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人権・校閲

こつこつコウエツ

校閲って、こんな仕事 ~コウエツ座談会<前編>~

 今回の「こつこつコウエツ」は、ちょっと趣向を変えてみました。
 題して「コウエツ座談会」。
 実際にどんな人物がどんな風に仕事をしているのかということを、5人の校閲記者がわいわいがやがやとご紹介します。

◆ すべての経験が役に立つ

座談会1拡大普段一緒に仕事をしている仲間ですが、座談会で意外な発見も……
 (44歳男性) とりあえず、僕が司会やるね。まず、校閲記者になった理由は?
 (58歳男性) 別の新聞社で営業の仕事をしていた。そこの入社研修で校閲の仕事を初めて知って、説明を聞いているうちに自分がやりたい仕事だと思ったんだよね。外食するときも「鍋焼きうどん」の「き」の字が入ってないと気になるような子どもだったから(笑)。そうして2年後に朝日の入社試験を受けた。
 (33歳女性) 私は活字メディアが好きで、字を扱う職場で働きたかったんです。大学の先生から「現場に出ろ」と言われて取材記者として入社しました。最初は広島。そのあと各地を異動して、気付いたら校閲に(笑)。現場に行かないのに、記事の間違いの指摘をどうやってやってるんだろうって不思議だったんですが、いざやってみると大変だった。知識は足りないけど、取材現場を知ってるという強みがあるので、これを生かしていこうと思いました。いい紙面を作ろうという最終目標はどの部署の人も同じだなあ、ってことを実感してます。
  校閲の職場は、校閲専門記者として入社した人もいれば、他の部署から来た人もたくさんいる。印刷の輪転機を操作していた人とかもいるよね。話を聞いたら結構勉強になる。
  すべての経験が役に立つ仕事ですよね。この場所に行った、この人に会った、この本を読んだ……あらゆることが仕事に生かせると思うと生活が楽しくなります。
  はやりものも知ってなきゃいけない。本もテレビも見てないと。何も知らないじゃ仕事にならないし。逆に何を見てても「仕事のためだ」と言えるよね(笑)。
 (35歳女性) 私は出版社から転職してきました。編集の仕事が好きで、森羅万象を扱う新聞に、より魅力を感じてました。
 (27歳男性) 僕は大学の専攻が言語学だったので、言葉を相手にする仕事をしたいと思ってました。新聞社については取材記者の仕事しか知らなかったんですが、説明会でちらっと「校閲」の文字を見て、説明はなかったですけど、気になりました。
  ちらっと見た「校閲」の文字が脳裏に焼き付くのは、もうその片鱗(へんりん)が出てるよね(笑)。若者の新聞離れが進んでるけど、なぜ新聞社に?
  点検する仕事がしたいと。新聞に限らず。中学までサッカーをしてたんですが、ディフェンスでした。攻撃より守るのが好きで。校閲はゴールキーパーに例えることができると思います。自分が見逃すと失点する(紙面に誤字や、不適切な表現が載ってしまう)。縁の下の力持ち、というところが自分の性格に合っていると。就活で出版社の編集部門を訪ねる機会があって、校閲の人の話を聞くことができて、ここならやっていけると思いました。
  出版と新聞の校閲はかなり違うと思うけど、新聞社に来たわけは?
 M 実は相当迷いました(笑)。新聞社は基本的に新聞がメーンですけど、出版社はハードカバーの本とか文庫本、雑誌、絵本とか色々ある。新聞だけの方が自分の性格には向いてるかなと思いました。
  新聞社と出版社だと、転勤の有無も大きな違いだけど、引っ越しを伴う異動については考えなかった?
  正直深く考えなかったです。勤務地がどこでも、仕事できたらと。(朝日の)何回かの面接で聞かれて、「どこでもいいです」と言い続けてきたんですが、「本当にいいのか?」と疑われたこともあった(笑)。

◆ 大急ぎで「味見」作業

  校閲って何をやっているの?と聞かれたらどう説明する?
  誤字、脱字はもちろん、今は事実の間違いも指摘することが重要ですよね。「当時の首相吉田茂が……」とあれば、本当にその時点の首相は吉田茂か、とか。「閲(けみ)する」を一般の人に理解してもらうのは難しい。人間はミスをするから、それを補完する仕事だと思ってる。時には知恵袋というか軍師のような存在となるような。
  私は、新聞をお弁当箱に例えたら、味見する係だと説明してます。取材記者が素材を持ってきて、デスクが料理する。編集者が味付けして、我々が味見。そして出す出さないを決める。もっとおいしく加工できるのに残り時間がない……ということも、たまにあるけど。最終的に朝日新聞という弁当箱を出すときに、食中毒にさせては絶対にいけないですよね。制約がある中で、なんとか最高のものを提供したいと。
  私が出版社から新聞社に来て一番違ったのは、締め切り時間がタイトなこと。出版だと日付単位だけど、新聞だと分単位。一刻を争う。
  時間との戦いで、バタバタしてるイメージが一般の人にはないかもしれないよね。テレビ局の報道スタジオだと、ニュースを読んでる後ろでバタバタしてるのが見えるけど、新聞はゆったりしていると思われてる。
  実際はバタバタ何度も走ったりしてるよね。
  知らない仕事は何度説明しても分かってもらいにくいですよね。例えとして、4コマ漫画の不備を指摘したら急きょ差し替えになった、とか言うと分かってもらいやすい。
  (コマによって)着ているものが違う、とか。
  サッカー選手のピアスが4コマ目でなくなっていますよ、とか。

◆ 活版印刷の時代からコンピューター時代に

T1)「る」の活字アップ拡大ひらがな「る」の活字。左右が逆になっています
  活版印刷の頃を知っている人は?
  私ぐらい。活版の文化をなくすのはもったいなかった。クーベルタン、じゃなくてグーテンベルクはエライ(笑)。
  それオリンピックの創始者(笑)。
  多くの人がコミュニケーションをとって連携してたのがよかった。今はよその部署の人とあまり話さなくても仕事が済んじゃう。昔はそうではなかった。
  昔は、編集局の人と職人さんが連絡を密にとって協力しないと新聞が作れなかったんですよね。
  こんなことがあった。記事の中に「○○社長」とあったんだけど、実は「副社長」が正しくて、「副」の字の活字を職人さんに拾ってもらって。これでよし、やれやれ、と思ってたら、間違って「副」じゃなく「福」になってた。活字は字が裏返ってるからこういう間違いがあったんだよね。
  色々な人の手を経るのは良い点もあれば悪い点もあると思うんです。昔は活字の職人を含めて多くの人が見てたから、大きなミスは少なかった。でも、伝言ゲームじゃないけど、多くの人が絡むからこそのミスもあった。今は、記者が書いた記事がそのままの形でコンピューターに取り込まれる時代。だから、連絡ミスによる誤植は少なくなったけど、「誰か読んでいなかったのか?」と思うような間違いが出てしまうリスクがありますよね。

◆ 優先順位をつけて作業

  この前、写真が裏焼きだった、という訂正が出ました。デジタルカメラだったら絶対起きない間違いだけど、フィルムで撮った過去の写真を再利用するときに裏表を間違えたんですよね。
  昔は必ず背広のボタンの付き方などをチェックしてたよ。
  そんなこと考えたこともなかった。
  そのときどきで起こりやすいミスは何かを考えて、優先順位をつけて調べないといけないですね。
  時間がない中で、日付だけは、氏名だけは確認しなきゃ、とか。

 ※<後編>は1月22日(水)に掲載予定です。