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観字紀行

単位をたずねて三千粁?~浅草花やしき編

森 ちさと

 まだまだ暑さの厳しかったある夏の夜。一日の仕事が終わってぼんやり片付けをしていたところに、7月のことば談話室( 「聖火」じゃなかった聖火 )で質問を投げてくれた先輩がまたも楽しい話を持ってきました。

 「このあいだ、単位の漢字で面白いのを見つけたよ」

 「単位の、ってメートルとかグラムとかですか?」

 「そう。浅草の花やしきで」

 「花やしきで、ですか?」

 東京にある浅草花やしきは遊園地です。当然あちこちに説明板などがあるだろうとは思いましたが、ぼんやりした頭では遊園地と度量衡がすぐにはつながりません。それに、とにかく小さい子どもたちがたくさんやってくる遊園地。そんな所に難しい漢字があったら読めなくて困るじゃないか、とこれまた的外れなことを思っていると、「米へんに千って書くんだけど」。メートルの「米」に「千」がつくのだから、それはもしかして……「キロメートル、だよね」。

 これは明らかに、日本にメートル法が入ってきてから作られた文字です。メートル法の前は尺貫法ですから、こんな漢字が存在するはずはありません。

 しかし、キロメートルがあるということは、米へんの右側に百とか十とかがくっつく漢字もあるだろうということになり、辞書やネットで調べてみると、キロメートル以外にもわんさか出てきました。

 基本になるのは「米(メートル)」「瓦(グラム)」「立(リットル)」。それに「十」「百」「千」や、百分率から「分」「厘」「毛」が組み合わされていきます。

拡大

 少し特殊なのは「瓲」。重さのトンです。これは組み合わせる漢字を意味からではなく音から選んでいます。まさしく、トンという言葉が先になければ存在し得ない漢字です。

 花やしきの「粁」は、乗り物の時速を表示する看板にあったとのこと。花やしきにはたくさん乗り物がありますし、何より昭和レトロの雰囲気を残す遊園地です。きっと他にも何かあるはず!

 ということで、やって参りました、東京都台東区浅草。この日は平日で、あいにくの曇り空。土日と比べればかなり人出は少ない感じです。それでもやはり雷門の前は写真撮影や待ち合わせの人たちでごった返していました。

 仲見世を通って、浅草寺の壁沿いをぐるっと西へまわった先に浅草花やしきがあります。こちらは敷地の南西隅の入り口。

 より浅草寺本堂に近い南東隅にも「浅草門」という入り口があります。二つの入り口を結ぶ通りはその名も「花やしき通り」で、東京スカイツリーも見えます。……が、この日は先っぽが雲の中。取材中に雨が降らないことを祈るばかりです。

拡大南西隅の入り口
拡大入り口前からスカイツリーを望む

拡大タオルのロゴにご注目
拡大お次はTシャツとパンフ
拡大「花やしき」公式ロゴ
 入り口をくぐろうとしたところで、職業病でしょうか、ひとつのことに気づきました。掲げられている花やしきの看板の「花」の字。草かんむりが半分で分かれている4画草かんむりの形です。花やしき通りの門の文字は普通の3画草かんむり。入り口をくぐってすぐの所にあるショップのグッズやパンフレットは4画。その上、よく見てみれば浅草の「草」の字は、同じ4画草かんむりなのに別のデザインです。

 園内を案内していただく、浅草花やしき営業本部の穂積亜紀さんは、やはり4画草かんむりの入ったTシャツを着て登場されました。これは正式な花やしきのロゴだそうで、

 「もともと植物園だったので、花っぽさ、草っぽさを出したくてこのようなデザインになったんです」とのこと。江戸末期に開園したこの植物園をルーツとしていることから、花やしきは日本一古い遊園地とも言われています。