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人権・校閲

こちら人権情報局

同性婚がニュースにならなくなる日

 著名な人が同性と結婚した、というと話題になります。最近では、男子フィギュアスケートのジョニー・ウィア選手が男性弁護士と結婚したことが各社で報じられました(1/12朝日新聞など)。単純に話題として取り上げられていたため、興味本位に受け取られる可能性もあり、マイノリティーを特別視すべきではないという観点からは、「この人が結婚した相手が異性だったら、新聞に載るようなニュースになっていただろうか?」という疑問を感じた人もいるのではないでしょうか。

 

拡大パトリック・リネハン米総領事(左)とパートナーのエマーソン・カネグスケさん
 一方、大阪・神戸アメリカ総領事のパトリック・J・リネハンさんを取材した朝日新聞の「ひと」欄(1月19日)には、「公務員となった1984年当時は、ゲイを公言すれば職場を追われたという」とあり、現在でも「オバマ政権になり、政府内で同性愛者の権利向上が進んだ。前任地ソウルからの転任旅費は夫の分も初めて出た。それでも健康保険、年金、税などで差別が残る」との記載もありました。

 

 「同性婚」というキーワードは、米・共和党の大統領候補選びを扱った記事でも登場します。「軋む米国:12年大統領選 サントラム氏に一本化 キリスト教右派など、共和候補選びで」(1/16毎日新聞)は、妊娠中絶や同性婚を容認した穏健派のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(64)が指名を獲得しそうな状況を見て、米保守系団体の指導者らが保守系候補を「中絶や同性婚に断固反対」のリック・サントラム前上院議員(53)に一本化する方針を決めた、と報じています。「ロムニー氏でもう決まり!? 共和党の大統領候補者選び」(1/13朝日・WEBRONZA)でも、同性婚が争点になっていることが述べられています。

 

 全米の市長90人が同性婚を支持する組織を結成した、という報道もありました(「米で同性婚支持の市長会~NYなど90人参加」1/21共同通信)。この記事によると、「市長会にはニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ヒューストンなどの大都市のほか、保守的傾向が強い中西部の小さな町も含め約90の自治体の首長が参加している」とのことです。

 一方で、ローマ法王ベネディクト16世が新年のあいさつで「同性婚が『人類の未来』を損ねる」などと述べたというニュースもありました(「『同性婚は人類の未来にとって脅威』、新年にローマ法王」1/9ロイター通信)。この記事は「ローマ法王庁(バチカン)やカトリック教会は、ヨーロッパなどの地域で同性婚が合法化される動きに対して反対を表明しているが、すでにスペインやオランダなどでは合法化されている」とも伝えています。

 

 1月18日付の毎日新聞では、国内で5年前から性的少数者を法的に支援している行政書士のグループ「レインボーサポートネット」の活動が紹介されました(「レインボーサポートネット:性的少数者、権利の窓口 全国唯一、行政書士グループ--福岡市」)。この記事によると、性的少数者の法的手続き代行を専門にする団体は他になく、相談を受け付け始めると、全国から相談が相次いだそうです。

 これらの記事を読むと、こんにちでも制度的な差別が存続していることや政治的な対立点となっていることを、あらためて感じさせられます。同性婚は、現在進行形で、制度的な公平性の整備に向けて一進一退の状況にあると言ってよいでしょう。

 

 現状では、冒頭に記した「同性婚自体を話題とするのは、同性婚を特別視することにつながるのではないか」という心配は、時期尚早かもしれません。制度的な公平性が確保されていない段階では、マイノリティーについてだけ着目した言説もやむをえず必要とされる時期があると考えられるためです。

 

 そうした中、俳優のブラッド・ピットのインタビューでの同性婚に関する発言を見つけました。「前妻J・アニストンとの結婚生活『退屈だった』ブラッド・ピット」(2011/9/16ロイター通信)では、このように書かれています。「ジョリーとは関係を築いて5年以上がたつが、結婚については、同性婚が広く合法化されるまでは結婚しないとし、『誰もができるようになったら、自分たちも結婚する』としている」(発言部分の原文は、「We'll get married when everyone can」)

 

 「不遇な誰か」の問題ではなく、自分も当事者だととらえています。また、制度上の公平性の整備を要求する発言内容を、同性婚の特別視につながらない言い回しで巧みに表現しています(「誰もが」という言葉を使うことによって、同性婚の側だけへの言及の形をとることなく制度上の公平性を要求する発言になっているという点で)。ブラピの「発信する人」としての覚悟が感じられる発言です(最近になって前言を翻しテレビで結婚を宣言したという情報「してなかった?ブラピ結婚宣言」〈1/31日刊スポーツ〉)もあるようですが……)。

 

 「結婚」といえば「異性間の」と明示しない場合でも異性間で行われるものであると解釈されるのが現状ですが、数十年後にはパートナーが同性であるというだけではニュースにならない時代になっているかもしれません。