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人権・校閲

こちら人権情報局

大震災と心のケア

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■被災者に寄り添う

 東日本大震災の発生から1カ月余り。まだ避難所での生活を続けざるを得ない人たちも大勢いて、食料や住居の問題が解決されたわけではありませんが、当初の混乱がある程度落ち着いてくると、「心のケア」をどうすればよいかという課題が前面に出てきます。

 朝日新聞の「こころ」のページでは、聖路加国際病院理事長の日野原重明さんが、大切な人を失った悲しみに向かい合う手がかりとなる本を紹介しています(朝日新聞4月11日夕刊「死別の悲しみ、寄り添う本」)。「愛する人を亡くした時」「詩集 病者・花」「すばらしい悲しみ」の3冊です。「これほどの悲しみは言葉では癒やせない。当人が独りで耐えるしかありません。でも周囲はその人がもたれる柱にはなれる。同情ではなく共感を持って、一緒に悲しむことです」と日野原さんは言います。

 同じページで、ルーテル学院大などがウェブで公開している資料も挙げられています。「災害後の悲嘆(グリーフ)の理解と対応」論文の日本語訳「被災後の子どものこころのケアの手引き」、兵庫県こころのケアセンター「サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 第2版」です。

 日本トラウマティック・ストレス学会会長の前田正治さんは、死者、行方不明者の家族は、「あの時、どうして助けられなかったのか」と自分を責める場合もあると言います(東京新聞4月13日「トラウマ学会・前田会長に聞く」)。「早く忘れて」「前を向いて行こう」という言葉はかえって苦しませることにもなるので、「大変でしたね。ゆっくり休んでください」と温かく迎えることが大切。そして、次の段階では、誰かの役に立っているという「生きがい」を持ってもらい、生きる意味を見失わないようにすることが重要だそうです。

 心のケアは必ずしも専門家でなければできないというものではありません。宮城県石巻市の遺体安置所では、「悲嘆ケア」の訓練を受けた警察官が、遺族をそっと見守ったそうです(毎日新聞4月16日夕刊「遺族支える『悲嘆ケア』」)。「安易な声かけに傷つく人もいる。遺族のペースを最優先に。あくまで寄り添うことが大切だ」という言葉が印象に残ります。遺族と接する担当者に向けたマニュアルの入手先として、国立精神・神経医療研究センターが紹介されています。

 被災した子どもたちについて、現地で支援活動をした養護教諭の一人は「元気に振る舞っているが、友人を亡くし心には傷を負っている。長期的な視点での心のケアが必要だ」と指摘。「現地の教員は疲れ切っている。教員に対してもケアが必要だ」と話しています(朝日新聞4月13日愛媛版「ケア長期視点で 養護教諭が活動報告」)。阪神大震災や新潟県中越地震を乗り越えた先生たちからも、「とにかく子どもに寄り添ってほしい」「被災した子どもたちの思い、心をしっかり受け止めることが大事」というアドバイスが寄せられました(朝日新聞4月12日「教室での心のケア 先例に学ぶ」)。「教員だけで抱え込まないでほしい。カウンセラーなど専門家との協力が大切だと思う」と、先生に対する配慮の重要性にも触れています。

 これらの記事を見てくると、被災者の心のケアに当たっては、まず「寄り添う」がキーワードになりそうです。

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■放射能と偏見・差別

 福島第一原発の放射能から避難した人たちが、「汚染されている」という根拠のない偏見にさらされる恐れが出ています。「南相馬の出身だからと差別され、子どもたちが将来、結婚できなかったらどうしよう」(読売新聞4月14日夕刊「被曝量・差別への不安」)と案じる人もいます。福島県から茨城県つくば市に転入しようとした人が、放射線検査証明書の提示を求められた例(朝日新聞4月20日「転入者は放射線検査証明を 避難者につくば市職員」)や、「放射能がうつる」と言われて、避難先から福島へ戻ってしまった家族がいるという話も報じられました(毎日新聞4月14日「『放射能怖い』福島からの避難児童に偏見」)。南相馬市の僧侶・石川信光さんによると「県外へ避難した方が幼稚園に娘を入れたら、園児に『放射能ちゃん』と呼ばれた」という例もあるそうです(朝日新聞4月16日オピニオン面「檀家置いていけぬ。自ら弔いの場へ」)。

 こうした偏見や差別を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。

 学校や教育委員会は、「避難してきた子らに、思いやりを持って接し、温かく迎える」といった指導をしがちですが、教育評論家の尾木直樹さんは、「思いやりの心というのは同情しろ、と同じ。同情論だけでは解決しません」と批判します(毎日新聞4月18日夕刊「喪失感のケアも大切」)。「まず、原発事故の原因や状況を直接、子どもに説明することが大切」「さらに『あなたの家が原発の近くで、そこから逃げて遠くの町で暮らさねばならなくなったらどう思う?』と、具体的に自分の問題として引き寄せて考えさせることが必要」ということです。

 毎日新聞の広岩近広・専門編集委員は、広島・長崎の被爆者が経験した差別の例を挙げ、「不安と恐怖の『フクシマ』にしてはならない。そのためには『フクシマ』を風評の色眼鏡で見ないことである」と書いています(毎日新聞4月19日「記者の目・『フクシマ』を心に共有し歩こう」)。

 科学的根拠のある情報を提供できるかどうか、私たちメディアも問われています。

■関連記事
「将来の差別 心配」(朝日新聞3/29滋賀版)
 立命館大教授の木野茂さん(69)は「東日本大震災の直後から学生や卒業生からよく相談を受ける。茨城県で働く教え子の女性は、沖縄出張中に地震が起き、上司からすぐ戻れと言われて悩んでいた。若い女性や子どもに影響が大きいからだ。原発に近い地域の人たちが同様の差別を受けないか、とても心配だ」と話す。

復興妨げる原発・風評 作業員集まらぬ地域も 福島(朝日新聞4/3)
 東日本大震災から3週間あまり。岩手県や宮城県の被災地では少しずつ復興に向けた槌音(つちおと)が響き始めた。一方で、福島県では放射能汚染の恐れと風評被害で作業員が集まらない地域もあり、大きな足かせになっている。

風評被害や差別 つらさが身にしみる はるな愛(毎日4/12夕刊)=私も差別を受けたことがあるので。

放射能への不安  相談窓口600件(朝日新聞4/12新潟版)
 東日本大震災の特徴は、原発事故で放射能への不安が広がったことだ。原発に関係しない家庭の子どもには「原発のせいで避難させられた」と、原発関係者の子どもに対する複雑な感情が芽生える恐れがあるという。

地震・津波・原発事故に風評被害…「四重苦だ」(朝日新聞4/16)
 福島第一原発の事故で風評被害が広がっている。被災地周辺の野菜や牛乳が敬遠され、がれきの受け入れで苦情が殺到した。子どもへの差別的な言動も報告された。放射能への誤解や過剰な警戒が原因だ。政府や行政は冷静な対応を呼びかける。

■災害弱者

避難所での性被害防げ 女性団体がホットライン(東京新聞4/7夕刊)

精神障害者への支援を 香山リカさん(毎日新聞4/8夕刊)

命 助かった後で 震災あす1カ月(朝日新聞4/10北海道版)
 この1カ月で、被災者の受け入れ態勢は、道内でも着実に進んできた。被災地の病人や高齢者、障害者たちの受け入れ準備も進めた。内科や外科、産科など計403の医療機関は、計3158のベッドを確保した。高齢者施設は448カ所(受け入れ可能人数1879人)、障害者施設は228カ所(同734人)、母子家庭や孤児などの受け入れ施設は147カ所(358人)。

「誰か声かけて」在宅障害者へ救援届かず(毎日新聞4/12夕刊)

母子を内陸部に避難 広がるNPO支援(毎日新聞4/12夕刊)

災害弱者、避難に不安(朝日新聞4/13鳥取版)
 大災害が起きたときに、高齢者や障害者はすぐに避難することが難しい「災害弱者」になるかもしれない。県内でも各市町村が災害時要救護者の避難対策を進めているが、個人への具体的な支援計画まで策定できている自治体はほとんどない。

避難所の外 届かぬ支援 アパート暮らし 法に明文なく(毎日新聞4/16夕刊)

映画監督の金明俊さんに賛同、募金活動をしたソウルの高校/冬ソナ俳優ら、韓国から学用品を寄付拡大建国大付属高の生徒会では、授業で習った日本語と韓国語で朝鮮学校に送る寄せ書きも作った=ソウル市の同校
朝鮮学校支えたい 韓国から学用品 震災(朝日新聞4/16夕刊)

福島の知的障害施設を丸ごと受け入れ 高崎・のぞみの園(朝日新聞4/17群馬版)
 避難指示圏内にある福島県富岡町の知的障害者施設の利用者らが15日、高崎市寺尾町の国立重度知的障害者総合施設「のぞみの園」で新たな生活を始めた。

「慢性疾患の被災者へ支援重要」 派遣の医師ら報告(朝日新聞4/18岐阜版)
 東日本大震災の被災地に医師や看護師を派遣した県総合医療センターが、岐阜市の同センターで報告会を開いた。現地の病院や避難所で活動した医師らが、糖尿病や高血圧などの慢性疾患を抱える患者への医療支援の重要性を訴えた。

■イベント

◎5/22(日)、『ホーキング青山単独ライブ「スーパーC-1グランプリ2011」~お笑いバリアフリーライブ~』改めて開催  
 出演は、ホーキング青山、グレート義太夫、JINRUI(元・松本ハウス)、インタレスティングタケシ、脳性マヒブラザーズ。詳しくはホーキング青山プロモーション