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人権・校閲

こちら人権情報局

「がんばろう」は心に届くか

(特に注記のない場合、新聞記事の日付などは東京本社最終版です〉
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■「がんばろう」を考える

小5・高野啓太君 東日本大震災の避難所で壁新聞発行 福島・飯坂町拡大「みんなもがんばったりしてください ぼくもがんばります」。子ども新聞を発行した高野啓太君=福島市飯坂町のパルセいいざか
 「『頑張れ』と言われなくても、誰もが十分に頑張っている」(宮城県石巻市で酒造り復興を目指す平井孝浩さん=朝日新聞5月31日「ひと」欄)。東日本大震災の後、日本中にあふれた「がんばれ」「がんばろう」ということばに対して、被災地からは、違和感を覚えるという声が出ています。

 「被災者たちはもう十分がんばっています」「もう、これでもかっていうくらい苦難の連続なんです。これ以上、どうがんばればいいのでしょうか」「せめて『負けるな』と、そっと肩を抱いてください」(「『がんばれ』って言わないで」朝日新聞5月4日声欄)

 テレビのCMで大量に流れる「がんばろう」や「日本は強い国」にも抵抗があったようです。

 「『日本は強い国』『あなたは一人じゃない』・・・・・・私たち被災地に住む者には遠ぼえにしか聞こえないのです。心には響きません」(「今、直接手を取って助けてほしい」毎日新聞5月17日投書欄)

 東京電力福島第一原子力発電所で働く人からも「テレビで『頑張って』なんて言ってっけど、これ以上、何を頑張れっていうの。できることはやってるって」という声があるそうです(東京新聞5月26日「福島原発 作業員の胸中は・・・」)。

 公共広告を作ったACジャパンには、福島県の被災男性から「頑張れと言われることが、私たちをどれだけ傷つけるか考えたことがありますか」という訴えが届きました(日経新聞5月28日「テレビCM震災で転機 商品より『企業の姿』重視」)。

 その後は、企業のCMでも「がんばってと言うよりも、普通の生活に戻りたいと考えている方々の背中を押してあげられたら」というものが出てきたようです(「被災者エールに一工夫 テレビCM 変化の兆し」産経新聞5月20日)。

 

 精神科医の野田正彰さんは、一貫して「がんばろう」を批判し続けています。

 「遺族ほど悲しみや苦しみに耐え、頑張っている存在はいない。周囲が死を見ないようにして『頑張ろう』と復興ばかり強調すれば遺族は『放っておかれている』と思う」(「安易な復興ムードに警鐘」毎日新聞4月20日夕刊)

 「深い悲しみに陥っている人を癒やせるのは、悲しみを共有できる人だけ。『頑張ろう』と言っている人は、夫と子供を失って一人でたたずんでいる人の顔を思い浮かべて言っているんでしょうか。『頑張ろう』という言葉は『もう頑張れない』と思っている人には酷なメッセージで、『私はダメだ』と落ち込ませるだけ。悲しみの抑圧が進んでいるような気がします」(「悲しみ見つめる環境を」毎日新聞5月2日)

 「『がんばろう』のかけ声は、抽象化された『被災者』一般に向けて発せられているのであって、具体的な人の顔を思い浮かべていない」(「悲しみを抑圧する社会の危うさ」産経新聞5月27日)

 できるだけ多くの人が実際に被災地に行って、顔の見える関係になれば、支援する側のことばも今よりは届くようになるのかもしれません。1998年の長野五輪では、小学校ごとに応援する国を決めて、選手らと交流する「一校一国運動」というのがありました。これにならって、被災地と支援する側が特定の相手を決めて、地域ぐるみ、学校ぐるみで継続して支援することはできないのでしょうか。

 

 詩人・作家の辻井喬さんは、「頑張ろう日本、日本は強い国」と復興を目指す発想自体に異議を唱えます。「あれは今の実態を敗戦後の復興と同じようにとらえていて、どうするかという思想がない」。富国強兵や高度経済成長を目指し、「小さくて弱いものを抑えつける開発独裁型の政策」は、今度の復興には通用しないとして、社会的価値観の転換を訴えます(「『美徳』の強さ、公共に」毎日新聞5月13日夕刊)。

 教育人間学者の汐見稔幸さんも、「頑張る子、へこたれない子・・・・・・・日本は高度成長期から、そういう子だけを『いい子』としてしまった。日本人の豊かさは『強くあれ』の論理じゃなかったはずですよね」と話しています(「子供を安心させる存在が親」朝日新聞5月30日夕刊「人生の贈りもの」)。

 哲学者・中島義道さんは、「がんばろう日本」という掛け声で日本人全体にのみ注目していると、「かけがえのない個人」への視点を失ってしまうのではないかと危機感を持ちます(「『がんばろう日本』という暴力」「新潮45」6月号)。震災の報道では、「災害弱者」といわれる高齢者や障害のある人たちのことはいろいろと取り上げられています。しかし、「法的に認められた家族」ではない、「不倫相手を失った愛人とか、同性愛の恋人を亡くした人などはまったく抹殺され」ていると指摘しています(「美談が覆う真実もある 震災への『なぜ』今こそ」東京新聞5月17日夕刊)。

 

 こうした声に対し、「がんばれ」「がんばろう」と言う側には、戸惑いがあります。

 「みんな仲間なのですよ、心配しているのですよ、という気持ちを込めて、心から励ましの言葉をかけているのです」「その励ましを受けていただけないでしょうか」(「『がんばれ』は仲間のあかし」朝日新聞5月20日声欄)。

 「“がんばろう”は“顔晴ろう”、つまり“笑顔になること”。」(ソプラノ歌手・鈴木慶江さん)という考え方を紹介しているのは、脚本家・内館牧子さんです(「『がんばる』は悪くない」日経新聞5月21日夕刊)。

 でも、「がんばらないで」とは言わないで、という体験者の意見もあります。がんで闘病中、友人に「『がんばらなくていいよ』と言われて腹が立った。この苦しい治療に耐えなければ死んでしまうのだ」。言い方によっては、がんばっている人を不愉快にさせることもあるのだと言います(「『がんばらないで』に違和感」毎日新聞5月13日投書欄)。

 「がんばれ」と声をかける人は、相手が「がんばっているように見えない、あるいは努力が足りないように思えるからがんばれ」と言っているわけではないでしょう。しかし、「一緒にがんばろう」と呼びかけているつもりでも、被災者から見れば、結局実際に「がんばる」のは自分たちではないか、という思いがあるのでしょう。

 阪神大震災で被災したときには、そう言われるのが嫌だったという臨済宗妙心寺派の河野太通管長は、いま、あえて「頑張れ」と励ましています。いま生かされているいのちを精いっぱい生きる、それが「頑張る」ことであり、いのちに向けた祈りの言葉だから、ということです(「それでも『頑張れ』と言う」朝日新聞4月25日大阪夕刊)。

 具体的な目標を示せないことにも問題がありそうです。「いつまで頑張ればいいのかっていう目標がないと、みんなつらくなるばかり」(宮城県石巻市、民宿「めぐろ」の目黒政明さん=「『いつまで頑張れば』 石巻の漁村 民家30軒360人共同生活」東京新聞5月28日)。「○月までに仮設住宅を何万戸建設する」といった話はありますが、では、自分はあと何日耐えれば仮設に移れるのか、そこから何カ月で元住んでいたところに戻れるのかといった、個別具体的な行程表を示すことはできないのでしょうか。

 

 「がんばれ」と言うのがよいかどうかは、震災が起こるまでは、「うつの人を励ましてはいけないのか」という形で取り上げられていました。看護師の宮子あずささんは、「がんばれが是か非かの議論は、本質的でない」と言います(「がんばれ」東京新聞5月2日「本音のコラム」)。「『少し休んで・・・』と言えば『この状況で休めない』と言われ、『元気なあなたにはわからない』とばっさり」。自らの体験から、常に喜ばれる魔法の言葉はなく、「その言葉の限界を知り、それでも考え続ける誠意」「時に好意が受け入れられないことへの、覚悟」が支援者には必要だという考えです。

 また、産経新聞論説委員の別府育郎さんは、「がんばれ」に異議を唱える声を踏まえたうえで、「頑張れる環境づくりに腐心しつつ、それでも小さな声で『頑張れ』と言い続けるしかないのではないか」と書いています(「震災で今一番怖いこと」産経新聞5月23日「一筆多論」)。

 

 最後に、被災地の小学生からのこんな「がんばろう」もあることをお伝えします。

 「ぼくは浪江町でいました。M9.0のじしんがあってたいへんでしたがみんなもがんばったりしてください ぼくもがんばります」(福島市飯坂町の避難所で暮らす小学5年生・高野啓太君=「壁新聞 避難所を癒やす 小5作成『みんながんばって』」朝日新聞5月16日夕刊)

■イベント

写真展「ここに生きる」
 在宅の身体障害者の介助に携わる写真家の矢部朱希子(あきこ)さん(35)が、出会った人たちの自立する力強い表情をとらえた写真展。新宿区西新宿1丁目の新宿エルタワー28階の新宿ニコンサロンで始まる。障害者との交流は、矢部さんの人生の転機にもなったという。6月6日まで。

歴史映像シンポジウム「映画で語る韓日関係の深層Ⅱ」同化政策と創氏改名=6月11日
 梶山季之原作、林権沢監督の「族譜」(1978年)、今井正監督の「望楼の決死隊」(1943年)を上映。

◎企画展「ビキニ事件 新聞切抜帖~第五福竜丸の被災と人びとのくらし」
 1954年に米国の水爆実験で被曝したマグロ漁船「第五福竜丸」を展示する都立第五福竜丸展示館(江東区夢の島2丁目)で。8月31日まで。6月11日から3回にわたり市民講座「ヒトと地球と放射線」も開く。

◎市民公開講座「こころの病を持つ親と生活する子どもたち」=6月18日
 日本精神保健看護学会主催。名古屋市中村区名駅4丁目のウインクあいち(愛知県産業労働センター)で。精神障害を抱える親と暮らす子どもは社会から孤立しがちで、社会の偏見に悩んでいることも多い。公開講座では、医療、学校、家族が連携し、子どもと親をどう支援するかを考える。

■アラカルト

難聴の姉妹に体罰、男性講師を処分へ 大津の中学校(5/28大阪本社版)
 滋賀県大津市立中学校の手話ができる男性臨時講師(28)が、難聴の姉妹(15歳と14歳)をシャープペンシルで突いたり、蹴ったりする体罰をしていたことがわかった。講師は学校側に「受験指導などで焦りがあった。なかなか思いが通じず、いらいらした」と説明。19日に退職願を出し、自宅で謹慎中という。任命権を持つ滋賀県教委は処分を検討している。

【北海道】シングルマザー自立へ資格挑戦(5/27)
 自立のために資格取得を目指し、勉強に励むシングルマザーが急増している。札幌市のNPO法人が運営する施設では生徒の大半がシングルマザーで、中には東京電力福島第一原発事故による放射線の影響を恐れ、乳児を連れて山形から避難してきた女性も。背景には、母子家庭の母親の自立を支援する給付金制度が拡充されたことがある。

【群馬】体が不自由な人も低公害車で尾瀬へ(5/28)
 尾瀬国立公園で、一般車の規制で自然保護に気を配る一方、低公害車の乗り入れで体の不自由な人でも入山できる取り組みが始まる。県は10月、入山者の半分以上が利用する片品村の鳩待峠へのマイカー乗り入れ規制を強化したり、大清水―一ノ瀬間(3.2キロ)に電動マイクロバスを運行したりする社会実験を実施する。1週間程度の予定だ。

【埼玉】110番にチャット式導入、聴覚・言語障害者向け 県警(5/25)
 聴覚や言語に障害がある人たちが簡単に通報できるように、埼玉県警は、インターネット上で文字を書き込んで対話するチャット方式の110番通報システムを開設した。通報者と警察側が被害や現場の状況、疑問点をリアルタイムに伝え合うことが可能で、県警通信指令課は「迅速な対応につながれば」と話している。

無反発の磁石、障害者教育に活用 藤沢の長田さんら、内蔵した遊具配布 /神奈川県拡大長田さんらが開発した反発しない磁石の遊具。遊具の下の紙に描いてあるのが一筆書き紋様と呼ばれる模様
【神奈川】無反発の磁石、障害者教育に活用(5/26)
 元NHK職員で独学で認知情報学を研究する長田昌次郎さん(69)=藤沢市=と磁石メーカー「京浜化学工業」社長の伊藤靖雄さん(50)=同=が、どんな面でもくっつきあう立方体の磁石を開発した。磁石は積み木のようなブロック型の遊具にして、障害者の学校などに提供している。 

【新潟】「買い物難民」支援 県、事業費補助へ(5/26)
 山あいのお年寄りら、ふだんの買い物に困っている「買い物難民」のため、移動販売や宅配サービスをしている業者・団体の支援に県が乗り出す。なかなか採算がとれず、事業が続けられない例があるためだ。業者・団体の事業経費の3分の2以内で補助し、上限は800万円。6月14日まで受給者を募る。制度の試行について泉田裕彦知事は25日の会見で「社会福祉事業なのか、ビジネスなのか。定義を含めて模索する」と語った。

【富山】手話通訳者、被災地へ初派遣 県職員の山岸さん(5/23)
 東日本大震災の被災地にいる聴覚障害者を支援しようと、富山県は22日、手話通訳者の資格がある職員を宮城県亘理(わたり)町に派遣した。手話通訳者を送るのは初めてで、期間は28日まで。今後も有資格者の派遣を続けるという。今回派遣されたのは、県新川土木センターに勤めている山岸勉さん(42)。22日朝にJR富山駅であった出発式には、県聴覚障害者協会の関係者も激励に訪れた。

【福井】障害者・スポーツ枠を新設 来年度の教員採用試験(5/21)
 福井県教委は20日、来年度の教員採用試験の概要を発表した。公立校の教員の採用数は約180人で、養護教諭は約10人。新たに身体障害者とスポーツの特別選考枠を設ける。

障害者アート、常設の場 カフェ店内に作品 NPO開設、豊橋「ViVi」 /愛知県拡大カフェギャラリーViViに展示されているShizukaさんの絵画=愛知県豊橋市南瓦町
【愛知】障害者アート 常設の場(5/28)
 豊橋市南瓦町のビルの一室に、障害のある人たちの芸術作品だけを展示するカフェギャラリーができた。「作品発表の機会を増やしたい」と、市内のNPO法人が開設した。展示をきっかけに意欲を高め、新たな作品作りに挑戦している人もいるという。

【三重】認知症大特集全国1席 広報きほう(5/24)
 紀宝町が発行した「広報きほう」が、2011年全国広報コンクール(日本広報協会主催)の広報紙・町村部門で、特選に次ぐ1席に選ばれた。県内で同部門1席は過去最高位。認知症をテーマに、患者や介護者、医師など多くの声を紹介した特集が評価された。

【兵庫】介助法まとめ 被災地に(5/20)
 車いす生活の母を持つ神戸市北区の大学生が、東日本大震災の被災地で障害者支援に役立ててもらおうと、介助方法をリーフレットにまとめた。すでに約700部が福島県のボランティア活動拠点など被災地に送られている。ネットでも見ることができる

【奈良】東北の障害者製作物品を関西で販売(5/28)
 東日本大震災の被災地で障害者支援を続けてきた関西の福祉団体が、被災地の施設で障害者が作った物品の販売を関西で始める。消費が十分に戻らない被災地では、思うように売れないため、販売支援で元気づけようと企画された。施設の多くは日常に戻りつつあるが、障害者が作り、施設の運営費や障害者の賃金に充ててきた物品の売り上げは落ち込んだまま。物品が売れるかどうかは、障害者の励みや生きがいにも直結するため、販売に協力することにした。

【鳥取】県のHP、使いやすさ「金賞」 高齢者・障害者へ配慮(5/28)
 鳥取県の公式ホームページ(HP)の「とりネット」が、高齢者や視覚障害者も使いやすいインターネットサイトのコンクールで最優秀の「金賞」を受賞した。県広報課の電子広報担当は「誰でも使いやすいように心がけ、研修を繰り返してきたことが生かされた」と話す。 県が推薦を受けて参加したのは「第2回だれもが使えるウェブコンクール」。障害者や高齢者といった情報弱者の意見を社会に訴えているNPO法人「ハーモニー・アイ」(東京都)などがつくる実行委員会の主催。ウェブ制作者ら専門家と障害者、50歳以上の一般市民らが実際にサイトを操作して審査した。

【山口】障害者スポーツ大会へリハーサル(5/23)
 10月にある第11回全国障害者スポーツ大会(おいでませ!山口大会)のリハーサル大会が21、22の両日、山口県内8市であった。全13競技で、中国・四国各県から選手らが集まった。県内からはボランティア850人が参加し、本番での動きを確かめた。

【山口】「24時間介護」是非めぐり深い溝(5/22)
 山口県周南市で重度訪問介護による障害福祉サービスを受け、自宅で自立生活をしている脳性まひの男性が、加齢による体の衰えなどを理由に、市に1日24時間の介護を求めている。市は20時間しか認めず、むしろ制度を見直すべきだと国や県に要望する。制度をめぐっては、全国でも障害者と行政が対立し、裁判で争うケースも起きている。

障害者の店、よってこ 栄養豊富、500円定食好評 佐賀「十間堀」 /佐賀県拡大500円の日替わりランチを持つ西田京子代表(右)と従業員の男性=佐賀市唐人1丁目
【佐賀】障害者の店 よってこ(5/29)
 佐賀市の中心市街地活性化のため、中央大通り沿いにある「よってこ十間堀(じゅっけんぼり)」が4月から始めたランチが、「安くて栄養がある」と人気を集めている。今月中旬からはディナーも始めた。保育士が常駐し、子どもの一時預かりのサービスも好評だ。

【熊本】恵楓園 進むか地域交流(5/24)
 ハンセン病の隔離政策を違憲とした熊本地裁判決を国が受け入れて23日で10年。この間、国立療養所「菊池恵楓(けいふう)園」(合志市栄)のあり方をめぐって地域との交流促進がうたわれるようになり、来春には園内に保育所もできる予定だ。人権抑圧の歴史の検証も進むなど環境は変わりつつあるが、理念を実感できるまで高齢化した入所者たちに残された時間は少ない。

【熊本】障害者の就職 過去最高1225件(5/21)
 熊本労働局は、2010年度に県内のハローワークを通して就職した障害者が延べ1225人となり、現在の方法で統計をとり始めた00年度以降、最も多かったと発表した。

【鹿児島】人物語 NPO法人スポーツライフかごしま白石明史さん(5/28)
 5月中旬、知的障害者のサッカーチームを引き連れ、大分市入りした。九州大会に県選抜として参加するためだ。県内で知的障害者がチームをつくり、県外チームと対戦するのは初めてのことだ。「みんなが、僕のこと『先生』とか『コーチ』って言ってくれるんですよ。先生って呼ばれることが人生であるなんて思ってもみなかった」。両親は教師。だが、親への反発心もあって教職は目指さなかった。食品販売会社をつくり百貨店に出店したが、数年で倒産した。30代前半のこと。そこから歯車が狂い始めた。借金に追われ、自暴自棄になり、警察の世話になったこともあった。