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人権・校閲

こちら人権情報局

おせっかいを焼こう

山村 隆雄

■各地で相次ぐ孤立死・孤独死

 周囲に人がいる中で暮らしているのに、誰にもみとられずに亡くなり、時間がたってから発見される孤立死・孤独死が増えています。特に今年に入ってから、複数で暮らしているのに亡くなっているのを発見されるケースが相次ぎました。

1/12  北海道釧路市のアパートの一室で72歳の妻と84歳の夫の遺体が見つかる。妻は死後約40日、夫は約20日。夫には認知症があり、妻の病死後、灯油ストーブの燃料が切れ、凍死したとみられる。
1/20  札幌市の4階建てアパートの3階の一室で、40代の姉妹の遺体を発見。姉は12月下旬~1月上旬に病死、知的障害のあった妹は1月中~下旬に凍死していた。滞納で電気やガスが止められていた。
2/13  東京都立川市のマンション室内で、母親(45)と知的障害のある息子(4)の遺体を発見。死後1~2カ月。男児は歩けたが、1人で食事ができなかった。母親がくも膜下出血で亡くなった後、食事を取れず衰弱死したと見られる(2/22毎日新聞)。
2/20  さいたま市北区で、60代の夫婦と30代の長男とみられる3人の遺体が見つかる。死後約2カ月。検視の結果、3人とも栄養状態が悪く衰弱していたことが分かった。部屋には1円玉が数枚しか残っておらず、電気やガスは滞納で止められていた。
3/7  立川市の都営アパートで95歳の母と63歳の娘とみられる遺体が見つかる。死後1カ月程度とみられ、母親は認知症で娘が世話をしていた。母親の胃の中は空だったという(3/8朝刊)。
3/11  東京都足立区のアパートの一室で、73歳の男性と84歳の女性が死亡しているのが見つかった。男性は死後1週間、女性は3~4日で、いずれも病死の可能性が高いという。知人の男性が連絡が取れないことを不審に思い、訪ねて発見(3/12毎日新聞)。
3/14  埼玉県川口市の2階建て民家で、この家に住む母親(92)と息子(64)が亡くなっているのが見つかった。2人は死後2~3週間たっていた。病死とみられる。新聞がたまっているのを不審に思った近所の女性が、2人が倒れているのを発見(3/15朝刊3/15埼玉版)。

拡大さいたま市の事件を報じる記事=2月22日付東京本社版朝刊社会面
■事前の兆候
 いずれのケースも、周囲に人がいる中で援助の手が届かず、しばらく時間が経ってから発見されました。その後の調べなどで、事前に何らかのサインがあったケースもあることが分かりました。

 ①釧路市 2009年に夫が要介護度2と認定されたが、半年後に更新手続きがなされず、要介護者のリストから外れていた。

 ②札幌市 姉妹は近所づきあいは薄かったが、姉は3度にわたって区役所の生活保護窓口に相談に訪れていた。職員に「生活保護の申請をしますか」と聞かれていたが、断っていた。

 ③立川市 母親は毎月紙おむつの支給サービスを受けていた。昨年12月には市の委託業者から受け取っていたが、1月は業者が配達に行っても応答がなく、連絡を受けたケースワーカーが下旬に訪問。やはり応答がなかったが、それ以上の対応をしなかった。また、母親は頭痛で通院するため、緊急一時保育や子守といった市の福祉サービスを利用していた。

 ④さいたま市 一家は、2年ほど前から家賃を滞納し始めていた。昨年末には近所に「お金を貸して」と言いに来たという。水道料金も昨年7月から滞納。水道局の職員に「生活に困っているなら、区の福祉課に連絡して」とアドバイスされていた。

 ⑤立川市都営アパート 市や都市住宅供給公社は、2月29日に自治会長ら近隣住民から安否確認を求められていたが、室内には入らなかった。7日に民生委員から「住民が心配している」との報告を受けて市が職員を派遣、警察や消防に通報して発見した。

 ⑦地元の民生委員が定期的に母親を訪問。今年に入っても2、3度会話していた。最後に会ったの2月下旬だった。

■各地の対策
 このような孤独死を防ぐために、各地の取り組みが紙面でも紹介されました。

 札幌市やさいたま市のケースでは、電気やガスを止められていました。困窮から孤独死に至ることを防ぐため、このような情報を事業者と共有する仕組み作りができないか、行政側は模索しています。ただ、事業者側には個人情報保護法で、顧客の同意なしに個人データを提供することが制限されているという問題があります(「孤独死対策に 個人情報の壁 道・札幌市」3/8北海道版)。

 立川市では、8日に③の母子の件の検証の中間報告を公表。問題点として、母親とさまざまな接触があったのに各部署が情報交換などの連携をしてこなかったこと、母親の健康状態を把握していなかったことなどを挙げました。今後、ライフライン業者からの情報提供も視野に、民生委員らによる地域の「見守りシステム」の仕組みを見直す方針です(「市、兆候把握に躍起 住宅公社と連携再検討」3/9東京版)。

 独自の取り組みを始めた自治体もあります。

 東京都中野区では、町会に区が重点的に見回る必要のある人の情報を提供し、それに基づいて町会が見回りをしています。4月からは町会から寄せられた情報などから、誰をどのくらいの頻度で見回るかを計画できる情報管理システムを開発し、協力する町会数も大幅に増やす方針です。神奈川県の相模原市では、昨年、70歳以上のひとり暮らしと高齢者のみの世帯を、民生委員の協力を得て戸別訪問する試みを始めています(「孤立死防げ、自治体動く 名簿を提供、町会が安否の見回り」3/10朝刊生活面)。

 ただやはり大事なのは、一人ひとりが周囲にはたらきかけること。「ときにはおせっかいを焼こう」と各務滋・朝日新聞論説委員は呼びかけています(3/1朝刊オピニオン面)。「濃い人間関係には、わずらわしさもある。ひとさまの生活に干渉しないのも優しさだろう。でも、それは元気な人どうしの話だ。ときには『おせっかい』を焼かないと、救えない命もあるかもしれない。迷った時、一人ひとりが、そう想像してみる。それしかない気がしている」

(山村隆雄)