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人権・校閲

こちら人権情報局

待機児童問題、立ち上がる親たち

青山 絵美

■「集団で異議」異例の申し立て

 2月22日、東京都杉並区の母親グループが、認可保育園に入園できないことを不服として区に異議を申し立てました。入園できないことを理由とする集団での異議申し立ては全国でも極めて異例だそうです(2/23朝日新聞同東京版)。

待機児童拡大異議申し立ての書類を提出する母親グループ代表=杉並区役所
 児童福祉法は、保護者の仕事や病気などによって保育できない子どもを、市町村が保育所で保育しなければならない、などと定めています。母親グループは「多くの子どもが入園できない現状は、行政が責任を果たしていない」として、行政不服審査法に基づき、申し立てをおこなったのです。杉並区の今春の入園申請者は過去最多の2968人。2月の1次内定で、約半数の1505人が認可保育園や区独自の保育施設に入れなかったそうです。

 異議申し立ての当日、杉並区では、1年で保育所の定員を400人増やす緊急対策が発表されました。さらなる受け入れ増、保育所の増設も検討されています(3/5朝日新聞「東京・杉並区、待機児対策800人 受け入れ枠増へ」)。

 ただ、問題は杉並区だけのものではありません。足立区でも2月28日に同様の異議申し立てがおこなわれ、中野区では3月18日、保育環境の整備を求める要望書が出されました。他に、大田区やさいたま市などでも活動が広がっています(3/1毎日新聞「異議申し立て:保育所不足に 「認可」希望なのに…足立区と認識に違い /東京」3/19東京新聞「認可保育問題 中野区に父母ら要望書 都内で広がる訴え」3/20朝日新聞「『保育所入れて』団結 ツイッター、つながる親たち 集団異議申し立て続々」3/7FNN「待機児童問題 東京・大田区でも母親らが、区に異議申し立て」)。

■実情と合わない国の「待機児童数」

 厚生労働省によると、2012年4月時点の待機児童は全国で2万4825人。2年連続、前年比では731人の減少としています(厚生労働省「保育所関連状況取りまとめ」)。ただ、これは、本当にどこにも行けずにいる子どもの数。認可保育園に入ることができなかった子でも、割高な無認可保育園に入っている場合や、親が就職や復職をあきらめたり育休を延長したりしている場合などは含まれていません(4/3朝日新聞「待機児童、数え方変だよね 育休延長も認可外利用も含まず」)。

 そういった子どもたちも含めた「待機児童」の数を把握しようと「保育園を考える親の会」がおこなっている調査があります。それによると、同じ12年4月の待機児童は5万5222人(有効回答97市区)。国の統計とは大きな開きがあります。

 先日、政府の規制改革会議が、今後2年間で待機児童をゼロにすることを目指すべきだという提言の素案をまとめました(3/21朝日新聞「待機児童2万5千人『2年でゼロ』 規制改革会議提言案」)。

 「5年間での解消を目指す」とする、税と社会保障の一体改革の計画では「困っている母親にとってはあまりに遅い」という同会議の指摘はまったくもっともですが、それでも、ここで解消の目標にされている待機児童は、政府の統計にしたがった「2万4825人」です。

 統計上の「待機児童」がたとえ減っても、希望するすべての家庭の子どもが保育所に入れるようにならなければ、待機児童問題が解消されたと言うことはできないでしょう。

■「育児か仕事か」では社会の損失

 安倍晋三首相は2月28日の施政方針演説で、待機児童の解消、育児か仕事かの選択を迫られることのない社会の実現に言及しました(3/1朝日新聞「安倍首相の施政方針演説」)。

 厚労省調査によると、10年時点で、働く女性の54%が、第1子の出産の前後に仕事をやめているそうです(12/18朝日新聞「第1子出産で離職、働く女性の半数超 厚労省調査」)。

 01年調査(67%が退職)に比べると、出産後も働き続ける女性の割合は増えていますが、出産前に常勤だった母親が仕事をやめた理由(複数回答)のうち、「仕事を続けたかったが、両立が難しいのでやめた」が35%、「解雇された、退職勧奨された」が11%という数字に問題を感じます。

 子育てのために働くことをあきらめる、働くために子どもを持つことをあきらめる――そのどちらもが、個人にとってだけでなく、社会の損失でもあることは言うまでもありません。

 希望するすべての家庭の子どもが保育所に入れること、保育所での保育の質を保つこと、育児休業を安心してとれること。理想をすべて、しかも迅速に実現するというのは難しいことかもしれません。それでも、その必要性については論をまたないでしょう。充実した施策が進み、安心して自分の生き方を選べる社会に近づくことを願います。

(青山絵美)

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