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文字

観字紀行

南紀、熊野、ときどき漢字(1)

石橋 昌也

 全国各地の字を「観」て、そしてその土地を「観」てこようと、前回から「観字紀行」にリニューアルしました。今シリーズでは、珍しい字を求めて紀伊半島へ。世界遺産にも登録された熊野を中心に巡りました。最終目的地は、熊野三山のひとつ、熊野本宮大社。その道程で、どんな字に出会えるでしょうか。

 JR新大阪駅。ホームの正面に、こんなものが。

拡大JR新大阪駅

 これが熊野本宮大社です。そして写真を象(かたど)っているのが、神鳥「八咫烏」(やたがらす)です。東征神話で神武天皇を大和に導いた鳥とされ、3本足が特徴です。今回の旅の行く先々できっと何度も出会うはずです。

拡大JR御坊駅
 さて、特急くろしおに乗って新大阪から約2時間、JR御坊駅に着きました。ここからレンタカーで半島を巡ります。熊野をまっすぐに目指すのであれば、熊野三山に通じる中辺路(なかへち)・大辺路の分岐点である田辺まで電車で行くのが便利なのですが、今回の旅は、いろいろ寄り道をしていろんな場所と字を見てこようと思います。

 「御坊」の地名の由来は、市内にある「日高別院」という浄土真宗の寺院にあります。16世紀に建立され、以降、町は寺内町として栄え、この寺院を「御坊さま」などと呼んだとされます。また隣町との境にある「道成寺」は、和歌山県下で最古の寺とされます。

拡大重要文化財の道成寺仁王門
拡大本堂

 道成寺の名前に覚えはありませんか? そうです、能や歌舞伎などで有名な「安珍・清姫伝説」の道成寺です。奥州から熊野詣に訪れた僧・安珍に、清姫が一目惚(ぼ)れ。清姫の熱意に押され熊野からの帰路に再会する約束を交わしたものの、安珍は僧の身。約束をたがえます。振られた清姫は安珍を追いかけますが、ついに思いが高じて日高川で大蛇と化し、一方、安珍は道成寺に逃げ込みます。寺の鐘の中に隠れた安珍を大蛇が焼き殺し、後、清姫も入水するという悲恋物語。寺僧による絵とき説法は必聴の価値ありです。

拡大安珍と釣り鐘を埋めたとされる塚

 その後、新たな釣り鐘を設けても持ち去られたりし、今でも道成寺には鐘がありません。他にも、寺の縁起となった、藤原不比等の養女となった宮子姫(文武天皇の妃、聖武天皇の生母)の髪長姫伝説が有名です。