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人権・校閲

こちら人権情報局

「見た目問題」――顔の差別と向きあう人びと〈上〉

門田 耕作

 単純性血管腫、アルビノ、口唇・口蓋(こうがい)裂、眼瞼(がんけん)下垂、円形脱毛症、トリーチャー・コリンズ症候群……、読者のみなさんはごぞんじでしょうか。顔や体にあざや、事故や病気による傷、やけどの痕があったり、脱毛などの症状があったりする人たちが毎日の生活の中で直面している問題を「見た目問題」といいます。

 いま、大阪市浪速区の大阪人権博物館(リバティおおさか)で、見た目問題に向き合っている当事者たちの活動や主張を紹介する企画展「『見た目問題』ってどんな問題?~顔の差別と向きあう人びと~」が開かれています。11~12日には当事者によるシンポジウムがあり、自身の症状や悩み、それらに向きあう生き方などについてざっくばらんに話し、理解を訴えました。

 今回と次回(3月2日に更新の予定)の2回にわたり、シンポジウムで出た話のエッセンスをご紹介します。

拡大企画展の展示ガイドをする中谷さん=2月5日
■あざの当事者、シンポ企画

 まずプロローグは、顔面にあざのある中谷全宏(ともひろ)さん(39)。今回の企画展の実行委員の一人。シンポジウムを前に、展示ガイドを買って出ました。中谷さんは単純性血管腫という生まれつきの赤いあざが顔の右側にあります。毛細血管が拡張し、血液の赤い色が透けて見えているためです。ほとんどの場合、自然には消えません。

 幼稚園に入って初めて自分が他の子と違うことに気づいた中谷さんは、それからの学校時代がいちばんつらかったといいます。「お化けみたい」とからかわれたり、ばい菌扱いされたり。閉鎖された逃げ場のないところで生活しなければいけないことが苦痛でした。

 高校を卒業してからも、人と関わらなくていいような仕事に就いていましたが、27歳の時、一冊の本に出あって転機が訪れます。中谷さんと同じく顔の右側にあざをもつジャーナリスト石井政之さんの「顔面漂流記」です。「それまで当事者自身が表に出て自分のことを語ることはなかったのに、それをやってのけた。けっこう衝撃でした」

 「自分だけ」ではないことに気づいた中谷さんは、石井さんの「孤立しやすい当事者が手をつないで力を合わせよう、当事者も幸せに生きられますよ」という発信に共感し、勇気づけられたそうです。今では整体という、人に関わって人に喜んでもらえる仕事をするかたわら、あざの症状に限らず「見た目問題」当事者の交流会を開いています。今後は、「見た目問題」を周知するために学校などでの講演活動もやっていきたいと考えています。

 その流れの中で実現した今回の企画展。中谷さんもパネリストとして登場しました。

拡大「アルビノに見る現代社会」について語る当事者の、左から高田さん、曽我部さん、藪本さん
■アルビノ女性3人に注目

 「アルビノに見る現代社会」と題した初日(2月11日)は、アルビノ当事者が登場しました。アルビノ・ドーナツの会代表の藪本舞さん(28)、事務職として会社に勤める曽我部こずえさん(38)、同じく高田典子さん(27)の3人です。

 アルビノとは、メラニン色素が作れない、もしくはわずかしか作れず、皮膚や体毛が白くなる遺伝性の疾患で、多く視覚障害を伴います。1人だと遠目には髪の毛を染めた色白の女性かな、くらいにしか見えませんが、3人そろうと確かに圧倒的に目立ちます。

拡大高田さん
 「注目されてしまうことは仕方がない」。電車通学で、何となく嫌な視線を感じていた高田さんはそう言います。それでも、聴力がよく、聞こえてきてしまう心ない言葉をシャットアウトするために、イヤホンで音楽を聴きながらでないと電車には乗りたくないそうです。曽我部さんもメディアプレーヤーにサングラス、ときに外国人のふりをしてみたり、逆に堂々と歩いてみたりするとか。

 藪本さんもiPodがなかった日には心が折れそうになるそうです。「目で追われるというよりは、『あの人ガイジンちゃう?』『でも顔日本人やで』『白髪かなあ』などと、わかるような声で、反応をうかがうように言われると、私がそこにいてはいけないのでは、と感じてしまう」といいます。

拡大曽我部さん
 全身が白く好奇の目で見られること、視力が弱いこと以外に、症状ゆえの大変さとして、色素がなくて紫外線を防御できないため、日焼けをしないように注意が必要なこと、眼球内の色素も不足しているため、光を極度にまぶしく感じてしまうことなどがあります。曽我部さんはパソコン画面の白がまぶしいので黒白を反転させ、拡大ソフト、音声ソフトを入れていますし、外回りの仕事は、出来ない理由をそのつど説明して他の人にお願いしているそうです。

 そんなつらく苦しい思いもしながら、一歩踏み出して周囲の理解と協力を引き出した3人は、とても明るく自らの体験を語りました。高田さんはいま、休日には法律を勉強しながら、バンドでドラムをたたき、日々楽しく暮らしているといいます。

 曽我部さんは、音楽仲間の紹介で知りあい結婚したお相手のことも話してくれました。藪本さんは、当事者団体の代表として同じ悩みをもつ人や家族が支えあう人の輪をつくろうと交流会を開いたり、八尾市人権協会(大阪府)で「見た目問題相談センター」の相談員を務めたり、とてもエネルギッシュです。

拡大薮本さん
■一人で悩まないで

 最後に、まだまだ理解が十分でない社会に対して要望は、と司会者に振られた3人。曽我部さんは「いろんな人がいるんだという認識を幼い頃からつける教育をしてほしい」、高田さんは「自分の立場に立って考える、一歩進んだ想像力を働かせてほしい」と訴えました。藪本さんは同じ当事者に向かって「一歩踏み出すのは大変ですが、こうやってにこにこ話している当事者がいるので、ぜひ会いにきてください。一人では絶対に悩まないでください」と呼び掛けました。

      ◇

 次回は、2月12日のシンポジウム「『見た目問題』を見る!聞く!うなる?」のリポートをします。展示ガイドを務めた単純性血管腫の中谷さんを始め、円形脱毛症の女性、トリーチャー・コリンズ症候群の大学生、アルビノエンターテイナーが登場し、社会へのとけ込み方や家族や友達とのちょっといい話を披露します。

(門田耕作)

●企画展「『見た目問題』ってどんな問題?~顔の差別と向きあう人びと~

会 期3月25日(日)まで
 2月27日、3月5、12、19、21、23日は休館。
 3月18日(日)午前11時、午後1時、午後3時から、
 中谷さん(単純性血管腫)の展示ガイドがあります。
場 所大阪人権博物館ガイダンスルーム2
 〒556・0026大阪市浪速区浪速西3の6の36
 電話06・6561・5891、ファクス06・6561・5995
入館料大人250円、大学・高校生150円
中学生以下・65歳以上・障害者(介助者含む)は無料
主 催リバティおおさか、「見た目問題」展実行委員会
協 力NPO法人マイフェイス・マイスタイル