計画停電が実施されている荒川区は、対象区域内の一人暮らしの高齢者に非常用照明(携帯用ランタン)の貸し出しを始めた。

知的障害の子ら200人、避難先転々 職員「もう限界」(3/29)
 福島第一原発の事故に伴い、原発から5キロの所にある施設から逃れた重度の知的障害のある子どもや大人200人余りが、避難先を転々としている。いま3カ所目。付き添う職員やボランティア約50人とともに、小さな建物で限界の生活を続けている。

■本

「あの人の声が聞こえる 阪神大震災と障害者」(全障研出版部)=版元では絶版。古書店で。
 全障研兵庫「阪神淡路大震災障害者実態調査」委員会編。障害児教育の研究者らによる全国障害者問題研究会が、震災による死亡例の聞き取り調査や被災者のアンケートを実施、本にまとめた。
 実態調査委員会(委員長・藤本文朗滋賀大教授)が調べた死亡例は視覚障害者を中心に20例。染色体異常による障害を負った10歳の子どもは、点々と避難場所を変えるうちに肺炎になり、震災から約2週間後に死亡した。「障害児が安心して避難できる場所があったなら」と、母親は振り返る。
 視覚障害者の死亡例のうち、障害が直接の原因となって死亡した例はなかったが、ほとんどの家屋が木造で築15~50年だった。調査した藤本さんは「はり・きゅうなどの仕事をしている視覚障害者の中には、地代の高い繁華街に治療院を構えるので、古い木造住居に住まざるを得なかった人もいる。間接的には障害が原因だったと言えるのではないか」という。
 アンケートでは、子ども(回答者は親)62人、大人53人から回答を得た。子どもたちの場合、震災後に避難したのは77%だった。避難先(複数回答)は親類(68%)がもっとも多く、次いで避難所(35%)となっており、一般の世帯よりも親類を頼った割合が高かった。
 「一般の避難所ではトイレにも困る。自閉症の子どもにとっては、ふだんと環境が変わるのは耐えられない。避難所で盲導犬を断られた例もある。気がねがあって、避難所には行けなかったのではないか」と藤本さんはみる。
 調査を通して藤本さんは「昔と比べれば障害者にとって暮らしやすい社会になってきたが、災害時にはまだ不十分であることが露呈したように思います」と話している。(1996年2月1日朝日新聞大阪本社版、2月8日朝日新聞東京本社版から)

■アラカルト

【北海道】エイズドキュメンタリー映画 札幌で上映会(3/29)
 カンボジアのエイズ患者のドキュメンタリー映画の上映会が27日夜、札幌市北区であった。上映会は先月の東京・渋谷を皮切りに全国31カ所で予定していたが、東日本大震災の影響で、仙台市など11カ所で上映ができなかった。4月から研修医として働く監督の葉田甲太さん(26)=日本医科大学医学部6年=は、今年中には被災地でも上映したいと考え、被災地への募金も呼びかけた。

【茨城】障害者 いきいき働く農場(3/6)
 つくば市のNPO法人「つくばアグリチャレンジ」が、障害者の働く場として整備した農場「ごきげんファーム」が4日、開所した。開所式には、つくば、土浦、石岡市などの障害者10人が出席。19~62歳で自閉症や知的障害などがあるという。

【三重】手話の指文字、軍手で作製 伊勢の児童が寄贈(4/5)
 伊勢市立厚生小学校の旧4年3組の23人が、市福祉健康センターに、軍手でつくった手話の指文字パネルを贈った。児童らは、総合学習の時間に聴覚障害者から手話を習い、言葉を伝える難しさや伝えることの大切さを知った。シュレッダーで砕いた紙くずを軍手に詰め、50音順に46の文字を液体粘土で固め、指の形を表現した。

(WAKO道)ハンデ越え、世界へ泳ぐ 手島阿友美さん /鳥取県拡大世界大会に向け、練習に励む手島阿友美さん=米子市皆生温泉3丁目
【鳥取】初挑戦で代表もぎとる スペシャルオリンピックスへ(3/30)
 ギリシャ・アテネで6月開かれるスペシャルオリンピックス夏季世界大会に、水泳の日本代表として手島阿友美さん(20)=米子市錦海町3丁目=が出場する。知的発達障害がある選手によるスポーツの祭典。「金メダルをもらいたい」と目標に向けて練習に励んでいる。

【鳥取】米子駅にホームつなぐバリアフリー陸橋(3/30)
 JR米子駅をバリアフリー化する工事が終わり、エレベーターとエスカレーターを設けた新しい陸橋が使えるようになった。陸橋は3本あるホームにまたがり、各ホーム用に11人乗りエレベーターと上り専用エスカレーターが1基ずつ設けられた。人工の肛門(こうもん)や膀胱(ぼうこう)をつけた人(オストメイト)や車いす利用者対応の多機能トイレも設置した。

【島根】盲導犬訓練の委託式(3/29)
 官民共同のPFI方式で運営する刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(浜田市旭町)で28日、盲導犬候補の子犬を受刑者が育てる3期目のプログラムが始まり、委託式があった。

【山口】要約筆記 あなたも(3/29)
 耳の不自由な人たちのコミュニケーションを手助けしようと、下関市のNPO法人「要約筆記しものせき」が、要約筆記の一日講座を4月17日に開く。話し言葉を文字に変えて情報を伝える手法で、中野ミツ子理事長(67)は「耳の不自由な人は手話と思いがちだが手話を使える人は少ない。多くの人がコミュニケーションで苦労している。ぜひ体験してみて下さい」と呼びかけている。

【福岡】障害者デザイン 段ボール箱好評(3/30)
 障害者らがデザインしたカラフルな段ボール箱「だんだんボックス」が、県内の主要郵便局40カ所で販売されている。昨夏に福岡・天神で販売を始めて以来、売り上げが好調といい、小包宅配を扱う郵便局株式会社の関連企業と契約を結ぶまでに至った。経費を除いた販売益は障害者に還元されるほか、福祉施設にも寄付される。