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文字

観字紀行

単位をたずねて三千粁?~青梅編

森 ちさと

 前回、浅草花やしきでは古い単位の漢字を一つしか見つけられませんでした。

 そもそも、どんな物に書かれて残っていそうなのか考えてみる必要があります。

 「グラム」「リットル」をよく使う物でまず思いついたのは、薬です。薬の外箱や商品の広告などに書かれているのではないかと考えました。木でできた古い薬屋の看板もこれまでたくさん見たことがあります。それに、薬を量るための古いてんびんに、漢字が刻まれているかもしれません。

 「メートル」だと、古い地図の縮尺やものさし、花やしきのような乗り物の速度表示、目的地までの距離を示す看板あたりでしょうか。

 どんなところにこういう物がありそうかな、と職場の同僚にもきいてみたところ、「旧家のお蔵にありそう」。しかしそれでは全国各地にありすぎて、絞りきれません。

 15年以上暮らしていて、土地勘もある東京・多摩地域で、「古い町」といって、まず思いついたのが青梅市です。青梅街道沿いにある古い宿場町で、昭和レトロな映画の看板を掲げて町おこしをしていることで有名です。映画の看板には古い単位の漢字はなさそうですが、映画以外にも古い看板はありそうですし、古いお店が何かすごい物を所蔵しているかもしれません。

拡大昭和レトロの香りただよう看板

 とにかく行ってみなければ分からない!

 ということで、やって参りました。この日はとても良い天気で、9月も終わるころだというのに昼間の気温が30度まで上がりました。JR青梅駅に降り立つと、山が青く輝いていて、夜勤明けの目が本当に痛くなるほどです。

さて、ロータリーから真っすぐ南に延びる駅前通りを歩くと、さっそく看板たちがお出迎え。

 レトロな雰囲気に囲まれながら100メートルほど進むと、青梅街道の旧道に突き当たります。この旧道が商店街のメーン通りです。観光案内所でもらった地図を片手に、さあどちらへ行きましょう。

拡大ビビアン・リーにはあまり似ていませんが……

拡大「辨柄(べんがら)」は赤い顔料のこと

 東京方面の左に曲がると赤塚不二夫会館などがあって、なんだか華やかな感じです。古い薬屋さんがありそうなのは逆側かな、ということで勘を頼りに右に。しばらく歩くと、薬局の木口順天堂さんを見つけました。「風と共に去りぬ」の看板を掲げています。

 そして店頭には古い商品の看板が! 

 店主の木口智博さん(55)にお話をうかがってみましたが、目当ての漢字はなさそうです。残念。しかし、ご近所で最近お店を閉めた薬局さんならたくさん古い看板を持っているよと、武藤花生堂さんを紹介されました。

拡大この「伊豆の踊子」は美空ひばり版(1954年)でしょうか?
拡大商品名には変体がな
拡大重量感漂うはかり

 教えられたとおりに駅の方向へ少し引き返すと、ありました。昭和元(1926)年の創業で、1年ほど前に店を閉じたとのことですが、「伊豆の踊子」を掲げた店構えは歴史を感じさせます。

 なかに案内してもらうと、全部で7枚の古い看板が、今でも天井に掲げられていました。色もあせておらず、とてもきれいです。

 こちらは白髪染めの看板。「志らが」と宛て字にしています。商品名は「君 代」(君が代)。観字紀行の二つ前のテーマ、 変体がな です。

 しかし、7枚のどれにも単位の漢字はありません。あの、いきなりで申し訳ありませんが、薬を量る古いてんびんのようなものはありますか?

 「ありますよ。たしか……」

と快く対応していただいた武藤恒司(つねじ)さん(82)に出していただいたのがこちらのはかり。

 かなり古い物ではあるようなのですが、目方の刻みの左端、単位は「g」でした。残念な気持ちが顔に出ていたのでしょうか、武藤さんからこんな貴重な情報が。

 「甲州屋さんだったらもっと古いはかりを持っていると思いますよ。古いお家なので、他にもいろいろあるかもしれません」

 ありがとうございます! またまたご紹介していただきました。