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人権・校閲

こちら人権情報局

見えないものを見るために

■優先席なのに座りにくい

 2012年10~12月の東京新聞投書欄で、こんなやりとりがありました。

 「脳梗塞の後遺症があるため電車では優先席に座るのだが、見た目にはわからないため冷たい視線にさらされる」という48歳の方の声(10月24日「一見健常者 座りにくい」)に、「マタニティーマークのようなキーホルダーを作ってはどうか」という案が出されました(12月1日「見えぬ障害判別で提案」)。さらに、「東京都営地下鉄では『ヘルプマーク』の入ったストラップを配っていて、自分も持っている」という情報が寄せられました(12月8日「大江戸線は人に優しい」)。

 

ヘルプマーク拡大「ヘルプマーク」への理解を求める都営地下鉄のポスター
 これは、赤地に白の十字とハートのマークが入ったもので、東京都交通局のサイトによると、10月から大江戸線の各駅で配布しているそうです。優先席にはステッカーが貼ってあります。

 同様のものとしては、2011年12月7日朝日新聞「ひと」欄で紹介された大野更紗さんらの考案した「見えない障害バッジ」があります。

 大野さんは、自己免疫疾患にかかった自分の体験をつづった「困ってるひと」(ポプラ社)の著者です。大野さんと評論家の荻上チキさんが発行するメールマガジン「困ってるズ」を読むと、実に様々な「見えない障害」があることに気づかされます。

 

 たとえば駅のバリアフリーに関しては、義足を付けている方や足に痛みがある方から、「階段の下りが苦手」「下りのエスカレーターも必要」という声が上がっています。「たいへんなのは上りで、下りるのはなんとかなるだろう」と思いがちです。筆者も以前は、そういう声を聞いてもピンと来なかったのですが、このごろ時々、膝のあたりを痛めることがあり、階段を下りるときのつらさや怖さが実感できるようになりました。上りなら我慢しながらゆっくり進むことができても、下りは足を踏み出す瞬間に激痛が走り、もしバランスを崩したらどこまで落ちていくかわからないという怖さがあります。

 

 また、あるときは、座って膝を曲げた形で固定してしまうと、次に立ち上がるために伸ばそうとしたときにひどく痛むことがありました。そうなると、列車でも少々の距離なら立っている方がましです。デッキに立っていると、車掌さんが「席空いてますよ」と声をかけてくださるのですが、「膝を痛めているので・・・・・・立っている方が楽なんです」と答えると、けげんな顔をされてしまいます。また不思議なことに、ジョギングで10キロ走っても平気なのに、歩いていると30分ほどでふくらはぎの外側上部が痛くなったりします。

 

 というように、抱えている悩みは人によっていろいろで、しかも、外見からは想像しにくいものがあります。

 

■外見から分からぬ障害も

 様々な「見えない障害」を含む難病に関しては、医療費助成の対象を拡大することが検討されていたのですが、政権交代の余波で、14年度以降に先送りされてしまいました(朝日新聞1月24日夕刊「難病助成の拡大先送り 厚労省、法案提出は秋以降」、朝日新聞1月25日夕刊「難病対策の拡充、2014年以降」)。

 

会議の写真拡大難病対策のシンポジウムで「必要な支援を受けられる制度を」と訴える患者たち=2012年10月上旬、東京都千代田区
 難病とされる疾患は増えることになりそうですが、医療費助成や福祉サービスの対象になるかどうかを病名で判断する方式には多くの異論が出されています(朝日新聞2012年10月11日「病名限らず福祉の対象に 難病患者支援」、朝日新聞2012年10月21日「難病支援 実態で決めて 障害者総合支援法」、読売新聞2月13日「病名でなく生活実態見て 難病とともに 変わる対策3」)。同じような症状、同じような困難を抱えていても、病名によって対象に含まれないことが起きるからです。

 

 「見えない障害」を示すバッジなどが、電車の中だけでなく、いろいろな場面で役に立つとよいのですが、見た目に必要がありそうな人に優先席を譲るということすらなかなかスムーズには行っていないのが現状です。「困ってるズ」メルマガにある方が書いておられた「ひとは正しく認識すれば、やさしい感情が働きます」という言葉に希望を託し、少しでも多くの人がマークに気づいてくれるように願っています。

(松沢明広)

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