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漢字んな話

【優】 悲しみを引き受けた役者

ご隠居 お咲ちゃん、なにうっとりしちゃって……。おやっ、ドラマ見てるのかい。
咲 この女優さん、きれいでしょ。私もこんなふうになれないかなあ。
ご隠居 おてんばお咲ちゃんは、どこへ行ったんだい。
咲 ひどいなあ。私だっておしとやかな、大人の女性にあこがれるんだから。優 説文
  優 説文
ご隠居 ふーん。確かに女優の「優」は「わざおぎ」といって、役者の意味があるんだけど、実は葬儀に関係する字でもあるんだよ。
咲 もう、夢見る乙女に、葬儀なんてひどいなあ。
ご隠居 まあまあ。「憂」が喪に服して悲しむ様子で、にんべんがついた「優」は、死者の家人に代わって、神前で悲しみを述べる役者のことだっていわれているんだ。
咲 へー。「やさしい」もそこからきてるの?
ご隠居 そう。でも、昔の日本語の「やさしい」は「痩せる」からきていて、身が細るほど恥ずかしいとか、肩身が狭いという意味だったんだ。だから「羞(やさ)し」とか「吝(やさ)し」なんて漢字をあてたりもしてたんだな。
咲 ややこしいなあ。
ご隠居 うん。人目を気にして遠慮がちな様子が、次第に上品だとか思いやりがあるっていう意味に変わってきてね。それに呼応するように「優」が使われだしたんだ。
咲 「優秀」とか成績の「優」はちょっと違うよね。
ご隠居 「すぐれる」って意味だね。優先とか優待といったら、手厚く扱うこと。優柔不断は、決断の鈍いときに使うよね。
咲 友情不断かあ。私はいつまでも友達を大切にする女優さんになろうっと!
ご隠居 お咲ちゃん、優柔不断だから。あらら、すっかりその気になっちゃって。夢見るのは女優(自由)だけどねえ。
(文=桑田真、イラスト=わけ みずえ)

 

 2008年11月22日の記事を基に再構成しました。この記事は2014年5月27日まで掲載します。

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熊(くま)
(くま)
咲(さき)
(さき)。熊の娘
ご隠居
ご隠居。咲の名付け親

「漢字んな話」は朝日新聞夕刊(一部地域)で2007年4月~2011年3月に連載していたコーナーです。2年分の連載をまとめた「漢字んな話」(四六判224ページ、税込み1575円)が三省堂から発売中!