メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

人権・校閲

こちら人権情報局

差別表現について新人記者と考えた

■ことばに責任を

 自分の発した何げない一言が、大勢の人を傷つけてしまうかもしれないことを忘れないで――。先日、朝日新聞社に今春入社した新人記者に向けて「新聞のことばと人権・差別」をテーマに研修をしました。書いた記事が一瞬で全世界に広がる時代。新聞記者なら、ことば遣いによっては読者を傷つけてしまうことや、人権侵害につながる恐れがあることを意識し、自分のことばに責任を持たなければいけません。研修では、「人権問題」という大きなテーマをすべて説明するのは難しいので、「差別表現」を取り上げました。

 

 参加者は50人ほど。文章をスクリーンに表示し、校閲記者ならば差別表現だと判断した上で改善してもらうべきことばを、班ごとに答えてもらいました。ここで例にしたのは、「未亡人」や「父兄参観」などです。「未亡人」は、夫と死別した女性のこと。つまり、「未(いま)だ亡くなっていない人(夫とともに死ぬべきだったのに……)」という意味です。考えてみればとても失礼な話です。朝日新聞では「亡くなった○○さんの妻」と言い換えています。「父兄」は、「父母」または「保護者」とします。このように、男女を対称的に扱っていない表現は原則として紙面では使いません。新人記者のみなさんも、「この表現はおかしい」と感じてくれたようでした。

 

 でも、「これは差別表現だから使わない」と、単純な言い換えだけ覚えても、その背景を学ばなければ解決にはなりません。そこで過去にマスメディアで実際に議論になった例を挙げて、「自分が当たり前だと思っていることが、他人にとっても当たり前とは限らない、という前提で記事を書いてほしい」と話しました。例えば、「○○の仕事までして子どもを育てた」とする表現。苦労を強調しているのですが、「までして」などと引き合いに出された職業の人にはたまりません。表現を通して、記者の人権意識が問われているのです。

 

 

イラスト拡大総選挙の仕組みを説明したイラスト。候補者が男性ばかりなのは、やはり不自然だ
 研修で一番盛り上がったのは、親子4人が春闘について話しているイラストの例。ジェンダー的に、あなたならどこを直しますか?と意見を聞いた時でした。兄妹が両親に「春闘ってなあに?」と尋ね、お父さんは「お父さんたちが頑張って働けるように会社に訴えるんだよ」。お母さんは「パートの働き方についても注目が集まっているのよ」と話し、背景には企業側と組合側の人たちも描かれています。ただ、背景に登場するのはみんな男性。「背景がすべて男性なのは不自然」「頑張っているのはお父さんだけではない」「『母親はパートで働くもの』というイメージにつながる」「そもそも、家族をイラストに使わなくてもいいのでは」……たくさんの活発な意見が出ました。

 

 同じことばでも、記事での使われ方によって差別的な意味を帯びる場合もあれば、全く気にならない場合もあります。新聞はその時々で差別表現の意味を考えながら、差別と闘い、差別のない世界を実現できる媒体です。これから記者になる方にはそれを忘れないでほしいし、私自身も毎日考え続けていきたいと思っています。

(梶田育代)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

朝日新聞の記事には有料記事にリンクしているものがあります。

朝日新聞デジタルの読者でない方がクリックすると「会員登録のページ」に飛びますが、

現在無料会員登録キャンペーン中なので、無料会員に登録すれば有料記事を1日3本まで見ることが出来ます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~