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いつ使う?ローマ数字

比留間 直和

 引き続き、ローマ数字の話です。

 パソコンでは、たいていの仮名漢字変換ソフトで簡単にローマ数字が入力できます。「2」と打って変換すれば大文字の「Ⅱ」や小文字の「ⅱ」が、「9」からは「Ⅸ」や「ⅸ」が出てきます。Microsoft Office IME 2010 でも、1~10は標準辞書、11と12は記号辞書によって、それぞれローマ数字に変換することができます。

 

 

 前回も触れたように、パソコンなどで使われている国際文字コード「Unicode」に収録された全角1字分のローマ数字は、大文字・小文字とも12まで。しかし実際には、人気ゲーム「ファイナルファンタジー」のように、13以降のローマ数字も時々必要になるため、朝日新聞の新聞製作システムではローマ数字の13~19(大文字のみ)も、外字として私用領域に置いています。

 Unicodeが「12まで」なのは、なぜか。もともとUnicodeは、各国・地域の文字コード規格を集めてきて並べ直したもので、Unicodeと各国内規格との間で相互に変換できるように設計されました。

 IやVやXをあらかじめ組み合わせたローマ数字のセットが必要なのは、縦組みをする東アジアぐらいです。そのうち、日本のJISは、第1・第2水準(X0208)にも補助漢字(X0212)にもローマ数字は入っていなかったのですが、中国の文字コードには大文字の1~12、台湾の規格には大文字・小文字の1~10、韓国の規格には大文字の1~10がそれぞれ含まれていました。

 Unicodeは1~12のローマ数字を収録することで、東アジア各国・地域の公的規格との互換性を確保したわけです。

  

■ときどき、変身します

 

 JISには入っていなかったものの、Unicodeが普及する前から、日本のパソコンにはローマ数字が搭載されていました。メーカー独自の拡張、つまり機種依存文字です。

 Windowsの場合、シフトJISにローマ数字の大文字・小文字1~10が機種依存文字として入っていました。一方、MacのシフトJISにもローマ数字の大文字・小文字1~15が定義されましたが、Windowsとは違うコードに割り振られたため、両機種間でデータをやりとりするとローマ数字が別の文字に化けることがあります。

 パソコンだけの話ではありません。

 Windowsパソコンから送られてきたメールをiPhoneで表示させると、バンド名の「聖飢魔Ⅱ」の末尾のローマ数字が、監査法人を表す「(監)」に化けていました。WindowsのシフトJISでローマ数字の「Ⅱ」に割り当てられているコードが、MacのシフトJISでは「(監)」という全く別の文字に使われているためです。

 送信時の形式や文字コードの設定によっては、化けずにローマ数字のまま表示されますが、一般に機種依存文字はこのように意図通りに表示されない場合があるので、十分に注意する必要があります。縦書きでないなら、ローマ数字はふつうのアルファベットを並べて表すのが常道でしょう。

 なお、2000年に制定されたJIS X0213(第1~第4水準)には、ローマ数字の大文字・小文字の1~12(つまりUnicodeと同じ品ぞろえ)が入りました。そのうち大文字の1~10は、WindowsのシフトJISと同じところに置かれています。市場で優勢な製品を意識した結果といえます。

 

■ローマ法王、国王、そして…

 

 「機種依存文字か、ふつうのアルファベットか」という文字コード上の話とは別に、私たちはローマ数字を、いつ、どんな場面で使っているでしょうか。

 ゲームのタイトルや「聖飢魔Ⅱ」「OSⅩ」といった個別の商品名や芸名はきりがないので、より一般化できるものを思い出してみましょう。

 まず、書籍類の前付け(本文より前の、序文や目次など)のノンブル、章立ての番号などで使われます。ほかによく目にする例としては、

  国家公務員Ⅰ~Ⅲ種試験(2011年度までの分類)
  競馬などのグレード = GⅠ・GⅡ・GⅢ
  生き物の絶滅危惧Ⅰ類・Ⅱ類
  高校の数学Ⅰなど科目名

 といったものがすぐ思い浮かびます。

 学校関係でいえば、大学入試の話題で見かける「××Ⅰ類」というのもあります。ただし、その代表格である東京大学の「文科Ⅰ類」「理科Ⅲ類」などは、漢数字で「文科一類」「理科三類」のように書くのが正式なのだそうです。

 上に挙げたような、なじみのある用例はいずれも、「個数」を表しているのではなく「序数」(順序や序列)であり、ネーミングです。確かに、「みかん2個」を「みかんⅡ個」とは決して書きません。中には、化学の酸化数――酸化銅(Ⅱ)など――のように序数でない例もありますが、これは例外的な用法でしょう。

 多くの場合、ローマ数字を使うことで「序数」であることが強調され、またアラビア数字よりも、特別な/古めかしい/威厳がある/もったいぶった……といった印象を与えています。

 

         ◇

 

 では、英語圏ではどう運用されているのでしょうか。特に、新聞での位置づけが気になります。

 手元にある、米ニューヨーク・タイムズのスタイルブック 《The New York times manual of style and usage》(1999)で Roman numerals を引くと、次のように記されています。

Roman numerals are used in the names of popes, monarchs, Army corps, annual Super Bowl games and people who prefer the numerals (Lee H. Berenich IV). 〔以下略〕

 用途として挙げられているのは、まずローマ法王(pope)や国王(monarch)の名。なるほど、現在の法王であるベネディクト16世は、英語では「Benedict XVI」と書かれます。英国の女王エリザベス2世も「Queen Elizabeth II」です。ちなみに豪華客船のほうは「Queen Elizabeth 2」と書く、とこのスタイルブックには記されています。

 次の Army Corps は陸軍の軍団で、XX Corps(=第20軍団)のように書きます。XX や XIV のように複数の文字の組み合わせであれば「これはローマ数字だな」と察しが付きますが、I corps(=第1軍団)などは、知らないとちょっと分かりにくそうですね。

拡大実際にローマ数字で表記
 続いて挙げられているのが、なんと「スーパーボウル」(Super Bowl)。ご存じ、米NFLの王座決定戦です。2012年2月にあったのが第46回で、同紙の記事でも Super Bowl XLVI と書かれていました。アメフトに疎い筆者もテレビ映像でローマ数字が使われているのを見た覚えがありますが、その表記法がニューヨーク・タイムズのスタイルブックに載っているあたり、さすがアメリカです。(ちなみに五輪の回数表記については、記述が見当たりませんでした)

 そのほか、ローマ数字を好む人の名前に使う、とあります。このスタイルブックでは、法王や国王にはローマ数字を使うが、他の人名の場合、ローマ数字で「IV」と書くかアラビア数字で「4th」と書くかは本人の好みに従い、好みが不明のときはローマ数字で書く――と規定しています。

 

 ニューヨーク・タイムズ以外はどうなのだろう?と思い、もうひとつ手元にあった、AP通信のスタイルブック 《The Associated Press Stylebook and Briefing on Media Law》 2011年版も見てみました。ローマ数字の用途として、戦争(World War I)、人や動物(競走馬)の名などに続き、ああ、やっぱりありました。

 “... and pro football Super Bowls.”

 

(つづく)

(比留間直和)