メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

人権・校閲

こちら人権情報局

愛するペット、悼む権利を

石橋 昌也

■伴侶としての動物の死、どう向き合う

 みなさんの身近に動物はいますか? 現在、日本でペットとして飼育されている犬・猫は約2200万匹で、中学生以下の子どもの数より多くいます。犬・猫だけでなく、その他の哺乳類や爬虫(はちゅう)類、熱帯魚などもその数に加えたら、大変な数になります。

 

 近年、ペットは、私たちの生活に癒やしなどを与えてくれるだけでなく、飼い主の人生の「同伴者」としての役割が注目されています。子どものいない家庭や一人暮らしの高齢者など、個人の生き方が多様化し家族のあり方が変わりゆく中、ペットの役割も変わってきたといわれます。最近では、飼育される動物を「ペット」とは呼ばず、「コンパニオンアニマル」「伴侶動物」と呼んだりすることもあります。人と対等な立場、同じ家族の一員として動物を迎えているのです。

 

 そんな「家族の一員」の「死」にどう向き合うか。近しい人の死に直面した時と同じように、愛する動物の死に接して、無気力や悲嘆にとらわれる「ペットロス」と呼ばれる心の状態に陥ることがあります。東日本大震災では、津波や原子力発電所の事故で避難する際にペットとの離別を余儀なくされた人たちがいました。そんな人たちの多くは、ペットを置き去りにしてしまったという自責の念にさいなまれたといいます。

 

 2010年4月、埼玉県の山中でペットとみられる犬や猫などの死体が約100体見つかるという事件がありました。ペット葬祭業者が、飼い主から火葬を依頼されながら山中に投棄していたのです。飼い主には、ペットの遺骨と称して別の犬や猫などの骨を返していました。業者が廃棄物処理法違反や詐欺の疑いで逮捕され、刑事裁判で有罪が確定し、事件は終わりました。

 

■大切な家族の一員でも、死ねば「ごみ」?

 しかし、刑事事件が収束しただけで、業者に葬儀を依頼した飼い主たちの心は晴れませんでした。ペットの死体は役所などで「処理」してもらう場合、死体は「ごみ」扱いされます。愛するペットを「ごみ」扱いしたくないがために、業者に葬儀と火葬を依頼したのですが、その結果、山中に投棄されてしまいました。ペットを丁重に弔いたいという飼い主の思いが踏みにじられたといえます。

 

ペットの墓拡大被害者らが建立した墓。山中で収容された多くの骨が納められているという=埼玉県毛呂山町大類
 上述したように、警察による捜査は、「廃棄物処理法」違反容疑でした。ペットをごみ同然に山中に捨てた事件を追及してほしいという願いと裏腹に、法律上、飼い犬たちは生きていれば「器物」、死ねば「廃棄物」として扱われます。被害者たちは、業者だけでなく、法律にも苦しめられたと語っていました。

 

 刑事裁判後も、被害者たちは、愛するペットを悼む権利を侵害されたとして慰謝料などを求めて民事裁判を起こし、2012年6月、ようやく和解に至りました。自分たちの人生の同伴者を悼む心を踏みにじられることは、その人の権利の侵害に他なりません。和解に至ることが決まった時、被害者からは「ようやく愛するこたちを弔うことができる」と話しました。

 

 この事件をきっかけに、無登録制だったペット葬祭業者を登録制にしようという動きがあり、環境省が動物愛護法の改正に乗り出しましたが、2012年の改正には盛り込まれなかったようです。新たに動物の葬祭に関する法律をつくるという話もあります。家族の大切な一員が「ごみ」として扱われない日が来るのを、一日もはやく訪れることを望む人たちがいることを忘れないようにしたいと思います。

 

(石橋昌也)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

朝日新聞の記事には有料記事にリンクしているものがあります。

朝日新聞デジタルの読者でない方がクリックすると「会員登録のページ」に飛びますが、

無料会員に登録すれば有料記事を1日3本まで見ることが出来ます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~