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人権・校閲

こちら人権情報局

「性別欄」って必要ですか?

青山 絵美

■フェイスブック、50種以上の選択可能に

 フェイスブックの英語版で「男性」「女性」以外の性別が選択できるようになりました(2/14CNN)。

 用意された性別は、「FTM(身体的には女性として生まれたが性自認は男性)」「Gender Questioning(自己の性について疑問を持っている人)」「Agender(どちらの性でもないと感じている人)」など50種類以上。

 性別の選択で、「female(女性)」「male(男性)」の下の「custom」を選ぶと、枠が現れ、その他の性を選択できるようになります。「custom」には他に、「Transsexual(性転換者)」「Androgyne(両性具有)」、「すべての性を包括する」と訳すことができる「Pangender」といったものもあります。

 フェイスブックは、自社のダイバーシティー(多様性)活動について紹介するページに「フェイスブックにやってくる人たちに、安心して本当の自分でいてもらうため」と目的について書いています。

 選択した性別の公開範囲は、①自身だけ②友達だけ③友達の友達まで④制限せず公開、などから選ぶことができます。

 また、自身を指すときに使ってほしい代名詞の指定もできるようになりました。女性を表す「she」、男性を表す「he」だけでなく、性別を問わない「they」の選択が可能です。

 LGBT(レズビアン=女性同性愛者、ゲイ=男性同性愛者、バイセクシュアル=両性愛者、トランスジェンダー=心と体の性が一致しない人、の頭文字)を支援する団体と協力して用意したという、五十数種類の選択肢の中には、概念として重なって使用されることが多いものもあります。

 LGBT支援NPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)の村木真紀代表は、性自認は多様であり、「『LGBT』という表現にも自分は含まれないと感じ、傷ついている性的マイノリティーの人もいる」と、選択肢が多くあることの重要性を話します。

パレード拡大4月27日に東京・代々木公園周辺で行われたパレードでゴールする参加者ら。パレードは、性的マイノリティーへの理解を求めるイベントの一貫で、約3千人が参加した =青山絵美撮影

 虹色ダイバーシティが2013年に性的マイノリティー当事者を対象におこなったアンケートによると、自身が「LGBT」の表現にくくられない性や性的指向であると考えている人は、1124人中100人いたそうです。

 現在この機能を使えるのは、言語の設定を「米国英語」にしている人だけですが、「将来的に対応範囲を広げていく考えだ」とAFP通信は報じています(2/14 AFP)。

■履歴書が就職活動のハードルにも

 「男性か女性かを聞かれる」ということは、当たり前のように日々行われています。アンケートに答えようと思えば性別欄がありますし、会員などになる際の申込書でも、どちらかにマルをつけます。

 性自認と身体の間に違和感のない人にとっては、ほとんど意識しないことかもしれません。しかし、村木さんは「はっきり男女のどちらかと言えない人の中には、性別の選択が必須とされることで、そのサービスが使えない人もいる」と話します。

 お金や生命に関わるような、生きるために必要なサービスでも、性別欄があることで使えないという人もいるといいます。「性的マイノリティーがそのようなサービスからはじかれている状態は、人権上も問題といえるのではないか。せめて、『男性』『女性』『その他』くらいの選択肢があれば、サービスを使えない人も減ると思う」

 性別欄は、就職活動の際のハードルにもなっています(3/19WEBRONZA2/13WEBRONZA)。

 一般的な書式の履歴書には必ず性別欄がありますし、多くの企業のエントリーシートにも設けられています。性自認と戸籍上の性が異なる場合、①戸籍上の性と性自認通りの性のどちらを記入するのか②それを面接で説明するのか③どのような服装で面接にのぞむのかなど、多くの悩みの種になります。また、そもそも男性・女性の2択に自分が当てはまらないと感じている人にとっては、その2択を迫られること自体も大きな苦痛です。

 虹色ダイバーシティには、就職活動を前に、戸籍上の性を変更するため、性別変更の手術を受けた学生の話も報告されています。「手術自体を否定するものではないが、就職活動のためにやらなくてはと思ってしまう環境は間違っていると思う。どう生きていくかに関する問題で、一生にかかわる」と村木さんは重く見ています。

 無料でダウンロードできる性別欄のない履歴書もありますが、会社で決められた様式がある場合はそれも使用できず、広がりは一部にとどまります。

 もちろん、履歴書に性別欄がなくなったからといって全ての問題が解決するわけではありません。面接で性自認についてどう話すか、実際に働く環境でLGBTが理解されているかどうかなど、重要なことは多くあります。

■「企業にとっても損失」、多様性への理解を

 しかし、優秀な人材が、就職をあきらめたり、実力を発揮できなかったりすることは、個人にとっても会社にとっても有益であるとは言えません。

 「人事の担当者にLGBTに関する知識がないことは多く、問題だと思う。男性・女性で分けられていることで、そこに入れない人がいることは、企業にとっても損失なのだと思ってほしい」。日本での就職をあきらめ、性別に縛られない海外に活躍の場を求める人も多いと、村木さんは話します。

 企業にできる対策としては、①LGBTに理解のある会社であることを示す②履歴書の項目から性別を外すか、男女の他に「その他」を設ける③男性・女性で形式が分かれてしまいがちなスーツでなく、カジュアルな服装での面接にする、などが考えられるそうです。

 女性、男性の2択が当たり前になっていることは、社会が性の多様性に気付いていないことの証しなのかもしれません。フェイスブックの50以上の選択肢は、自分を表す重要な選択肢であると同時に、「女性と男性の2種類しかいない」という間違った固定観念をやぶり、多様性に気付かせるものでもあります。


(青山絵美)