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人権・校閲

こちら人権情報局

見え方は十人十色――色覚異常って何?

森本 類

■身近な友人から打ち明けられて

 「色覚異常、気づけず後悔」――。先月の朝日新聞東京本社版1面に、色覚異常についての記事が載りました。小学4年生を対象に全国で行われていた色覚検査が2003年度に中止。それによって色覚異常に気づく機会がなく、就職や進学を直前にあきらめる例があるという内容です。

 この記事をきっかけに、筆者の友人(27)が、自分にも色覚異常があることを打ち明けてくれました。中学校以来10年以上の付き合いがありますが、今までまったく気づかなかったので驚きました。

 友人は子どものころ、母親から色覚異常がある可能性を伝えられていたそうです。色で鮮度を見分けるお寿司屋さんのような職業には就けないかもしれない、と言われたことが強く印象に残っているといいます。また小学校のときに受けた検査について聞くと、ひとつもわからなかったことを「昨日のことのように覚えている」との答えが返ってきました。

 学校生活で困ったのは、黒板に赤のチョークを使われた時。冒頭の記事でも挙げられていた例です。ただ当時は、視力の低さが原因で見づらいのだと思っていたそうで、色覚異常とは結びつかなかったといいます。近づいて注意深く見れば読み取れたことも、そう思った理由かもしれません。色覚異常では必ずしも特定の色がまったくわからないのではなく、見るものが小さかったり、一瞬見ただけだったり、暗い場所だったりすると、間違えやすいようです。

 色覚異常がある人から朝日新聞へ寄せられた投書を読むと、「路線図の色分けがわからない」という声が複数ありました。この話を友人にすると、赤とピンク、紫と茶色などが隣り合っていると確かに見分けにくいが、「今まであまり意識しなかった」といいます。文字などほかの情報から判断していたからです。

 昨年の朝日新聞に、赤信号に×印が見える信号機が開発されたという記事がありました。記事に登場した赤色と黄色の区別が付きにくいという人は、明るく光っているのが右端なら赤信号というように、明るさと位置で判断していたそうです。色覚異常を持つ人は周囲の車の様子を見て判断することもあり、事故の危険もあると信号機を開発した教授は言います。

■生まれつきで、男性は20人に1人

 色覚異常について整理してみましょう。色覚異常には先天色覚異常と後天色覚異常があります。先天色覚異常は遺伝による生まれつきのもので、日本の男性の20人に1人、女性の500人に1人にみられます。女性に2本、男性に1本あるX染色体の異常が原因で、男性に比べて女性に少ないのは、1本でも正常なら色覚異常が表れないためです。後天色覚異常は白内障・緑内障・糖尿病網膜症など加齢・病気・けがなどに伴って起こるもの。見え方には個人差が大きいといいます。

 先月の記事で取り上げたのは、先天色覚異常のほうです。日本眼科学会ホームページなどによると、程度によって1色覚、2色覚、異常3色覚に分類され、以前は全色盲、色盲、色弱と呼ばれていました。また色によって1型色覚、2型色覚、3型色覚があり、順に赤、緑、青の感度に異常があることを指します。1色覚や3型色覚はまれといいます。

 学校で色覚検査が中止された背景には、「社会的な差別につながりかねない」「異常があっても生活に支障がない」という理由がありました。しかしその結果、就職や進学の際に初めて気づき、進路を断念せざるを得ないというケースが出てきてしまいました。

 色の識別が難しいと職務に支障が出る仕事も一部にはあります。そうした仕事に就く夢を突然あきらめることがないよう、検査を受ける機会がやはり必要ではないでしょうか。以前の検査は、クラスメートの目の前で受けることで「自分だけがわからない」といった恥ずかしさを感じさせてしまうなどの問題がありました。それらを一つ一つ解決していく議論や取り組みが求められます。

 「つくられた障害『色盲』」(高柳泰世、朝日新聞社)の中に、呼称に関する問題提起がありました。「色覚異常」や「色覚障害」には抵抗があり、「色覚特異性」「色覚特性」といった言葉に言い換えられないか提案しています。

 人間全体の機構からいえば本当に大したことはないのです。この問題に理解のある諸国のようにちょっとした特性あるいは個体差と考えて対応するのならば問題ないと思いますが、日本で障害と解釈して多くの制約が設けられてきたことは、呼称によることも大きく原因しているのではないでしょうか。

■見え方それぞれ、検査は一つの線引き

 通信社の中には、「色覚障害」を記事を書く際の用語集に載せているところもあります。一方で、生理的な構造の異常であることは確かであり、言い換えは問題のすりかえにしかならない、という意見もあります。筆者の友人は、「色覚特性」なら抵抗がないと言っていました。

 色覚異常のある人に限らず、私たちの見え方は一人ひとり違っていて、検査は一つの線引きに過ぎません。検査の種類にもよりますが、「異常」があるからといって「この人は~ができない」と決めつけることはできないのです。正しい知識を身につけ、「見え方の違いは個性の一つ」と受けとめるような社会にしていきたいものです。

(森本類)