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文字

観字紀行

奈良県葛城市 ~「葛」後編~

永川 佳幸

 ところで上の写真、見慣れない文字があることにお気づきでしょうか?

 「當」という字です。これは常用漢字「当」の旧字。合併前の旧当麻町は、正式には旧字で「當麻町」と書いていたので、それを踏襲しているようです。

 庁舎からほど近い場所にある当麻寺も、「當麻」という表記をしています。

 当麻寺。本堂・曼荼羅堂(まんだらどう)は国宝に指定されています。

 写真の左側にあるのは、奈良時代に建てられた国宝の三重塔。

 このほかにも、重要文化財などを数多く持つ伝統ある寺です。

 しかし、当麻寺周辺を散策すると、けっこうバラついていたりして……。

 

 

 さて、現在、改定作業が進む常用漢字表では、「」が新しく盛り込まれることになりました。ここでもやはり、略字体の「」は手書き上の文字という位置づけです。答申案では「個人固有の字体に固執し、その使用を他人にまで過度に要求するのは好ましくない」との考え方が示されており、葛城市への逆風は強まるばかりです。

 ちなみに朝日新聞では、固有名詞であっても、異体字・旧字はできるだけ使いません。ただ、葛城からは強い要望があるため、紙面上は「城市」と略字体を使っています。

 葛城市は、「このほうが便利」と信じて略字体の「」を採用した一方、地域の伝統に従い、今ではほとんど使われない旧字の「當」を使用するという「不思議」なまちでした。

 漢字一つとってみても、さまざまな事情があるんですね。これからも、そんな校閲記者垂涎(すいぜん)の土地を求めていきます。

(おわり)

                      (永川佳幸)

※次回からは「山車(だし)」を求めて歩きます。