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人権・校閲

こちら人権情報局

都議会ヤジ問題に学ぶ

森本 類

 東京都議会における女性都議へのヤジが大きく取り上げられました。晩婚化や晩産化の対策について質問する塩村文夏都議(みんな)が「早く結婚したほうがいいんじゃないか」など女性蔑視のヤジを受けた問題です。5日後に鈴木章浩都議(自民)が名乗り出て塩村都議に謝罪し、会派を離脱しましたが、「自分が産んでから」などほかのヤジを発言した都議の特定を求める決議案は否決され、都議会は閉会しました。

セクハラヤジ拡大塩村文夏都議(左)に謝罪する鈴木章浩都議=6月23日午後2時31分、都庁、福留庸友撮影

 議員1人の会派離脱で幕引きが図られたことには反発の声が少なくありません。毎日新聞への投書には、「自民党都議全員の辞職に及ぶ重さを持つ」との厳しい声もありました(7月5日付)。

 今回のコラムでは、関連記事を通して改めて考えてみたいと思います。具体的に、何が問題だったのか。教訓をどのように生かしていくべきなのか。

■「結婚・出産は個人の自由」

 多くの指摘に共通するのは、結婚や出産をするかしないかは個人の自由であり、他人から強制されるものではない、ということです。鈴木都議は「早く結婚して欲しいという気持ちで言った」と弁明しましたが、押しつけにしか聞こえません。

 政治家の無策を批判するのはヘルスケアカウンセラーの石井苗子さんです。「晩婚化や未婚化に、ただ結婚を勧めるほかにアイデアがないのでは、政治家とはいえません。おのおのが頑張ってくださいでは、政策はいらないでしょう」(6月27日付読売新聞)。滋賀県の嘉田由紀子知事(当時)も「安倍政権は女性参画を打ち出しているが、今、安心して女性に子どもを生んでくださいと言えるような社会制度になっていない。自民党内でもこれまでの家族、女性政策を反省する必要があるのでは」(6月25日付読売新聞)といいます。

 昨年の「女性手帳」が象徴的でした。森雅子少子化相の下の有識者会議で考え出されたこの手帳は、高齢になると妊娠しにくくなることなど妊娠・出産についての知識を広めることを目的に、若い女性を中心に配られることが検討されていました。しかし「個人の生き方への介入につながりかねない」などの批判を受け、撤回に追い込まれたのです。「子どもを増やす」という目的が先行して、「女性が子どもを産みやすい環境をつくる」というプロセスが抜け落ちてしまっている感が否めません。

 ヤジ問題を別の視点から考える人もいます。労働ジャーナリストの金子雅臣さんは、都議会のヤジは「言った人と言われた人の力関係」にも着目すべきだといいます。都議会のヤジは「都議会自民党次世代のホープと目されるベテランでもある」鈴木議員が、当選1回で初めて質問に立った塩村議員に発したもの。「『少し言い過ぎたかもしれないが、悪意はないヤジ』という受け止め方と『圧倒的な力関係のある議員の間で、しかも公的な場面で行われた侮辱的な言動』という受け止め方には大きな隔たりが出てきます」(7月8日付読売新聞

■女性の政治参加、なお「後進国」

 ヤジだけを反省しても根本的な解決にならない、というのは保坂展人・東京都世田谷区長です。

 「日常の感覚や価値観、そして本音がヤジという形で表出しているのだとしたら、ヤジだけを反省しても何も改まらないということになります。今後しばらくは、『早く結婚しろ』『産めないのか』という言葉だけは議場で禁句になるでしょうが、そう思っても、口に出さなければいいのだというのでは反省にも何にもなりません」(朝日新聞デジタル「&」の「太陽のまちから」

 ではこうした意識を変えていくには、具体的にどうすればよいのでしょうか。

 「男女が等しく参加して議論し結論を出すという本来の姿にするために、女性議員の数を大幅に増やす必要がある」。毎日新聞は7月5日付の社説で、男性議員が圧倒的に多い都議会の議員構成を問題に挙げます。内閣府の「男女共同参画会議」議員でもある21世紀職業財団会長の岩田喜美枝さんも「そもそも、女性議員がもっと多ければ、こうしたヤジは出なかったとも思う」といいます(6月30日付読売新聞)。

 昨年このコーナーでも取り上げた通り(「進まぬ女性の社会進出、メディアの影響は?」)、日本は国政でも男性比率が高く、女性の政治参加においては「後進国」といっても過言ではありません。

 私たち有権者にできるのは、今回の問題を次の選挙まで忘れず、議員の言動をしっかり見張っていくこと。そして許してはいけない言動があれば、さまざまな形で「ノー」を突きつけていくこと。当たり前かもしれませんが、そんなことを改めて考えさせられました。

■人のふり見て、我がふり直せ

 セクハラは、異性に対するものとは限りません。

 今月、改正雇用機会均等法が施行され、職場でのセクハラは同性に対するものも含むことが指針で明示されました。交際相手がいるかいないか、婚姻歴があるかないかをしつこく聞いたり、性的な恥ずかしさを感じさせたりすることは、同性間でもセクハラになります。

 今回の問題を機に、改めて自分の言動を振り返るのもいいかもしれません。

 都議会のヤジ問題は、学校でも取り上げられました。人権をテーマにした道徳の授業を受けた生徒は次のようにいいます。「自分も同じことをしていないかと気になった。相手が傷つかないかを考えて今後は発言したい」(7月2日付読売新聞

 セクハラに限らず、あらゆる人権問題に通ずる考え方ではないでしょうか。

(森本類)