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人権・校閲

こちら人権情報局

サッカーを汚すもの 

石橋 昌也

■人種差別的なヤジ

 6月4日、サッカー日本代表が2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の切符を手に入れました。後半ロスタイムでの本田圭佑選手の同点PKによる劇的な決定に、会場の埼玉スタジアムに駆けつけた方だけでなく、テレビやスポーツカフェなどで声をからして応援した方も歓喜にあふれたことかと思います。
本田拡大サッカーW杯アジア最終予選の豪州戦で同点のPKを決める本田=杉本康弘撮影


 サッカーは世界的に人気のあるスポーツですが、少し前に朝日新聞朝刊で気になる記事が掲載されました。「欧州サッカー 根深い差別/アフリカ系選手『うんざり』」(3月21日)という記事です。
 
 記事では、今年1月に、イタリアリーグの名門ACミランが練習試合に臨んだところ、対戦相手のサポーターからアフリカ系選手に対して人種差別的なヤジが投げかけられ、アフリカ系選手が反発して退場、そのまま試合は中止になったといいます。

 国と国が威信をかけて戦う国際試合や、熱狂的なサポーターを抱えるクラブ同士の試合では、相手をおとしめたり挑発したりといった行為がピッチ内外でみられ、問題となっています。今回のACミランの件も、アフリカ系選手に対するブーイングで、サルの鳴きまねをして選手の出自や肌の色をおとしめるものでした(この件については、ヨーロッパでサッカー取材をしている河野正樹記者が、イタリアの人種差別事情を「サッカーの人種差別」でリポートしています)。

 特に欧州では、アフリカやアジアからの移民問題と絡み、よく問題になります。安価な労働力として流入が続く移民に仕事を奪われた若者たちが、外国からやってきた選手に対して差別的な言動をとるともいいます。一種の不満のはけ口にされている格好です。

■FIFAの取り組みは

 サポーターだけではありません。選手の行動が問題となることもあります。2006年ドイツW杯決勝の衝撃的な場面は、ご記憶されている方もいるかと思います。フランス代表の英雄ジダン選手がイタリア選手に頭突きを食らわせ退場処分となり、チームもPK戦の末、優勝を逃しました。 当初、ジダン選手はイタリア選手による人種差別的な挑発発言に激高したとも伝えられました。ジダン選手はムスリムであるアルジェリア移民の子でした。その後、国際サッカー連盟(FIFA)による調査で、イタリア選手による人種差別的発言はなく、ジダン選手の家族に対する侮辱発言が原因だったとされました。結果として人種差別はなかったとされましたが、一連の大きな騒ぎは、欧州における人種・宗教差別問題の一端が表れたように思われました。

  FIFAもこういったサッカー界の差別問題を座視しているわけではありません。積極的に人種差別や貧困といった問題に取り組んでいます。人気サッカー選手による啓発運動や、国際大会の試合前に差別撤廃の宣言を行うなどし、差別行動がみられた選手やチームなどに対する罰則を厳しく定めています。しかしなかなかピッチ内外での騒動はやみそうにありません。

 こんなこともありました。3月、ギリシャの国内リーグで、年齢別の代表に選出されている選手がゴールを決め、サポーターの声援に応えた際の行動を問題視され、同国サッカー連盟が同選手に対して代表選手からの永久追放処分を科すとしました。 選手は、喜びを表現する際に、右手を斜め前に突き出したのですが、これがナチス式の敬礼とみなされたのです。本人は、ナチス式の敬礼だとは知らなかったとしていますが、ナチスドイツによるホロコーストの記憶が残る欧州では非常に重く見られる行為です。

■サッカーに愛と敬意を

  海外でプレーする日本選手も差別問題と無縁ではいられません。前掲の記事にも取り上げられていましたが、スロバキアでプレーした日本選手がサポーターやチームメートから差別を受け、退団せざるを得なくなったとブログで告白しました。 また、人種差別ではありませんが、東日本大震災後に、ベルギーリーグでプレーする日本代表GK川島永嗣選手に対し、相手サポーターが「フクシマ」と連呼して挑発することがありました。被災者に対する配慮を欠いた行為といえ、川島選手は猛烈に抗議しました。

 日本国内でもしばしば選手やサポーターらによる差別発言が見られます。外国選手に対する差別発言やヤジでチームに制裁金を科した例があります。また、イラン出身の外国人監督に対し、核兵器開発問題に絡めて不適当な横断幕をはったサポーターもいました。

 サッカーに限らず、おらがチーム、おらが代表を熱狂的に応援する気持ちはわかります。しかしサッカーの精神、スポーツの精神では、勝ち負けと同様にフェア精神も大事なものです。選手の技術とはまったく関係のない人種や政治/宗教に絡んでヤジったりおとしめたりする行為は、サッカーというスポーツを冒瀆(ぼうとく)するものと言えます。 勝った負けたは当然興味あるところですが、純粋に選手の妙技に感嘆し、どうしようもないミスには奮起を促すヤジを飛ばすというように、サッカーに愛と敬意をもって接していきたいと思います。

(石橋昌也)

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