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文字

文字@デジタル

字体、変えました(前編)

比留間 直和

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 新しい常用漢字表が昨年11月30日に内閣告示されてから、1カ月あまりが経ちました。
 
 朝日新聞として今回の改定にどう対応するかについては、12月1日付朝刊の特集ページ=右の写真=でお伝えしました。
 
 主なポイントは、(1)国が追加した196字のうち読みが難しいものは引き続き「表外」扱いし、読み仮名を付けたり仮名書きにしたりする (2)以前からの常用漢字でも、読みが難しい「賜 シ」「嫡 チャク」「劾 ガイ」などは 1 と同様、読み仮名付きにする (3)今回国が追加しなかった「釘 くぎ」「絆 きずな」「炒 いた(める)」「経 た(つ)」など、なじみ深い表外漢字・表外音訓を新たに読み仮名なしで使うことにする――といったものです。(詳細はこのほど最新版が出た「朝日新聞の用語の手引」〈発行=朝日新聞出版、本体1700円〉をご覧ください)
 
 12月1日の特集ページでは主に字種・音訓に焦点をあてていたため、追加漢字の字体には特に触れませんでしたが、紙面で使う字体を変更したものがあります。過去の文字@デジタルでも個別に“予告”していた「痩」「麺」「惧」などです。
 
 
 
■4年足らずで、再び略字に
 
 
 朝日新聞では戦後、当用漢字(のち常用漢字)の略し方を表外漢字にも広げて「鴎」「涜」などの略字を使っていましたが、2000年12月に国語審議会(当時)が「表外漢字字体表」を答申したのを受け、2007年1月15日付から「鷗」「瀆」などの伝統的な字体に変更しました。

 今回の常用漢字表改定で追加された漢字は、基本的に「表外漢字字体表」の示す印刷標準字体が採用されましたが、「曽」「痩」「麺」の3字に限っては、印刷標準字体の「曾」「瘦」「麵」ではなく簡易慣用字体(略字体)が採用されました。

 朝日新聞では、以前の略字主義の時代は3字とも略字の「曽」「痩」「麺」を使っていましたが、このうち「痩」「麺」は、07年の字体変更以降、原則として印刷標準字体の「瘦」「麵」を使うことにしていました。この2字は、今回の常用漢字改定でまた略字の「痩」「麺」に戻すことになったわけです。

 「『改定常用漢字表』解剖 11」(2010年10月18日付)でも述べたように、日常生活でなじみのある字体を常用漢字に採用したのは適切だったと思います。ただ、もし表外漢字字体表より前に常用漢字表改定が行われていれば、こう変えたり戻したりしなくて済んだのに……と思ってしまうのも確かです。

 なお「曽」は、朝日新聞では一般における定着度を考慮して略字のままにしていたため、今回字体方針に変更はありません。

 

 

 「痩/瘦」「麺/麵」の各字体はUnicodeにそれぞれ独立したコードポイントをもっているため、パソコンでは同じ文書の中で字体を使い分けることができます。朝日新聞の新聞製作システムでも数年前からUnicodeに沿って両方の字体を搭載しており、そのため今回の字体変更では文字イメージをいじるのではなく、「どの字体を優先的に使うか」という運用ルールを変えるかたちをとりました。
 
 
 
■「惧」は下にのびました
 
 
 「痩」「麺」と異なり、紙面で使うフォントの文字イメージを取り換えた字もあります。その代表が「危惧」の「惧」です。

 「『改定常用漢字表』解剖 4」(2010年7月5日付)でたっぷり述べましたのでここでは詳しい説明は省きますが、新たに常用漢字表に追加された「惧」の字体は、つくりの「具」の縦棒が下にのびて横棒に接した形です。前から常用漢字である「具」が「切れた形」つまり「目、一、ハ」であるのとは異なっています。

 国語審答申「表外漢字字体表」では、この「惧」や倶楽部の「倶」については、「接した形」と「切れた形」は「デザイン差」、つまりどちらでもかまわないことになっていました。そのため朝日新聞でも「惧」「倶」は07年の字体変更の際にも変えず、「切れた形」のままにしていたのですが、今回の常用漢字表改定で「惧」のつくりは「接した形」でなければならなくなりました。(一般のパソコンフォントの「惧」はJIS漢字の例示字体にならい「接した形」なので全く問題ありません)

 そこで、朝日新聞でも「惧」の文字イメージを「切れた形」から「接した形」に変えました。

 このイメージ変更の作業、実はシステム管理上の都合で新常用漢字表の内閣告示(昨年11月30日)より前の10月17日に行いました。翌日以降の紙面では新しい字体になっていたのですが、もしかしてお気づきだったでしょうか?

 

    《変更前》
  

 

    《変更後》
 

 

 なお、今回常用漢字表に入らなかった倶楽部の「倶」は、表外漢字字体表の「どちらの形でも構わない」という規定が生きていることもあり、紙面の字体は「切れた形」のまま変えていません。

    (2011年1月8日付)

 

(つづく)

(比留間直和)