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新顔はここに ― 常用漢字改定と送り仮名6

比留間 直和

 前回までの3回にわたり、新たに常用漢字表に追加された「類い」「籠もる」「淫ら」について、「送り仮名の付け方」(1973年内閣告示)との整合性を見てきました。もともと、社内用のハンドブックの改訂作業をしながら疑問に感じたのが発端でした。

 「類い」「籠もる」がどの通則に当てはまるのかは、文化庁の見解も聞いてとりあえず解決しました。一方、「淫ら」は前回述べたように、本来ならば昨年11月の「送り仮名の付け方」一部改正(シリーズ2回目を参照)の際に記述を追加する必要があったと思われます。

 今回はシリーズのまとめとして、上記3語を含め、常用漢字表に新たに入った読みが「送り仮名の付け方」のどの通則に分類されるか、筆者が手元で検討した結果を示しておきたいと思います。
 
 
         ◇
 
 
 ここでは、「新規追加字種の読み」と「以前からの常用漢字に今回追加された読み」(以下、合わせて新常用漢字と呼びます)のうち、

訓読み(平仮名で読みが示されたもの)で、仮名2文字以上のもの。音読みや、読みが1字だけのものは、そもそも送り仮名を考える必要がないため。
「都道府県名用」として掲げられた訓読み(茨、岡、埼、栃)、音韻変化や省略によるもの(「爪 つめ」に対する「爪 つま」、「丼 どんぶり」に対する「丼 どん」)は除く。

――という条件に当てはまるものを対象に、通則1~4のどれに当たるか独自に検討して水色またはピンクで示しました(「送り仮名の付け方」にはこの部分は書かれていません)。

 一方、赤字は昨年11月の一部改正で挿入された字句で、「関わる」と「全て」がそれぞれ通則1の例外(3)と通則3の例外(1)の対象であることが確定しています。

 なお、通則5(副詞・連体詞・接続詞)、通則6と7(複合の語)は今回は特に必要が無いので割愛します。

 

 ※常用漢字表に採用された字体のうち、JIS2004で第3水準に追加された「」と「」については、第1・第2水準内にある「」と「」で代用しました。

 通則1
  本則 活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は,活用語尾を送る。
 〔例〕憤 承 書 実 催
    生きる 陥れる 考える 助ける
    荒 潔 賢 濃
    主
《新常用漢字で当てはまるもの》
 育 潰 嗅 乞 混 塞 斬 叱 呪 臭 蹴 拭 拭 逝 煎 羨 狙 遡 創 貼 嘲 妬 貪 匂 罵 剥 描 蔑 放 湧 弄
 宛てる 委ねる 畏れる 萎える 応える 潰れる 鑑みる 詣でる 腫れる 憧れる 伸べる 振れる 痩せる 捉える 綻びる 諦める 溺れる 賭ける 剥げる 癒える 絡める
 拙
  例外 (1) 語幹が「し」で終わる形容詞は,「し」から送る。
 〔例〕著い 惜い 悔い 恋い 珍
《新常用漢字で当てはまるもの》
 妖
  (2) 活用語尾の前に「か」,「やか」,「らか」を含む形容動詞は,その音節から送る。
 〔例〕暖だ 細だ 静
    穏やかだ 健やかだ 和やか
    明らかだ 平らかだ 滑らかだ 柔らか
《新常用漢字で当てはまるもの》
 僅
 爽やか
  (3) 次の語は,次に示すように送る。
 明む 味う 哀む 慈む 教る 脅す(おどかす) 脅す(おびやかす)  食う 異る 逆う 捕る 群る 和ぐ 揺
 明い 危い 危い 大い 少い 小い 冷い 平い 新だ 同だ 盛だ 平だ 懇だ 惨
 哀だ 幸だ 幸だ 巧
《一部改正で挿入しておくべきだった》
 淫
  許容 【略】
 (注意) 【略】

 通則1の本則と、例外(1)(2)については、特に紛らわしい点はありません。

 一方、例外(3)には、昨年の一部改正の際に「淫らだ」を追加しておくべきだったと考えます(→前回を参照)。「活用語尾だけ送る」という通則1の本則とは異なる表記であり、例外(1)(2)にも当てはまりません。また通則2と考えるのも、前回述べたように無理があり、残る道は通則1の例外(3)だけ。この例外(3)は、適用対象を個別に掲げる形式なので、「平らだ」と同じように「淫らだ」も掲げておくのが適切だったと思います。

 

 通則2
  本則 活用語尾以外の部分に他の語を含むものは,含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。(含まれている語を〔  〕の中に示す。)
〔例〕
(1)動詞の活用形又はそれに準ずるものを含むもの。
 動かす〔動く〕 照らす〔照る〕
 語らう〔語る〕 計らう〔計る〕 向かう〔向く〕
 浮かぶ〔浮く〕
 生まれる〔生む〕 押さえる〔押す〕 捕らえる〔捕る〕
 勇ましい〔勇む〕 輝かしい〔輝く〕 喜ばしい〔喜ぶ〕
 晴れやかだ〔晴れる〕
 及ぼす〔及ぶ〕 積もる〔積む〕 聞こえる〔聞く〕
 頼もしい〔頼む〕
 起こる〔起きる〕 落とす〔落ちる〕
 暮らす〔暮れる〕 冷やす〔冷える〕
 当たる〔当てる〕 終わる〔終える〕 変わる〔変える〕  集まる〔集める〕 定まる〔定める〕 連なる〔連ねる〕 交わる〔交える〕
 混ざる・混じる〔混ぜる〕
 恐ろしい〔恐れる〕
《新常用漢字で当てはまるもの》
 塞がる〔塞ぐ〕 腫らす〔腫れる〕 羨ましい〔羨む〕 速まる〔速める〕 剥がす・剥がれる〔剥ぐ〕 務まる〔務める〕 癒やす〔癒える〕
 籠もる〔籠める*〕 *は常用漢字表に無い訓
(2)形容詞・形容動詞の語幹を含むもの。
 んずる〔重い〕 やぐ〔若い〕
 怪しむ〔怪しい〕 悲しむ〔悲しい〕 苦しがる〔苦しい〕
 確かめる〔確かだ〕
 たい〔重い〕 らしい〔憎い〕 めかしい〔古い〕
 細かい〔細かだ〕 柔らかい〔柔らかだ〕
 らかだ〔清い〕 らかだ〔高い〕 寂しげだ〔寂しい〕
 許容 【略】
(注意) 【略】

 通則2に当てはまる事例では、「籠もる」について前々回述べました。これまで(そして現在も)通則2の例で〔 〕内に示されている語は常用漢字表に掲げられた訓だけなので、表外訓の「籠(こ)める」の存在を前提とした送り方である「籠もる」を通則2の適用例と考えてよいのか確信が持てなかったのですが、文化庁国語課の答えは「通則2による」でした。

 上に示したように、新常用漢字で通則2の適用例になるもののうち、〔 〕内に表外訓が想定されるのは「籠もる」だけ。表外訓を〔 〕内に想定するのが「アリ」ならば、そのことが分かるよう、昨年の一部改正できちんと加えておくべきだったのではないでしょうか。

 

 通則3
  本則 名詞(通則4を適用する語を除く。)は,送り仮名を付けない。
〔例〕 月 鳥 花 山
 男 女
 彼 何
《新常用漢字で当てはまるもの》
嵐 唄 艶 俺 牙 瓦 崖 蓋 柿 顎 葛 釜 鎌 館やかた 亀 臼 錦 串 熊 隙 桁 拳 鍵 股 虎 喉 駒 頃 痕 私わたし 餌 鹿 袖 尻 粋いき 裾 他ほか 唾 誰 爪 鶴 藤 瞳 丼 梨 謎 鍋 虹 箸 眉 膝 肘 餅 蜂 頰 枕 闇 要かなめ 藍 籠 麓 脇
  例外 (1) 次の語は,最後の音節を送る。
 辺 哀 勢 幾 後 傍 幸 幸  互 便 半 情 斜 独 誉 自 災
 (2) 数をかぞえる「つ」を含む名詞は,その「つ」を送る。
 〔例〕 一 二 三 幾

 通則4
  本則 活用のある語から転じた名詞及び活用のある語に「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いて名詞になったものは,もとの後の送り仮名の付け方によって送る。
〔例〕
(1)活用のある語から転じたもの。
 仰 恐 薫 曇 調 届 願 晴
たり 代わり 向かい
 答 問 祭 群
 愁 憂 香 極 初
 遠
《新常用漢字で当てはまるもの》
(2)「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いたもの。
暑さ 大さ 正さ 確
み 重み 憎
  例外 次の語は,送り仮名を付けない。
  謡 虞 趣 氷 印  頂 帯 畳
  卸 煙 恋 志 次 隣 富 恥 話 光 舞
  折 係 掛(かかり) 組 肥 並(なみ) 巻 割
(注意) ここに掲げた「組」は,「花の組」,「赤の組」などのように使った場合の「くみ」であり,例えば,「活字の組みがゆるむ。」などとして使う場合の「くみ」を意味するものではない。「光」,「折」,「係」なども,同様に動詞の意識が残っているような使い方の場合は,この例外に該当しない。したがって,本則を適用して送り仮名を付ける。
 許容 【略】

 通則3と通則4をめぐっては、「類い」がどのルールに当てはまるかについて、シリーズ3回目で取り上げました。「改定常用漢字表」の答申直前になって「類」から「類い」に変わったこの送り方が、通則3の例外(1)に挿入されるか、あるいは通則4の本則の適用例と見なされるのかが、筆者にとってひそかな関心事だったのですが、昨年の一部改正ではどこにも挿入されず、結果として通則4の本則ということになりました。

 ただ、通則3の例外(1)を見ると、こちらにも動詞と関連がある「勢い」や「便り」が掲げられており、通則4の本則との「境界」は必ずしも明快とは言えません。また、送り仮名を付けない表記(類=たぐい)もかなり使われていることも考えると、国語施策として分かりやすくするためには、「類い」を通則4の本則の例に掲げた方がよかったと思います。
 
 
         ◇
 
 
 以上、半ば前回までのおさらいになりましたが、昨年の「送り仮名の付け方」一部改正の際に「これもやっておいたほうがよかった」と思われるものをその重要度とともに挙げると、

【ぜひ必要】通則1の例外(3)に「淫らだ」を挿入

【なるべく】通則2の本則の〔例〕(1)に「籠もる〔籠める*〕」を挿入し、*が表外訓であることの説明を付ける

【できれば】通則4の本則の〔例〕(1)に「類い」を挿入

 ――となります。

(比留間直和)