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漢字んな話

【諦】 よく見て本質を見極めて

諦
咲 お母ちゃんが風邪ひいて寝込んじゃってね。お父ちゃんは仕事で帰ってこられないし、晩ご飯の支度しなくちゃならないし、おまけに明日はテストだし。どうしよう。
ご隠居 おうおう、息せき切って。大丈夫だよ、安心おし。晩ご飯は、うちのを取り分けて持っていくから。
咲 ほんとに? ありがとう。よかったあ。明日のテスト諦めようと思ってたんだ。
ご隠居 諦めちゃいけませんよ。「諦」って字は、元々「つまびらかにする」って意味なんだからね。
咲 つまびらかって?
ご隠居 明らかにするってことさ。「諦める」は「明らめる」なんだな。諦 説文
諦 説文
咲 理解度を明らかにするのがテストか。ちょっと、げんなりだけどなあ。
ご隠居 ははは。奈良時代には、花や景色を見て心を晴れ晴れさせることを「あきらむ」って言ってたんだよ。
咲 へー、雰囲気あるね。
ご隠居 仏教では、悟りって意味にも使われるんだ。
咲 悟り?
ご隠居 うん。諦観(ていかん)は元々、よく見て本質を見極めるってこと。諦念は道理を悟った心っていうことなんだ。断念するって意味で使うことが増えたけどね。
咲 いつからそういう使い方になったの?
ご隠居 江戸時代には、心に定めて迷いを断ち切るって使い方があってね。そのころからのようだね。
咲 断念ねえ。そうかあ、断念(残念)だよなあ。
ご隠居 ……って何をじっと。ああ、分かったよ。この団子、持っておいき。
咲 へへ、ありがとう。代わりにキャラメルあげるね。
ご隠居 はい、はい。あたしゃこれで団子を、あキャラメル(諦める)よ。

 

(文=前田安正、監修=笹原宏之早稲田大学教授、イラスト=わけ みずえ)

 

漢字んな話3刷 2011年1月8日の記事を基に再構成しました。この記事は2015年10月22日まで掲載します。

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熊(くま)
(くま)
咲(さき)
(さき)。熊の娘
ご隠居
ご隠居。咲の名付け親

「漢字んな話」は朝日新聞夕刊(一部地域)で2007年4月~2011年3月に連載していたコーナーです。2年分の連載をまとめた「漢字んな話」(四六判224ページ、税込み1575円)が三省堂から発売中!