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観字紀行

題字のふるさとを訪ねて(4)

山室 英恵

 朝日新聞の題字のふるさとを訪ねて、山梨県市川三郷町の大門碑林公園に来ています。

 題字の元となった大唐宗聖観記碑を鑑賞し終えた後は、往路に気になっていた拓本とりに挑戦します。

拓本をとってみよう

拡大拓本体験コーナーの壁には、採拓用の石碑が埋め込まれています
 体験コーナーには地面と水平に置かれた石碑もありますが、今回はより難しいという、壁に垂直に埋め込まれた石碑を選びました。筆者は壁に埋め込まれた石碑の拓本をとるのは初めて。公園の担当者に教えていただきながら作業をしました。


拡大まずは尚書碑で練習します
 石碑は、体験コーナーの左右の壁の表裏計4面に埋め込まれています。まずは文字の大きさと太さ、石碑自体の大きさが手頃で「初心者にもオススメ」という「尚書」碑で作業の流れをつかみます。この碑には、現在の元号「平成」の語源の一つである「地平天成」というくだりが含まれています。作業に使う道具一式は公園で貸してもらえます。


どうやってとるの?

 作業は、和紙を石碑の文字の溝に押し込んでいくイメージで、手順は次の通りです。

①和紙のざらざらした面を石碑に押し当てます。

拡大テープで和紙の上辺を壁に留めます
②紙の上下左右4センチぐらいが石碑からはみ出るようにし、上だけをテープで壁に留めます。


拡大霧吹きで水をかけながら、はけで紙を石碑に押し付けます
③霧吹きで水をかけながら、石碑の周縁に向かって空気を押し出すように、はけで紙を石碑に押し付けます。はけに力を入れ過ぎたり、何度も掃いたりすると紙が破れるので注意します。


④ブラシで紙を石碑に打ち込む際に紙が破れないよう、布をかぶせます。

拡大ブラシを打ち込みます
⑤布の上から、ブラシを石碑に対して垂直に打ち込みます。ブラシを斜めに当てると紙が破れるので、背伸びや中腰の姿勢になって垂直を保つようにします。


⑥紙がきれいに石碑に入ると、その部分が白くなります。全体に紙が入り込んだら、かぶせた布を外して紙の左右と下もテープで留めます。この後の作業で、乾いた紙が石碑からはがれないようにするためです。

拡大墨をなじませたたんぽで紙に墨を付けます
⑦詰め物を布でくるんだ「たんぽ」という道具を二つ用意します。一つに「油墨」という拓本用の墨を含ませ、もう一つにその墨をなじませます。墨をなじませた方のたんぽで、全体に同じ力で同じ濃さになるように打ち付けます。


⑧全体に均一に墨をつけられたら完成です。テープをとって、紙をそっと石碑からはがします。

果たして出来栄えは?

 仕上がった拓本の出来栄えはどうでしょうか。

拡大失敗例。矢印の部分にしわが入ってしまいました
 ……残念なことに、シワが入っています。霧吹きとはけを使って石碑に紙を貼り付ける作業が難しく、水を吹きかけた後にはけで素早く掃いて空気を抜けなかった所がシワになって石碑に貼り付いてしまったのです。最初の失敗が最後まで影響します。


拡大これは成功例。5行目に「地平天成」のくだりがあります
 気を取り直して、何度か練習します。3枚目で比較的きれいにとれるようになりました。


応用編にも挑戦

拡大百隠百寿図の石碑
 多少なりとも上達してきたので、次は色々な形の「寿」が並んでいる大きな石碑「百隠百寿図」に挑戦します。紙が大きいため、一人ではうまく水をかけられません。公園の担当者に紙の左下を引っ張っていただき、紙全体をピンと張った状態で手早く石碑に貼り付けていきます。


拡大拓本の裏はこうなっています
 大きな字の部分は、ブラシで打ち込む時もたんぽでたたく時も力を弱くして、紙が破れないように細心の注意を払います。コツを教えて頂きながらの作業だったので、破れることもなく完成しました。


拡大蘭亭序の拓本もとります。うまく打ち込めたので、字の部分が白くなっています
 最後に、文字が小さいために強い力で打ち込む必要があるという「蘭亭序」の拓本もとってみました。字が多いので1時間ほどかかりましたが、これも破れることなく採拓できました。


 九成宮醴泉銘碑などの復元石碑から拓本をとれなかったのは少し残念でしたが、初めての拓本体験はとても楽しいものでした。大きな石碑に挑戦できる日がいつか来るといいなぁ、と思いながら、帰路につきました。

(山室英恵)

=おわり