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人権・校閲

こちら人権情報局

ATARUは超能力者?障害者?

山村 隆雄

■サバン症候群

 15日から、テレビドラマ「ATARU」が放映されています(TBS系、毎週日曜日夜9時~)。
  ドラマは中居正広さん演じる「チョコザイ」(ATARU)の話す単語をヒントに、栗山千明さんと北村一輝さんが演じる刑事が、謎に満ちた事件を解明していきます。テンポが良く分かりやすいストーリー展開に引き込まれる人が多かったのか、初回は19.9%と高い視聴率になりました(4/16スポニチ)。

 チョコザイは、超人的な能力の持ち主。人とのコミュニケーションは苦手ですが、空中にバラバラに舞い広がった大量の写真の内容を一瞬で読み取ったり、散らばった釘のうち1本だけ台湾製であることを見抜いたりします。見たものをその超人的な記憶力で頭に蓄積したデータベースと照合し、事件の鍵となる単語をつぶやきます。

 チョコザイは超能力者ではなく、「サバン症候群」(「サヴァン症候群」と書くこともあります)の人をモデルにしているそうです。TBSの番組公式ページによると「自閉症や知的障がいを持った人のうち、特定の分野に限って常人では及びもつかない驚くべき才能を発揮する人の症状の事をいう。(記憶力・演奏力・絵画・計算など多岐にわたる)」。

 サバン症候群は、過去にも映画やドラマのモデルになっています。特に1988年に公開されたアメリカの映画「レインマン」はよく知られています。ダスティン・ホフマンが演じたレイモンド・バビットは驚異的な記憶力でした。実在の人物キム・ピークスさん(1951~2009)をモデルにしています。彼は9千冊の本を記憶し、日付を言われればその曜日をたちどころに答えられたそうです。
 フジテレビ系で1996年に放映された連続ドラマ「ピュア」にも登場しました。和久井映見さんが演じた折原優香は、軽度の知的障害があるものの、傑出した芸術的才能を持つサバン症候群でした。

 2004年11月の朝日新聞西部本社版にもサバン症候群の青年が「バドミントン大会挑戦」という記事が載りました。当時21歳の青年は、知的障害の一方で突出した記憶力があったそうです。記事には母親のコメントとして「年月日を言うだけですぐ曜日を答える。でも、なんでわかるのか本人には理解できないようです」とありました。

 ドラマ「ATARU」に対しては、「チョコザイがサバン症候群の人というより、超能力者のように描かれている。障害者としての現実が描かれていない」という批判もあるようです。確かに今のところ、チョコザイの超人ぶりがドラマでは目立っています。
 人によって受け止め方は色々あると思いますが、筆者は「多少現実離れしていても、エンターテインメントとして面白ければ構わない」と思っています。
 筆者の私は聴覚障害者。「愛していると言ってくれ」「星の金貨」「君の手がささやいている」「オレンジデイズ」など聴覚障害者が出てくるドラマはよく見ています。
 以前は聴覚障害者の登場人物に「都合のいいときだけ聞こえるんだね」と毒づいたりしていました。ドラマの中では「愛の告白」など、重要な場面ほど聞きにくい小さな声で話すことが多いのです。ただ、こういったドラマが手話の普及や、聴覚障害者への接し方の理解に果たした力は大きいと感じています。
 まずは多くの人が見て楽しめ、関心を集めること。その上で「自閉症の人にはこんなふうに接するのがいいのか」と自然に分かるようなドラマになっていれば、結果として自閉症の人の環境改善にも役立つことになります。もっとも、あまりにも現実離れして誤解が広まってしまうのは困るので、程度問題ですが。

 今後、「ATARU」がチョコザイの人間的な側面にもスポットを当ててくれることを期待しつつ、ドラマを見守りたいと思っています。

(山村隆雄)