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観字紀行

「つまごい」を訪ねて(3)

町田 和洋

 現代によみがえる「吾嬬者耶(あずまはや)」を追って、嬬恋村の旅を続ける。

拡大目指す愛妻の丘はもうすぐ
 日本武尊が妻の死を嘆いて、こう叫んだ〈注1〉とされる鳥居峠から東へ。国道144号から、つまごいパノラマライン北ルートに入る。道の両側にキャベツ畑が広がる、のどかな広域農道をしばらく走ると見えてくるのが「愛妻の丘」だ。

拡大今回訪ねた場所
 地域おこしの一環として、ここで「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ(キャベチュー)」というイベントが始まったのは2006年9月。映画やテレビドラマにもなり、「セカチュー」という流行語まで生んだベストセラー小説「世界の中心で、愛をさけぶ」(片山恭一著)をもじったタイトルそのままに、普段は口にしづらい妻への感謝の気持ちを、ひとまずキャベツ畑に向かって思いっきり叫んでもらおうという企画だ。
拡大5月の叫び台は芝桜に彩られていた

 真剣に愛を叫ぶ男たちの姿が評判になり、最初は農家の畑を借りてささやかに行っていたのが、08年には「愛妻の丘」が整備され、09年には正面に浅間山を望める場所に「専用叫び台」も出来た。

拡大愛妻家が頻繁に飛び出してきます
 近くには「愛妻家に注意」の標識も立ち、平日の昼でも次々と車が止まるなど、すっかり新名所だ。この「キャベチュー」の成功が刺激になって、今や「めおチュー」(三重県伊勢市・二見浦の夫婦岩前)、「チャバチュー」(静岡県藤枝市の茶畑)など関連イベントは全国二十数カ所に広がっている。

拡大「キャベチュー」を発案した山名清隆さん

 この「キャベチュー」を発案、成功させた立役者が山名清隆さん(53)。東京で広告会社を経営する傍ら、嬬恋村で仲間と週末農業を楽しんでいた。東京からのアクセスが良く、リゾート地として有名な軽井沢の隣という理由で選んだところだったが、離婚を機に、嬬恋という村の名が気になり始めた。「あなたは仕事ばかりで私を見ていない、話を聞いていない」。前妻の言葉が胸に刺さっていたからだ。