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昔の新聞点検隊

「八重の桜」は何番? 100年前の桜番付

森 ちさと

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【当時の記事】

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拡大1919(大正8)年3月23日東京朝日朝刊3面。画像をクリックすると大きくなります。主な直しだけ朱を書き入れています。現在の朝日新聞の表記基準で認めていない漢字の音訓や、当時は入れていなかった句点を入れる等については、原則として記入を省いています

◇大桜ばん附 幹囲一丈以上のもの百本

一、神代桜(一名妙法桜) 山梨県北巨摩新富村山高日蓮宗実相寺境内、種類(小輪の山桜)幹囲四丈五尺樹高十七間、樹齢一千年

二、薄墨桜 岐阜県本巣郡根尾村板所、幹囲三丈八尺、樹高十二間、樹齢一千二百年

三、神代桜 長野県上水内郡芋井村泉平諏訪神社境内、種類(山桜)幹囲三丈六尺、樹高三丈、樹齢一千年以上

四、石部桜 福島県北会津郡一箕村八幡、幹囲根元三丈六尺、根際より数条に岐れ各八九尺、樹高六丈 樹齢四百年

(中略)

七、滝桜 福島県田村郡中郷村大字滝字桜久保、幹囲三丈二尺、樹高四丈二尺、樹齢三百五十余年

(中略)

二二、大鹿桜 甲一名翁桜) 福島県耶麻郡盤梯村字西峰盤梯神社境内、種類(八重)幹囲二丈余 樹高四丈五尺、樹齢九百六十余年

(中略)

三五、峰張桜 福島県若松市蚕養町蚕養神社境内、幹囲一丈八尺、樹齢九百余年

三六、宝仙寺の大桜 福島県双葉郡上岡村大字本岡宝泉寺境内 幹囲一丈七尺余、樹高五間、樹齢八百余年

(中略)

四八、文殊堂の姥桜 福島県大沼郡高田町文殊堂境内、幹囲一丈六尺 樹高四丈二尺、樹齢百二十余年

四九、高田の桜 福島県石川郡石川町大字高田長泉寺傍、幹囲一丈六尺 樹高三丈六尺、樹齢四百年

(中略)

五二、大夫桜 福島県北会津郡一箕村大字八幡飯盛山麓、種類(一重山桜の一種樺桜)、幹囲一丈五尺 樹高九丈、樹齢三百余年

(中略)

五六、乗丹坊手植の桜 福島県耶麻郡盤梯村盤梯神社境内、幹囲一丈五尺、樹高八間半、樹齢七百余年

(中略)

六二、煙石の桜 福島県石川郡小平村大字西山字煙石、幹囲一丈五尺 樹高一丈五尺、樹齢六百年

(中略)

六五、大鹿桜 福島県耶麻郡盤梯村字西峰盤梯神社境内、種類(八重)幹囲一丈五尺、樹齢九百年内外

(中略)

八五、御所桜(一名種蒔桜) 福島県北会津郡大戸村字香塩、幹囲一丈二尺、樹高五丈七尺、樹齢七百年

(中略)

九一、旭桜 福島県岩代国岩瀬郡須賀川町朝日ケ岡公園、種類(一重枝垂)、幹囲目通一丈一尺、樹高四間、樹齢一千年

(中略)

浅田澱橋氏(調)

(1919〈大正8〉年3月23日東京朝日朝刊3面)

前回のクイズの写真
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【解説】

 前回の石部桜の紹介の最後で、今回の桜番付についてクイズを出しました。福島県内の3枚の桜の写真が、それぞれ何位にランクインしたものか。

 咲いている写真で答え合わせをしながら、福島県の桜だけ取り出して、いつも通り校閲していきます。

拡大石部桜。地元の方は「3日前は5輪しか咲いていなかった」=4月18日撮影

拡大峰張桜。上の方が少し咲いています=18日撮影
 前回の石部桜(会津若松市)が、いきなり堂々の4位です。クイズの①は前回の記事とシルエットがそっくりですから簡単でしたでしょうか。石部桜です。会津五桜に数えられています。

 22位に入った大鹿桜(猪苗代町)も会津五桜のひとつです。所在地を「盤梯村字西峰盤梯神社」としていますが、「ばんだい」は通常「盤」ではなく「磐」の字を使用します。また、現在神社の名は「磐椅(いわはし)神社」となっています。65位の、少し小さい大鹿桜も同様です。

 次に35位の峰張桜(会津若松市)。これは前回のクイズの③になります。「蚕養」は「こがい」というとても難しい読みなので、ルビを入れた方がいいでしょう。「蚕養神社」は通称で、正式には「蚕養国(こがいくに)神社」といいます。正式名称を使わなくてよいか確認してもらいます。また、樹高が書かれていないのでできれば調べ直してもらうのがよいでしょう。

 

拡大太夫桜=18日撮影
 続いて36位の宝泉寺の大桜ですが、桜の名前では「宝仙寺」、所在地の方では「宝泉寺」と表記にずれがあります。おそらく現在の富岡町にある宝泉寺と思われます。

 前回クイズの②が52位の太夫桜(会津若松市)です。飯盛山の急斜面に生えていて、根がかなり露出してしまっています。地元の方によると、この冬の大雪でだいぶ傷んでしまったとのことでした。

 56位の乗丹坊手植の桜は、現在の磐梯町の慧日寺境内にあります。所在地で「盤梯神社」(おそらく「磐梯神社」)としており、寺と神社でずれがあるように読めますが、これは明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)によって、神社とすることで存続できたためです。

 

拡大香塩(かしゅう)の桜とよく似た種まき桜=18日撮影
 85位の、会津若松の香塩(かしゅう)にあるという御所桜は地元の方によると、数十年前に大火事があってなくなってしまったとのこと。このあたりには農業で種をまく時期の目安にした種まき桜がたくさんあり、この地元の方のお庭にも「香塩の桜とよく似た」種まき桜があります。それがこの写真。

 東日本大震災の揺れには耐えましたが、昨年、手前側に張り出ていた大きな枝が折れてしまったそうです。幹の中央に傷痕があります。これで樹齢が400年とのことですので、御所桜はどれほど立派だったのでしょう。

 全体を通して、所在地で小字まで書いているものとそうでないもの、「大字」「字」と書いているものとそうでないものがあります。統一した方がすっきりしそうです。

 なお、最後に登場する調査者の浅田澱橋氏は当時の文人です。漢詩や中国の通貨についての著作があります。

 例年にない大雪を乗り越えて、今年もまたひとつ年輪を加えた桜たちです。もう満開をすぎてしまったものもありますが、きっと新緑も美しいでしょう。この番付を片手に会いに行かれてはいかがでしょうか。

 (種まき桜は一般の方のお宅にあります。今回は許可をいただいて撮影しました。ご覧になる際はどうぞご注意ください)

(森ちさと)

 ※「現代風にすると…」は今回は省略します。

当時の記事について

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

  • 漢字の旧字体は新字体に
  • 句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
  • 当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください