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観字紀行
(2013/08/16)
NHK大河ドラマ「八重の桜」のヒロイン、新島(山本)八重の故郷、福島県会津若松市。6~7月には同市南部の大戸町地区に伝わる巨木「5大桜」ゆかりの地を訪ねました。今回は番外編として、こぼれ話を少しご紹介します。
旧会津藩の「鶴ケ城」がある市中心部から国道118号を南へ約8キロ、石村には樹齢300年以上の「種まき桜」がありました。かつて「御殿桜」があったという香塩(かしゅう)にも足を運びました。この時、実はもう1カ所、立ち寄ったところがあったのです。さらに南にある上小塩(かみおしゅう)という場所で、香塩と同じように、内陸の地名なのに「塩」を使うので気になったのです。
石村の種まき桜のお宅で上小塩についてうかがうと「塩が出るという話はききません」と残念な答え。ただ、巨木の情報も入手しました。「そういえば、大戸史跡保存会が上小塩の一里塚の跡に碑を建てたのですが、そのあたりにも大きな木がありますよ」
石村、香塩、上小塩は参勤交代にも使われていた宇都宮街道(松川新道とも)沿いに位置します。街道だったなら一里塚があるのは当然。そして一里塚と言えば、大木の木陰で休む旅人の姿。何の木なんだろう、どんな大きさなのだろう。ともかく現地に向かいました。
香塩で取材を終えた後、国道118号を南下し、上小塩を目指しました。阿賀川のほとりにある水力発電所付近から、会津鉄道と並行するように走る細い旧街道に入ると、徐々に上り勾配になってきます。山裾にある上小塩は、雑木林に彩られた緑豊かな土地です。
上小塩の一里塚は阿賀川沿いの森の斜面にあるそうなので、注意深く車を走らせていましたが、木々に紛れてしまったのか、見つかりません。
しばらくすると少し視界が開けてしまいます。「通り過ぎてしまったのだな」と肩を落としたそのとき。下りの急な左カーブの角に、一瞬ぎょっとするようなものが。
直径が1メートル以上あるでしょうか、大きなケヤキの切り株です。脇には「松川新道舟子峠」と書かれた柱が立っています。奥にはお地蔵様もいます。
もしかしてこれが一里塚の跡なのか? 大きなお宅の入り口だったので、さっそくお話をうかがってみました。
「ここは舟子峠の入り口です。一里塚はもう少し手前にありますよ」
こちらのお宅の白岩茂さんが教えてくれました。ここに代々300年以上住み続けているとのことです。あのケヤキはずいぶん立派だったようですが、電線にひっかかってしまうということで、伐採することになったのでした。コンクリートで固められた東京で育った記者からすると、なんだかとてももったいないように感じられましたが、「このあたりはこのくらいの大きさの木はたくさんありますから」とのこと。