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人権・校閲

こちら人権情報局

虹色の名札――性的少数者を理解し、支える取り組み

青山 絵美

■多様な人の受け入れへ積極的「支援宣言」

 9月、大阪市淀川区が「LGBT支援宣言」を行い、話題になりました(10/5朝日新聞「『性的少数者の人権守る』淀川区が宣言 米総領事も協力」。

 LGBTは、レズビアン(L、女性同性愛者)、ゲイ(G、男性同性愛者)、バイセクシュアル(B、両性愛者)、トランスジェンダー(T、心と体の性が一致しない人)の頭文字で、性的マイノリティーの総称として使われています。

 淀川区が出した宣言は、「LGBTに関する職員人権研修を行います!」など四つ。「正しい情報の発信」「活動への支援」「当事者の声、相談を聞く」という項目が並びます。

 宣言は榊正文・淀川区長の主導によるものだそうです。

 区長は、「多様な人を受け入れる街という印象が広まれば、淀川区で暮らしたい、働きたいという人が増える」(10/5朝日新聞)、(10/4毎日新聞「マイノリティーを支援し、その人権を守るのは行政の役割」)と話しています。

 淀川区に活動の拠点を置くLGBT支援NPO法人「虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀さんは「LGBTの問題のむずかしさは目に見えないこと。支援を呼びかけ、安心して相談できると示すことは重要」と宣言を評価します。

 東京都世田谷区神奈川県横須賀市埼玉県川越市など、性的マイノリティーの相談窓口を設けている自治体はすでにあります。

 その中で、支援することを積極的に「宣言」した点で、淀川区の取り組みは一歩進んだものであるといえるでしょう。

■「言えない」けど「いない」わけじゃない

 2012年の電通総研の調査によると、成人男女のうちLGBTの割合は5・2%。20人に1人以上という計算になります。しかし、その人数を実感している人は少ないのではないでしょうか。

 村木さんによると、現状、職場や学校などでカミングアウトするには、様々なリスクが存在するそうです。虹色ダイバーシティには、カミングアウト後にいじめられたり、配置転換されたりする事例が報告されています。リスクを考え、言いたくても言えないという人も多いそうです。

 しかし、「言えない」「言わない」だけで、「いない」わけではありません。

 虹色ダイバーシティが13年にウェブ上で実施したアンケートには、医療関連、営業職、事務職など、さまざまな職種の当事者からの回答がありました。どの職場にも、LGBT当事者がいる可能性はあるのです。

 村木さんは、「LGBTを揶揄(やゆ)するような冗談が出てくるような状況では、なかなかカミングアウトはできない。でもその冗談で傷ついてしまっている人はいる」。「逆に『そんなこと言うたらあかんで』とひとこと言ってくれる人がいるだけで、全然違う。分かってくれる人がいるということは非常に大きい」とLGBT当事者以外の95%の行動の重要性を強調します。

 すべてのLGBTがカミングアウトを望んでいるわけではありませんが、「言っても言わなくても安心して働ける環境づくり、言いたい人が言える環境づくりを呼びかけたい」と村木さんは話しています(7/26朝日新聞「(働く)性的少数者の思い:3 『職場にいるかも』念頭に 村木真紀さんに聞く」)。

■働きにくさ解消に向け、広がる企業の対策

 環境のせいで働きづらい人がいることの不利益に、対策を打つ企業も増えてきました。

 富士通は社員の行動規範に、人種などに加え性的指向について、差別やハラスメントを「許容してはなりません」と書いており、日本IBMは、結婚祝い金制度を同性間の事実婚の社員にも適用しているそうです(2012/11/27朝日新聞「多様な性に優しい職場へ 外資系、社内支援広がる」、9/9朝日新聞「LGBT働きやすく 会社説明会・研修・規定、徐々に」)。

 また、米系金融機関のゴールドマン・サックスは、LGBTの学生を対象にした会社説明会を開いています。12年11月27日付朝日新聞は、「慈善事業ではない」「優秀な人材を獲得することで企業として強くなる」ため、という企業の声を伝えています。

 「LGBT支援宣言」を出した淀川区は、9月、宣言の通りに、職員を対象とした研修を始めました。研修では、LGBTに関する基礎知識や、社会にどんな問題があるか、職場や行政でどんな対応ができるかなどについて、学んだそうです。今年度中の淀川区全職員への実施が予定されています。

 研修を受けた職員からは、「身近な存在なのだということがよく分かった」「考え方が変わった」「勉強不足を自覚した。より積極的な理解者になりたいと思った」といった反応があったといいます。 

名札拡大虹のマークが付けられた名札。淀川区の全職員が身につけている=淀川区役所提供
 淀川区では現在、全職員が、LGBTのアライ(Ally=同盟者、当事者以外のLGBT支援者)であることを示す虹のマークの付いた名札をつけています。「窓口を訪れた人に、LGBTにフレンドリーな町だと示したい。LGBTであることは、会って目で見て分かるものではないので、誰にでも分かるかたちで、支援の気持ちを表したかった」。名札に虹のマークをつけることを提案した白方昌秀・政策企画課長代理は話します。

 淀川区のLGBT支援施策を担当する白方さんは、担当になってからLGBTに関する勉強を始めたそうです。いまは「行政職員が知らないですまない問題」だと考えています。「区としてできることは限られるが、まず当事者から意見を聞き、一緒になって必要な取り組みを考えたい」。まずは淀川区から、そして全国へと広がることを期待しています。

 自分の職場に、学校に、友人に、悩んでいる人がいるかもしれません。そういう意味では誰もが当事者だと言えるのではないでしょうか。見えないから、見たことがないからと無関心になるのではなく、見えないけれどと想像して、自分が何をすべきかを考えたいと思います。

(青山絵美)