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人権・校閲

こちら人権情報局

世界のどこかで人権侵害

石橋 昌也

■グローバル化、でも製品の来歴には薄い関心

 自分たちが日常的に使用したり食べたりしているものが、もしかしたら世界のどこかの人の人権を侵害しているかもしれない――。そんなことを改めて気づかされる記事がありました。「日本の革靴 川濁る原料の街 バングラデシュ」(10月21日付朝刊)、「日本の革靴、汚染の源 輸出国バングラ、河川汚濁深刻」(同)です。

バングラ拡大皮革なめし工場の中では、労働者たちが素手で化学物質を扱っている=ダッカ市ハザリバーグ、小暮哲夫撮影
 記事によると、バングラデシュの首都ダッカ南部のハザリバーグ地区では、革靴の原料になる皮革のなめし工場が集まり、日本に輸出される革靴の原料のほとんどがつくられているそうです。しかし、工場で使われる有毒な化学物質が近くの川に大量に流され、NGOの調べによると、工場労働者の皮膚炎や胃炎、ぜんそくの罹患(りかん)率は国内平均を大幅に上回っているそうです。

 こういった問題点に、日本の大手靴小売りチェーンなどは関心が薄いといいます。取材に対し、どの現地工場と取引しているかや原料の調達先について「把握していない」としています。

 他の業種でも起こりうる問題です。一部の地域・企業では、工場の安全検査を始めたりしているそうですが、日本企業は「どうやって製品ができたかというプロセスに対する意識に欠けている」(日本総合研究所)といいます。

 グローバル化が叫ばれて久しいですが、私たちは、日常的に手にする製品の来歴に思いをいたすことはあまりありません。国際企業は、安い労賃を求めて海外に工場を建設します。経営効率を追求するあまり、現地で劣悪な環境におしこめてしまうことがあります。そして私たちは、海の向こうのことにあまり関心を払いません。

■途上国の犠牲で成り立った「安さ」、どう是正

 モノカルチャーという言葉があります。単一栽培とも訳されますが、起源は植民地支配時代からでしょうか。当時、植民地では、宗主国にとって都合のよい、ひとつの農作物を大量栽培させられました。その名残はいまも世界各地で見られますが、モノカルチャーの問題点は、その国の経済が一次産品(原材料)の輸出に依存しているため、国際的な値崩れに影響されやすかったり、買いたたかれたりすることです。また、単一であるために、病害を被った時に被害が甚大になりやすいという面もあります。

 私たちが国内で安く買えるバナナやコーヒーなどは、旧植民地である開発途上国で生産されます。私たちが安価で入手できるのは、物価水準が異なるので一概には言えませんが、それだけ生産国で経費が抑えられているからです。

 安さの裏に、生産者に正当な報酬が支払われていなかったり、生産性を追求するあまり生活環境が劣悪になってしまったりということはないでしょうか。まったくないとは言えないのは、前述のバングラデシュの事例を見ればわかります。途上国の犠牲に上に成り立った安さといってもいいでしょう。こういった世界規模の経済の中では、先進国と途上国間の格差はなかなか是正されません。

■フェアトレードで私たちの意識を変えられるか

 そんな中で、先進国では「フェアトレード」(公正な貿易)という取り組みがなされています。日本でも近年注目されていますが、途上国の生産者の労力や品質に見合った公正な価格で取引するという取り組みです。商品の包装に、「フェアトレード」と明記されているのを目にしたことがあるかもしれません。通常の商品より割高ですが、フェアトレード商品を購入することが、生産国の劣悪な生活環境や労働条件の改善につながります。

 このフェアトレードの取り組みは、社会貢献活動として一部の大企業でも始まっています。私たちも企業も、目の前のことだけでなく、遠く離れた人たちの権利や生命に、もっと意識を向けなければならないと思います。

(石橋昌也)