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観字紀行

高知のおもしろ駅名めぐり(上)~南国土佐を前にして

奈良岡 勉

 四国の高知と言えば、まず思い浮かぶのが坂本龍馬(1836~67)。そして、桜前線が真っ先に訪れる所でもあります。

拡大高知城のソメイヨシノは三分咲きでした
 「ソメイヨシノが咲いたぜよ」
 東京都内で春一番が吹いた3月18日、高知市ではソメイヨシノが日本で一番早く開花しました。
「南国土佐の春は待ちやせんき。早よ遊びに来(き)いや」


拡大今回訪ねた場所
 高知在住の友人から誘いを受け、さっそく乗り気になりましたが、「いやいや、ちょっと待て」。
 その友人というのは、高知県庁で観光にたずさわる男性職員。昨年、映画にもなった有川浩さん著「県庁おもてなし課」(角川書店)の「おもてなし課」と同じ観光振興部に勤めています。まさに高知の観光を知り尽くした行政マン。彼の名前は「すーさん」。前からずっとそう呼んでいるので、ここでもそう呼ぶことにします。


 どうせ行くなら、高知に生まれ育ったすーさんの経験と知識をいかさない手はありません。
 かくかくしかじか、と取材の趣旨を説明したところ、「おれにまかしちょきや。こじゃんと(たっぷりと)えいとこ(いい所)紹介しちゃうき」。
 これぞ一押し、というお薦めの「観字」を挙げてもらいました。

 初めての四国、初めての高知。
 観字でたどる土佐の旅に出かけます。

 東京・羽田空港から飛行機で約1時間半。高知・南国市の高知龍馬空港に到着。人名のついた空港名は日本ではここだけだそうです。

拡大高知城の天守閣
 空港近くでレンタカーを借り、案内役のすーさんと合流するために高知市中心部へと向かいます。
 待ち合わせ場所は、南海の名城として知られる高知城。国指定重要文化財です。


拡大山内一豊の妻像

 築城したのは土佐藩の藩祖、山内一豊(やまのうち・かずとよ、1546?~1605)。追手門から入り、自由民権運動を主導した明治の政治家、板垣退助(1837~1919)の銅像を見ながら石段を上ると、山内一豊の妻像が堂々と立っています。
 そうだよなあ。山内一豊と言えば、やはり内助の功の賢妻千代だよなあ。


拡大山内一豊像
 ちなみに、一豊本人の銅像は門の外の目立たない木立の中にありました(帰り道に寄りました)。兜(かぶと)をかぶって鎧(よろい)を身にまとい、槍(やり)を片手に馬に乗る、勇ましい武将姿です。


 本丸の天守閣に上ってみます。入館時にもらったパンフレットによると、「高知城は日本で唯一本丸の建築群がすべて現存する、江戸時代の姿を今に伝える城郭である」。

拡大天守閣から高知市内を望む
 天守閣からは高知市内を見渡すことができ、目の前に高知県庁があります。


拡大名所・桂浜。太平洋から打ち寄せる波が高い
 すーさんと合流して向かったのは桂浜。龍馬がふところ手をして太平洋に向かって立つ、あの銅像のある砂浜です。土佐民謡「よさこい節」にも歌われる月の名所でもあるそうです。
 「ここを見んと土佐は語れんぜよ。まずは龍馬さんにあいさつせんと始まらんき」
 幕末土佐の偉人はほかに三菱財閥の創始者岩崎弥太郎(1835~85)、龍馬らと大政奉還運動をした後藤象二郎(1838~97)ら枚挙にいとまがありません。

拡大太平洋を見て立つ坂本龍馬の銅像。想像していたよりもずっと大きい
 しかし、すーさんが最も尊敬する人物はやはり、龍馬だと言い切ります。
 「龍馬は太平洋みたいにスケールが大きいがぜよ」


 それはそうと、「観光」より、そろそろ「観字」にとりかからないと……。
 「心配せんでもえい。すんぐそこやき」

 高知市中心部にとって返し、「よさこい節」や歌手ペギー葉山さんの「南国土佐を後にして」でも知られる「播磨屋(はりまや)橋」近くを走る路面電車の停留所。
電車が着きます。

拡大路面電車の行き先表字幕には「ごめん」の文字が
 その行き先の表示が「ごめん」。


 

拡大そんなに謝らなくてもいいんだよ
 ごめんなさいの「ごめん」?
 「『ごめん』のとなり駅は、『ありがとう』ながよ」
 「ごめん」と「ありがとう」――そんな駅名があるのか。
 電車を車で追いかけます。


 土佐電気鉄道(土佐電鉄、地元では土電〈とでん〉と呼ばれているそうです)の発着駅、後免町停留所(南国市)がそれでした。

 この「ごめん」停留所の目と鼻の先にあるのが、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の後免町駅。同線の一つ西にある隣駅が後免駅。わかりますか。「後免町」と「後免」。まぎらわしいですね。次回に詳しく説明します。とにかく、駅名のまぎらわしさを解消するために、後免町駅に「ありがとう」という愛称をつけた人がいるのです。

 「ごめん駅、ありがとう駅はけっこう有名ながで。知らんが?」
知りませんでした。初耳でした。

 次回は、「ごめん」「ありがとう」をめぐる話と、「絵金(えきん)」について紹介します。

(奈良岡勉)