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人権・校閲

こちら人権情報局

自分のことを自分で決める権利

山村 隆雄

■中津川代読訴訟 控訴審判決

 声帯を切除して通常の発声ができないのに、代読など本人の求める方法での議会での質問を認めないのは参政権や自己決定権の侵害だ――。元岐阜県中津川市議が市などを相手に1千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が11日に名古屋高裁であり、「発言の権利と自由を侵害され、多大な精神的苦痛を受けた」と市に300万円の支払いを命じました(5/12名古屋本社版)。

 訴えていたのは、1999年から市議を2期務めた小池公夫さん(72)。

 1期目の途中にのどのがんで声帯を切除し、発声機能障害を負いました。2003年に再選すると代読による質問を求めましたが、議会は「本人による口頭発言が原則」とはねつけました。翌年市民の署名や県弁護士会の勧告を受けると、議会側は逆にパソコンの音声変換ソフトで発言することを提案。小池さんはパソコンを使えなかったため、それを拒否しました。

 その後、05年に議会側が「再質問は代読を認め、市職員が質問内容を入力する」と提案したり、06年に小池さんが食道発声による質問を提案したりしましたが折り合えず、06年末に小池さんは提訴しました。結局小池さんは、2期目は一度も質問できずに07年に市議を引退しました。

 今回の判決は「議会での発言方法の制約により、発言の機会そのものを奪われるおそれが大きい」として、表現の自由と議会に参加する権利(参政権)の侵害を認めました。一方、障害者の「自己決定権」を侵害されたとの小池さんの主張については、「議員の発言方法(の決定)は地方議会の自主性に委ねられている」として認めませんでした。

 小池さんと同様に発声に障害のある議員はほかにもいます。鎌倉市議会では01年から重度の脳性まひのある千一(せん・はじめ)議員が代読による質問をしています。11年2月の鳥取県議会では、小池さんと同様にがんで声帯を切除した鍵谷純三さんが同僚議員の代読で質問に立ちました。

■認められなかった「自己決定権」

 小池さんが訴え続けていた「自己決定権」は控訴審でも認められませんでした。判決後、小池さんは「障害を持つ人が主権者として自分のことを自分で決め、障害を持たない人と同じように生きていけると判断してほしかった」と述べたそうです(5/12毎日新聞中部版)。

 私は聴覚障害者。聞こえない人に対する情報伝達手段は複数あります。補聴器をつければ健聴者と同じように話が出来る人もいれば、口をはっきり見せれば口の形から読み取れる人もいます。「手話が分からないから筆談で」という人や「手話が第一言語。筆談ではコミュニケーションが取りにくい」という人もいます。どれがいいかは人によって違います。「聴覚障害者なら手話通訳をつけておけば大丈夫だろう」というわけにはいきません。

 どの手段にするかは、やはり本人の希望を聞いて欲しいと思います。そういう意味で、小池さんの訴える「自己決定権」には共感します。

 議会側がはじめから本人を交えて発言方法を考えていたら、ここまでこじれることはなかったでしょう。相手が障害者であっても、当事者の思いを尊重するのが当たり前の社会になってほしいと強く思います。

(山村隆雄)