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文字

観字紀行

神奈川県逗子市~前編~(初回限定無料)

金子 聡

 「漢字」。それは、ひらがな、カタカナとは比べものにならないほど、種類も多く、人名や地名で、いつも身近にあります。でも、よーく注意して見渡すと、いろいろな発見があります。

 「地名」に使われる漢字にスポットをあてるだけでも、珍現象、珍地名がいくつも見つかります。そこで地名をたよりに、校閲記者が全国各地をネタと体力の続くかぎり、訪ね歩き、現場から報告します。

 初回は、神奈川県逗子(ずし)市におじゃましました。東京から電車でおよそ1時間。三浦半島のつけ根に位置し、隣の鎌倉市や葉山町などとともに、湘南の一角として知られています。

 逗子といえばやはり海。昔なら「太陽の季節」、今ならキマグレン(京浜急行新逗子駅の列車到着メロディーに採用されました)ですが、校閲記者としては「逗」の部首「しんにょう(しんにゅう)」に注目しないわけにはいきません。

 その理由は、この写真を見てもらえれば分かると思います。

 左の「逗子市沼間」はしんにょうの左上の点が二つ、右の「東逗子商栄会」は一つです。

 ここで、少しうんちくを。

 二つの字の違いは、伝統的な印刷文字では「2点」のしんにょうが使われてきたのに対し、パソコンのフォントでは「1点」のしんにょうが標準だったことによるものです。

 「逗」に限らず、昔はしんにょうを含む字は2点で印刷されていましたが、手書きのときはふつう1点で書かれました。

 そして戦後、国が定めた当用漢字や、それを引き継いだ常用漢字ではみんなが使いやすいように、手書きの省略した形が標準とされ、パソコンでも採用されました。

 日本工業規格(JIS)で(あまり使われない「第2水準」の字は2点ですが)、常用漢字を含め、よく使われる字を集めた「第1水準」の字は1点とされたのでした。「逗」は「常用漢字ではないが第1水準」の字です。

 でも、出版をはじめとした印刷業界では2点しんにょうが使われ続け、2000年に常用漢字以外の字について、国が「表外漢字字体表」で印刷標準字体を定めた際、2点しんにょうが採用されたのです。これを受けてJIS規格も変更され、「常用漢字ではないが第1水準」の字はおおむね2点になりました。

 ちょっとややこしくなってしまいました。国語政策や字体の詳しい話は、ほかのコーナーにゆずって、実際に、逗子の町のしんにょうはどうなっているのか、調べに行きましょう。