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観字紀行

島?嶋?どっちがカシマシカ?(1)

青山 絵美

拡大最終戦には多くの人がつめかけていました

 今季で創設20年の節目を迎えたJリーグ。その年を締めくくる最終節の1日、茨城県鹿嶋市に降り立ちました。向かったのは鹿島アントラーズの本拠、カシマサッカースタジアム。

 水戸市で初雪を観測するなど厳しい冷え込みでしたが、柏レイソルとの一戦を2万人近いサポーターに交じって観戦していると、いつしか寒さも忘れていました。

 結局、鹿島が2-0で試合を制したのですが、今季の成績は11位。リーグ最多となる7回の年間優勝経験がある鹿島だけに、サポーターにはちょっと不満が残る1年だったかもしれません。

 さて、この度のテーマはサッカー。ではなく、「鹿嶋市」にある「鹿島アントラーズ」です。「鹿嶋」と「鹿島」。鹿嶋市は、至るところでこの二つが混在している不思議な街なのです。今回は、この謎に迫ってみたいと思います。

 スタジアム名はカタカナですが、チーム名は写真の通り「鹿島アントラーズ」。

 市の名前は「鹿嶋市」です。

拡大この日のチケット。チーム名は「鹿島」
拡大市役所はもちろん「鹿嶋」

 区別ははっきりされているようですが、「島」も「嶋」もシマには変わりないはず……。世の中には長島さんもいれば長嶋さんもいます。小学校では常用漢字の「島」を学びます。ではそもそも、「島」と「嶋」ってどういう関係なのでしょうか。カシマの謎を解く前に、まずは字について予習しておきたいと思います。

  まずはこちらの字をご覧ください。

 「嶋」と同じく〈山〉と〈鳥〉の組み合わせですが、パーツの配置が違いますね。この見慣れない字は、「島」の「本字」であるとされるものです。

 一方、「島」は「正字」と呼ばれます。正字とは、中国の清の時代の漢字辞書、「康煕字典」(1716年完成)で標準とされている字体のこと。「康煕字典」は、現代の漢字辞典のもとにもなっている辞書です。

拡大小篆

 対して、「本字」とは、正字よりさらに古い時代の字のことをいいます。秦の始皇帝の時代に定められた「小篆」を見ると、「 」が古いかたちにより近いことが分かります。

 本字では、〈山〉の上に〈鳥〉がのっています。絵にして思い浮かべると、状況がよく分かりますね。ぷかっと海に浮かぶ山の上で、鳥が休んでいる――それがシマなのです。

 現在もっとも一般的に使われている「島」は本字の「 」の「灬(れんが)」が省略されたものです。「嶋」は〈山〉と〈鳥〉の位置が変わった異体字です。同じシマという字で「嶌」というのもあります。名字などで目にされたことがあるかもしれません。これらの字は、パーツの配置が変わったりしているだけで、もともとは同じ字なのです。

 部品の位置が違うという関係の漢字は実は多く、「峰」の異体字「峯」などはよく見かけますし、「松」の異体字「枩」を碑などで見たことがある方も多いかと思います。

 おおもとは同じ字である「島」と「嶋」ですから、朝日新聞では、以前は「島」の表記に統一されていました。

 このため、おそらく日本で一番有名なナガシマさんである、プロ野球・巨人の長嶋茂雄氏も、現役引退の際には「長島 選手を引退」などとされています。

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(左)1974年10月13日付16面(右)同年同月15日付17面=いずれも朝日新聞東京本社版

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 現在では、固有名詞では区別するのが一般的であることから、「島」と「嶋」は紙面上でも区別されるようになっています。

「嶋」解禁後の、2度目の監督就任を伝える記事の見出しには「巨人監督に長嶋氏」とありました。

 ちょっと予習のつもりが、話がずいぶんそれてしまいました。「島」と「嶋」の関係が分かったところで、そろそろ鹿嶋の街にくりだしましょう。